2017.12.11
  • twitter
  • facebook
  • google+
  • はてなブックマーク
  • 印刷

図書館を使うメリット

インターネットの普及などにより、生徒たちが本を読む機会が減ってきているように感じます。また、中には本を読む必要性を感じていない生徒もいるようです。そんな事情もあり、図書館の利用が低迷している学校もあります。本校の図書館は書籍と教科に関連するDVD、新聞等は一通りそろっています。ただし、プロジェクターやテレビ、黒板、パソコンは使用可能な状況にはありません。

必ずしも図書館を利用しなければいけないというわけではありませんが、実際に授業で使ってみるとそのメリットも感じられます。さらに、生徒たちが授業以外でも図書館を利用したり、本を読んだりするきっかけにもなると考えています。

今回は、図書館で行った授業について振り返り、図書館を使って良かったと感じたことを書いてみました。

山形県立米沢工業高等学校 定時制 教諭 高橋 英路

授業の概要

今回の授業は、1年生の「地理A」の授業で、「身近な地域の調査」という単元になります。「地元地域の現状を調べ、課題と解決に向けたアイディアを考えよう!」というテーマで行いました。指導計画としては、
 ① 地元地域の現状を調べる
 ② 地元地域の課題を見出し、解決策を考える
 ③ ②のアイディアを1枚の「チラシ」にまとめる
 ④ ③の内容を発表し合い、ルーブリックによる相互評価を行う
といった感じになります。

【1】地元地域の現状を調べる

最初の時間に単元全体の学習計画を示し、以下のとおり到達してほしい目標を伝えました。
(到達してほしい目標)※1→5の順に高度になっていくと考えています。
 1 地元地域のことがわかる
 2 図書館での調べ方がわかる
 3 自分の考えを分かりやすく表現できる
 4 他者の発表を基準に従って評価できる
 5 課題を抱えたときに解決に向けて行動できる

説明の後、各自ワークシートに沿って、地元地域の現状や課題を調べていきます。参考になりそうな書籍については、ジャンルや場所についてヒントを与えました。時間がない場合は書籍を指定することになるでしょうが、できれば自分で探すところから始めた方が、探し方も分かりますし、良い意味で本来の目的とは違った本に触れることもできると思います。インターネットだとピンポイントで情報を探せるわけですが、図書館の本では時間がかかり余計な情報にも触れることで、調査の方向性を再考して練り直すといった姿が見られました。

【2】地元地域の課題を見出し、解決策を考える

次の時間は、地域の現状を踏まえ、課題となっていることを考えていきます。住んでいる地域なので、調べなくても分かることも多いわけですが、あらためて調べたことで新たな発見もあったようです。そうした課題を理解した上で、地元がどうなってほしいのか?という理想像を考えてもらいます。課題を見つけてすぐに解決策を!となりがちですが、ここでしっかり理想像を考えておくことで、なぜそのような方策を行うのか?という解決策実施の目的が明確になると思います。逆に、理想像が曖昧だと、せっかく良い解決策を考えても、どうなってほしいのか?という部分が見えてこず、何のためにやってるの?ということになりかねません。

この時間の作業では、前の時間に他人がどのくらいまで調べているか、気になっている生徒が多かったです。図書館というと、4~6人掛けの机が一般的ではないでしょうか?これが効果的で、こちらが意図していなくとも、周囲の生徒同士で見せ合ったり、質問し合ったりという光景がありました。通常の教室で机をつけてグループ活動をするのと違って、最初からグループができており、姿勢・視線も自然と友達の方を向く状態になっているわけです。「その本どこにあった?」という本当に些細な質問も気軽にできる体制が授業冒頭からでき上がるというのは大きいと思います。

【3】アイディアを1枚の「チラシ」にまとめる

ここまでの学習でまとまったアイディア(解決策)について、他者に説明できるようにしてもらいます。今回は、1枚の「チラシ」にしてみようということにしました。図書館には新聞が置いてあるので、そこに載っている広告や挟みこまれてきたチラシを例として取り上げ、ヒントとして提示しました。ただ、チラシとともに口頭での説明もすることにしたので、チラシは端的で分かりやすいものにするよう伝えました。

