ソーシャルスキルアクティビティの魅力
夏休み中に、元同僚であった先輩の先生と会う機会がありました。仮にA先生とします。彼女とは教育観が似ていて、心を割って話し合える貴重な存在です。
実はA先生と会うにあたって、私はバッグの中にこの夏に発刊された著書を忍ばせていきました。話の流れによっては、ご紹介しようと思っていたのです。
特定非営利活動法人TISEC 理事 荒畑 美貴子
「きちんとした授業」とは?
さて、A先生と話している中で、教師の中には「きちんとした授業」というイメージにこだわるあまり、アクティビティなどを取り入れるのを極端に嫌う方がいるという話題が出ました。
彼女は今、時間講師で書写などを教えているそうですが、面白い話や活動を取り入れると、担任の先生から「授業以外のことはやらないでください」という注文が出るそうです。
授業を成り立たせるために、あるいは子どもたちの興味や関心を高めるために、引きつけるための話をしたり、ちょっとした遊びを取り入れたりするのはよくあることです。
彼女がかかわっている担任の先生が、なぜアクティビティを「授業以外」と表現するのか、「きちんとした授業」とイメージするものはどのようなものなのかと、考えを巡らせてしまいました。
ソーシャルスキルアクティビティの効果
話は逸れますが、荒れたクラスを立て直すときに、アクティビティを取り入れることで成果が上がることがあります。学校や勉強はつまらないと思っていたり、友達とかかわるのが苦手だと思っていたりする子どもたちがいたとしても、アクティビティをやることで興味をもつことがあるからです。
また、45分間という長い時間を集中させることは困難であっても、途中に気晴らしになるような活動を取り入れていくことで、気持ちが切り替わり、再び集中させていくことができることもあります。
単純にジャンケンをするとか、クイズを出すといった遊びでも成果は上がりますが、授業中だということにこだわるならば、ソーシャルスキルを高められるようなアクティビティを取り入れるのも一つの手段だと思います。
実際に、以前担任したクラスは、私が本を書くためにアクティビティを実証しようとしていたこともあり、ちょこちょことソーシャルスキルアクティビティを取り入れました。
その結果、私の担任中も友達との関係性がよくなり、授業にも興味や関心をもって臨む子どもたちが増えました。次の学年になって担任が代わっても、子どもたちの団結力は衰えることなく、そういった取り組みをしてこなかった隣のクラスとの差は大きなものとなってしまいました。
子どもたちのために、楽しい授業、身に付く授業を
A先生との話に戻ります。彼女との話題が発達障害のある子どもたちへの効果的な指導や、興味や関心を高めるための手法に移ったところで、私は著書をお見せすることにしました。
それまで、数人に紹介したときには、「すごいですね、ありがとう」という返事をいただいて終わったので、今回もそういった反応なのだろうと予想していました。しかし、彼女の反応は、よい意味で裏切られました。
A先生は本で紹介したアクティビティをひとつひとつ確かめ、「これもいいわね」「あ、これ早速使うわ」などと感想を言ってくれたのです。おかげで、それぞれのアクティビティの効果もお伝えすることができました。本を出してもらったということは誇りでもありますが、気恥ずかしさが伴います。それでも、お見せしてよかったと思いました。
別れ際、A先生は会話のまとめとして次のような話をしてくれました。
「教室には様々な子どもたちがいるでしょ。私はどうすればそういった子どもたちにも授業を楽しいと思ってもらえるか、素材を探していました。担任の先生には叱られるかもしれないけど、私は気にしていないんです。子どもたちのために、楽しい授業、身に付く授業をやっていこうと思います」
「急がば回れ」ということわざがあります。性急に知識を詰め込もうとするよりも、子どもたちの基礎となる力を培いつつ、楽しい授業をしていくことが大切だと改めて考えた一日となりました。
荒畑 美貴子(あらはた みきこ)
特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com
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