2022.07.01
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子どもたちを取り巻く環境の変化〜隆盛する切り抜き動画・まとめサイト〜

「切り抜き動画」というものが動画投稿サイトで流行しています。切り抜き動画とは、有名なYouTuberやゲーム配信者の動画を、本人や第三者が短くまとめて編集しなおしたものです。また、TikTokなどの1分程度の動画も子どもたちの中で人気となっています。加速化する時代の中で、「短くまとまっている=サマリー」というのは若者たちの中で重要な要素なのかもしれません。今回は、要点・要約といった言葉の混同を防ぐためにあえて、サマリーと統一します。

浦安市立美浜北小学校 教諭 齋藤 大樹

編集された動画が切り抜かれていく

配信されている動画の多くにはカットやジャンプカットの技術が用いられています。ジャンプカットとは、会話の間となる無音部分を削除する編集のことです。人気動画配信者の多くが、テロップをつけたりカットを施したりするための編集スタッフを雇っています。編集者や事務所のスタッフが演者を撮影した素材動画をテンポよく視聴者が見られるように編集しているのです。

そのような手間と人数をかけて編集している動画なのに、更に様々な部分をカットしていく切り抜き動画が流行していきます。切り抜き動画は、本人や所属事務所が切り抜いたものもありますが、第三者が編集しているものが多いです。登録をしているお気に入りの動画配信者の動画を直接みるのではなく、なぜ第三者が加工した動画を見る人が増えているのでしょう。切り抜き動画の再生数は元の動画よりも多くなっている場合すらあり、その流行具合が分かります。

子どもたちにどのように視聴しているのか聞いてみると

子どもたちに放課後の過ごし方を聞くと、「動画を見ている」と答える子が多いです。あこがれの職業として、各種調査でYouTuberが上位に来る時代となりました。
昨年度担任していた6年生でも、多くの児童がテレビよりもインターネット上の動画を見ている方が多かったです。

私の勤務している地域は習い事に通う児童が多いです。放課後の時間があまりないのにも関わらず、どうやって動画を見る時間を捻出しているのか疑問だったのですが、とある児童がこの様に言っていました。

「先生、倍速で見ているよ」

YouTubeや有料動画配信サービスのほとんどに動画を2倍速で見られる機能があります。配信者が編集した動画を、更に誰かが切り抜きして、なおかつそれを2倍速で視聴する。

昭和生まれの私にとって、本当に楽しめるのか少々理解できませんが、子どもたちは満足していました。むしろ普通に見ると、面倒だと感じるようです。
テレビ番組すらリアルタイムではなく、事前に録画をしてある番組をさっと早見で見るような視聴スタイルが増えています。

文章すらまとめるAI技術の進化

文章を自動でまとめてくれるサービスが登場しています。文章を入力すると、AIがその文章を要約してくれるのです。ホームページのURLを貼り付けることで、ホームページも自動で要約してくれます。
最近は、GIGA端末で使われることの多いGoogle Docsにも自動要約の機能が追加されました。

Googleなどの検索エンジンで検索をしたあとに、そのウェブサイトの記事の内容が少しだけ検索画面に表示されます。こちらの文章のこともサマリーとも言います。
様々なサイトの情報をAIが複合的に要約した「ナレッジグラフ」も導入されており、検索結果の横に表示されています。
「強調スニペット」という検索したキーワードに関するおすすめサイトの要約なども検索画面の上部などに表示され、サイトを見なくてもある程度キーワードについて知ることができるようになりました。
私たちの身の周りには既にたくさんのAIによるサマリーがあふれています。

Google検索をする際に、大量に表示されるウェブサイトを全て見る人はほとんどいないでしょう。AIが表示するナレッジグラフや強調スニペット、サマリーだけを参考にして検索を終える人も多いと思います。
もはやウェブサイトすら見なくともある程度情報を得ることができるのです。加速化する時代の中では、AIが判断する情報は大きな価値を持つようになりました。

テクノロジーが子どもたちに与える影響を先んじて予想する

時代とともに子どもたちを取り巻く環境は日々変化しています。ネットゲーム、スマートフォン、SNSなどこの10年でも多くのテクノロジーが生まれ、その際には引きこもりや課金問題など様々な課題が発生しました。
時代の変化をいち早く受ける児童・生徒だからこそ、常に私たちは最新のテクノロジーにアンテナを張らなければならないと思っています。

要約という技術は、国語の学習に置いては根幹をなすような重要な内容です。第三者やAIによる優れたサマリーに触れることで、自分自身にも優れた技術が身につく部分もあるでしょう。
一方で、抽象や具体、事実と意見といった観点を見抜けない子どもたちが増えていくのかもしれません。

新しいテクノロジーは子どもたちに良い影響を与えるのか、はたまた悪影響を与えるのかをしっかりと見極めなければならないと考えています。
せめて、授業だけはじっくりと考えていくことを大切にさせていこうかと思っています。

今回もご覧になっていただき、ありがとうございました。

齋藤 大樹(さいとう ひろき)

浦安市立美浜北小学校 教諭


一人一台PC時代に対応するべくプログラミング教育を進めており、市内向けのプログラミング教育推進委員を務めていました。
現在は小規模校において単学級の担任をしており、小規模校だからこそできる実践を積み重ねています。

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