2022.10.27
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鉄道開業150周年で考える教育と鉄道の関係

2022年の10月14日に鉄道開業から150周年を迎えました。今年は、数多くの鉄道関連の行事が開かれるなど、改めて鉄道の存在が注目されています。 実は、鉄道と教育の関連を研究した方がいます。記念の年ということで、今回は鉄道と教育の関連について考えていきたいと思います。

浦安市立美浜北小学校 教諭 齋藤 大樹

鉄道×教育の効果を研究

大阪公立大学大学院文学研究科の教授である弘田陽介氏は『電車が好きな子はかしこくなる」という著書の中で、鉄道が子どもの教育に与える影響を示しています。
鉄道は「認知スキル」を育てる身近な素材であり、方法次第では非認知スキルなど他の領域の力も育てる力を持っていると言います。
別の著者からも『鉄道で伸ばす子どもの地頭力』という書籍も発売されており、そちらの本でも新しい時代を生き抜く力を育むには鉄道が良い教材だと示されています。

旅行ガイドブックから地理に対する理解を深める

最近、『るるぶ』や『まっぷる」といった有名旅行ガイドブックの形式で、全国の鉄道や都道府県の名産などをまとめた児童書が出版されています。これまでこうしたガイドブックは大人向けのものが多かったですが、近年は地理の学習に役立つ書籍が増えています。

旅行ガイドブックが地理の学習ツールとして広まったのは、ある有名ママのおかげといわれています。
みなさんは、「佐藤ママ」と呼ばれる方をご存知でしょうか。佐藤ママこと佐藤亮子氏は、実子4人を全員東京大学の理科Ⅲ類に進学させた実績で有名です。彼女はその実績から数多くの書籍を出版しており、その中で地理の学習についても触れています。旅行ガイドブックを活用することで、地図帳を使った学習とは異なり、楽しみながら地理に対する学びを深めていったそうです。

自分自身の実践について

私も4学年を担当した際に、この旅行ガイドブックによる学習方法を実践したことがあります。旅行ガイドブックや時刻表を家庭から一人一冊以上持ってきてもらい、バーチャル旅行計画を立てさせました。旅行ガイドブックや時刻表というのは毎年の様に出版されるため、古くなるとあまり読まれなくなっていきます。保護者の方に協力して頂き、こうした読まれなくなった旅行ガイドブックを集め、手に取れるような形で学級文庫などに置いておきます。

すると、子どもたちの地理に対する興味が自然と深まっていきました。都道府県の名産品や名勝が写真で色鮮やかに紹介されているので、都道府県名の学習を無味乾燥なものにせず、楽しく行うことができます。また、時刻表を活用して旅行先への行き方や時間を考えることで、様々なルートを考えることができました。時間間隔をつかむのにも役立ち、算数科の学習にもつながると感じました。

今年は3年生を担任していますが、都心部の学校では市内の鉄道路線や駅名を学びます。私の勤務地には「JR京葉線」が通っていますが、東京の「京」と、千葉の「葉」が路線の由来であることに気づく子がいました。「京王線」など似たような名前の付け方をする路線もある一方、「東西線」のように方角を利用しているものがあることに気づくことができ、地名や方角を学ぶことにもつながりました。

身近な鉄道の歴史から近代を考える

150年前というと明治時代の初めです。「鉄道」の開業により、人々の移動時間は大幅に短縮しました。近代の始まりがペリー来航か、幕末か、明治維新かと研究は分かれるところですが、鉄道の発展が近代の日本の発展に大きな影響を与えたことは間違いないことでしょう。

日本の近代史と密接に関わる鉄道だからこそ、ペリー来航時に初めて模型としてやってきた蒸気機関車が、150年前に汽笛一声、新橋の開業から始まり、全国に広がっていく明治期の様子。新幹線の開業が高度成長期の象徴になっていく昭和時代の様子など、歴史の学習と絡めることも可能です。

勤務地の近くには、新京成電鉄という鉄道会社があります。こちらの路線は、戦前に日本陸軍の組織である鉄道連隊が演習用で敷設した線路が元になっています。みなさんの地元の路線にも何らかの歴史的なドラマがあります。ローカルな路線も大きな歴史上の出来事の影響を受けていることに気づくと、歴史の面白さを感じるきっかけになるかもしれません。

算数科や国語科などにも、鉄道の可能性は広がる

今回は鉄道150周年にちなんで、教育と鉄道の関係についてフォーカスしてみました。地理や歴史など社会科分野ばかりでしたが、算数科や国語科、理科にも活かせます。例えば、算数科の速さの問題を鉄道と関連させたり、時刻表を活用してダイヤグラムを学ばせたりすることもできます。

『鉄道で伸ばす子どもの地頭力』では、駅名を覚えることで漢字の学習などにも役立つ一面もあると紹介されていました。参考に今回紹介した書籍を参考図書に載せておきます。今一度、鉄道について考えてもらう契機としてもらえれば幸いです。

齋藤 大樹(さいとう ひろき)

浦安市立美浜北小学校 教諭


一人一台PC時代に対応するべくプログラミング教育を進めており、市内向けのプログラミング教育推進委員を務めていました。
現在は小規模校において単学級の担任をしており、小規模校だからこそできる実践を積み重ねています。

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