2018.03.05
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SDGsを身近に捉える

SDGs(Sastainable Development Goals)とは、「持続可能な開発目標」のことで、2015年の国連サミットで採択されました。持続可能な社会の実現に向け、17のゴール(169のターゲット)から構成されています。SDGsの前身であるMDGs(Millennium Development Goals)「ミレニアム開発目標」は、途上国の貧困の解消を目指し、一定の成果をあげました。これに対し、SDGsは、経済成長だけでは解消できない、先進国などあらゆる人を含めた課題の解消を目指しています。


さて、こうした話題を授業で扱うと、生徒にとってはやはり「どこか遠い国の話」となりがちです。そこで、できるだけ身近なものとして捉えてもらうことを目的に授業を行ってみました。内容としては、国際理解関係の研修やすでに多くの学校で実践されている事例を取り混ぜて、勤務校の生徒の実態に合わせてアレンジし、「地理A」の授業で実践したものです。

前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭  山形県立米沢東高等学校 教諭 高橋 英路

SDGsとは?

2015年9月の国連サミットで「持続可能な開発のための2030アジェンダ」というものが採択されました。その中に、2030年までに達成すべき目標として記載されているのが「SDGs=持続可能な開発目標」で、以下の17のゴールが定められています。
(参考)外務省ウェブサイト(SDGs)
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/about/doukou/page23_000779.html

1 貧困をなくそう
2 飢餓をゼロに
3 すべての人に健康と福祉を
4 質の高い教育をみんなに
5 ジェンダー平等を実現しよう
6 安全な水とトイレを世界中に
7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに
8 働きがいも 経済成長も
9 産業と技術革新の基盤をつくろう
10 人や国の不平等をなくそう
11 住み続けられるまちづくりを
12 つくる責任 つかう責任
13 気候変動に具体的な対策を
14 海の豊かさを守ろう
15 陸の豊かさも守ろう
16 平和と公正をすべての人に
17 パートナーシップで目標を達成しよう

〔1時間目〕世界の教育について知る

 「世界一大きな授業(JNNE教育協力NGOネットワーク)」を活用し、世界の教育事情についてクイズやワークショップを行いました。小学校に行けない児童の割合や不足する教員数、文字が読めない人の割合といった内容です。
 続いて、課題を解決するために必要な援助額(4兆円)と世界のゲーム市場(6兆7000億円)、軍事費(217兆円)のそれぞれの規模の大きさを表すテープ(それぞれ40cm、67cm、22m)を用意し、封筒に入れた状態で生徒たちに引き出させます。22mのテープにもなると教室に収まりきれないので、廊下に出るなどして、その規模の大きさを感じることができます。

 こうした課題を学んだところで、その解決のために活動するマララ・ユスフザイさんを紹介します。メディアにも多く取り上げられているので、写真を見せた段階で分かる生徒もいると思います。ノーベル賞授賞式でのスピーチを読み、なぜ声を上げようと思ったのか、感じたことを記述し共有します。教育に関する課題には何となく気づいている生徒も多いと思いますが、それに対して自分たちと同じ世代が行動を起こしているということを伝えたいところです。

〔2時間目〕SDGsとは?

教育に関する課題を理解した上で、世界にはその他にも様々な分野に課題があることを学習します。まずは「持続可能」「持続不可能」というイメージがわきやすいように、「持続可能」「持続不可能」なことについて、自分の身近な事例から考えさせます。「ゲームは1日1時間以内に制限」は持続不可能だが、「ゲームをした後、温めたタオルを目の上に乗せる」のは持続可能という具合に、本当に身近なものから考えていって良いと思います。

 次に、現代の社会全体を見渡し、「持続可能」「持続不可能」と思えることの例をあげさせます。「高齢化が進む中での介護の問題」は持続不可能、AIが進歩した世の中でも「クリエイティブな仕事」は持続可能といった感じです。その上で、SDGsの存在を説明し、世界でも持続可能な開発というものが注目されていることを伝えます。

〔3時間目〕SDGsを身近に考えよう

3時間目は、前時にあげた「持続可能」「持続不可能」の例について、SDGsとの関連を考えさせます。例えば、「朝昼晩、毎回30分以上かけて歯磨きする」のが「持続不可能」だとすれば、SDGsのどのゴールの達成を妨げるか?といったことです。実際に出た意見では、「ゴール8の経済成長に関連し、歯磨きに時間が取られすぎて仕事の時間にも影響し、経済活動が停滞する」といった感じになります。

 同様に、「1日1回は20分かけて歯磨きする」というのが「持続可能」だとすれば、SDGsのどのゴールの達成に近づくか?も考えさせます。こちらの例では、「ゴール3の健康に関連し、歯の健康が維持され虫歯予防になることで、無駄な医療費を使わず、本当に必要な人に医療を提供できる」といった感じです。

 こうした作業を踏まえ、学校生活における行動でSDGsと関連する事柄を考えてみます。例えば、「授業はしっかり受ける」が、ゴール9「産業と技術革新の基盤をつくろう」に関連し、「授業を受けることでいろんな技術が身につく」といった具合です。

 ここまで考えたところで、「ひとこと多い張り紙(JANIC提供)」を作成します。
(参考)国際協力NGOセンターJANICウェブサイト(SDGs理解促進ツール)
 http://www.janic.org/world/sdgstool/


〔4時間目〕地域活性化プランをSDGsの視点から

前時までで、SDGを身近に捉えることは十分にできると思いますが、最後にオマケとして実施したものを紹介します。以前の学習で「地域を元気にするには?」をテーマに学習を行い、自分たちでプランを考え、それを1枚のチラシにまとめ発表し合うという活動を行いました。
 これらの学習を踏まえ、自分の考えた地域活性化プランを実行することで、SDGsのどのゴールに近づくか?さらに一工夫加えることで、別のゴールに近づけることはできないか?といった課題に取り組ませます。ここですぐに考えられるようになっていれば、「SDGsを身近に捉える」という当初の目的が達せられたと言えると思います。

 ということで、今回のテーマに限らず、またどこの学校であっても、教科書内容を身近に感じてもらう工夫は必須ではないかと思います。お読みいただいて、皆さんの様々な事例もご紹介いただければと思います。
 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

高橋 英路(たかはし ひでみち)

前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭
山形県立米沢東高等学校 教諭


クラス担任と、地歴科で専門の地理を中心に授業を担当。生徒達の「主体的・対話的で深い学び」が実現できるよう、p4c(philosophy for children)やKP(紙芝居プレゼンテーション)法などの手法も取り入れながら日々の授業に取り組んでいます。

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