この作業では、上手にイラストで表現したり、考えた内容を端的に表現したり、チラシ自体が目を引くようなキャッチコピーを工夫したりするなど、それぞれの個性が出た作品が仕上がりました。こうした場面でも、こちらが提示したチラシや新聞広告の例以外にも、ポスターやカット集など、様々な素材が図書館にはあるので、自分の好みに応じて取捨選択できたと思います。

【4】発表と相互評価

最後にできたチラシ(アイディア)をグループで発表(説明)し合い、あらかじめ示したルーブリックに基づいて相互評価をしました。ルーブリックは、アイディアそのものについては「目的の明確さ」「具体性」「独創性」、チラシは「注目度」、説明は「分かりやすさ」といった項目ごとに、それぞれ4段階の基準を作りました。ルーブリックは他の人の評価をすることはもちろんですが、自分のアイディアを振り返る際のポイントにもなっており、良い気づきがあったようです。

まとめ

今回の授業は限られた条件下で、オーソドックスな調べ学習を取り入れたものでしたが、やってみて図書館の良さをあらためて実感できた気がします。

(1)無駄なものに触れる
・・・これは良い意味で「無駄なもの」という言葉を使いました。前述したように、欲しい情報をピンポイントで探すインターネットと異なり、目的の書籍以外のものが嫌でも目に入ります。また、本を決めても、それを読む中で、求めていることと違った情報も目に入ります。そうしたことが自分の考えを練り直すきっかけになると思います。時間はかかりますが、図書館ならではだなぁと感じました。

(2)机配置が自然な協調を生む
・・・あまり意識しない方も多いかもしれませんが、授業をする教室での机や椅子の配置も重要だと思います。図書館のように複数が向かい合わせに座れる場所だと、親和的な関係が築きやすく、話し合いや教え合いが生まれやすいと思います。一方、こちらが指示したい場面では、きちんと授業者に注目させなければいけないので、どういう目的の授業なのかによってメリットにもデメリットにもなりますが・・・。

(3)図書館利用(読書)のきっかけ
・・・定時制の場合は就労して始業時間ギリギリに登校したり、翌朝の勤務に備えて放課後はすぐに下校したりする生徒が多く、始業前や放課後に図書館を利用することはほとんどありません。しかし、授業の中で図書館を利用することで、「こういう本もあったんですね」「これ、今借りてもいいですか?」といった声が聞かれました。手に取ってみると読むけれど、図書館に足を運ぶことが難しいという生徒も多いようです。調べる過程で少しだけ読んだ本に興味を持ち、続きが読みたくなって借りたという生徒もいました。

(4)「無駄」が会話を生む
・・・図書館で調べる学習はとても時間がかかります。本を探したり、そこから必要な情報だけ読み取ったり・・・。しかし、だからこそ、生徒同士の会話が活発になっている気がしました。とにかく誰かに聞かないと時間内に終わらないということを察知し、どの生徒もかなり積極的に動いていました。

ということで、ありきたりな実践ではありますが、図書館や読書というものから少し離れてしまっている感じがした自分への自戒も込めて、今回の記事を書いてみました。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
高橋 英路(たかはし ひでみち)

高橋 英路(たかはし ひでみち)

山形県立米沢工業高等学校 定時制 教諭


クラス担任と地歴公民科で「地理A」「日本史A」「世界史A」「現代社会」の授業を担当。専門は地理。生徒達の「主体的・対話的で深い学び」が実現できるよう、p4c(philosophy for children)やKP(紙芝居プレゼンテーション)法などの手法も取り入れながら日々の授業に取り組んでいます。

同じテーマの執筆者
  • 前川 修一

    前川 修一

    明光学園中・高等学校 進路指導部長

  • 中村 祐哉

    中村 祐哉

    広島県公立小学校 教諭

  • 泊 和寿

    泊 和寿

    石川県金沢市立三谷小学校 教諭

  • 高岡 昌司

    高岡 昌司

    岡山県教育委員会津山教育事務所教職員課 主任

pagetop