デジタル教科書は授業や学び方を変えるのか?
この春より実証事業として、学習者用のデジタル教科書が小中学校の外国語科を中心に導入されました。
学習者用のデジタル教科書は授業や学び方を大きく変える可能性があります。
兵庫県西宮市立甲陽園小学校 教諭 羽渕 弘毅
学習者用デジタル教科書の使用例を紹介
この春より実証事業として、学習者用のデジタル教科書が小中学校の外国語科を中心に導入されました。
現場からは、
「児童生徒が使えるようになるまでの準備が大変」
「各教科書会社によって仕様が違い、児童生徒が混乱をする」
「そもそも使用する必然性はあるのか?」
といった苦労や疑問が早速見られています。
しかし、学習者用のデジタル教科書は大変便利なもので使い方次第では大きく授業の在り方や児童生徒の学び方を変える可能性があると考えています。
私が普段行っている学習者用デジタル教科書の使用例を紹介しようと思います。
この記事を読んでいただいて、少しでも「授業の中で使ってみようかな」と感じていただければ幸いです。
普段の授業の流れは以下の通りです。
- 帯活動(チャンツ、アルファベット、フォニックスなど)
- スモールトーク「こまっトーク」※「こまっトーク」については以前の記事をご参照ください。
- スモールトークで出てきた課題(めあて)の確認
- 課題解決に向けて、「まずはやってみる」
- 課題解決に向けて、必要な表現やポイントを全体で確認
- 解決のヒントになりそうな教科書のページを「誌面」で確認※誌面で確認をしてから、デジタル教科書に移ることで探す作業がスムーズになります。
- デジタル教科書を使って必要な表現を「取捨選択」する
- 課題解決に向けて、「もう一度やってみる」
- 今回の課題解決に必要であったキーフレーズなどをワークシートに書き写す※キーフレーズは指導者が整理をして提示する。
児童は書き写すことを目標とする。
デジタル教科書の使用を促す際にポイントとなるのは以下の3点です。
・デジタル教科書が課題解決のヒントとなる可能性があること
・得た情報を「取捨選択」すること
・アナログとの融合
デジタル教科書が課題解決のヒントとなる
児童生徒にとってはデジタル教科書は目新しく非常に面白いものです。しかし、有効的な使い方を体験しないと「ただ面白いもの」で終わってしまう可能性もあります。
従来の授業では、指導者が音声を流すのが当たり前でしたが、児童生徒が必要な音声を必要な分だけ聞くことができます。その中で、課題解決となるヒントを見つけられるような支援(例えば、机間指導など)を加えることで、デジタル教科書の便利さを身をもって体験することができます。
「取捨選択」すること
これが非常に重要であると考えています。デジタル教科書によって得られる情報は大量になります。
そこで課題解決に向けて、必要なものを選び、不必要なものを捨てることを促さなければいけません。
この選んだり、捨てたりする体験が児童生徒の思考力・判断力・表現力の育成につながると信じています。
アナログとの融合
私はデジタル教科書だけではなく、デジタルワークシートも授業の中で頻繁に使用します。
デジタルワークシートは、印刷の手間もなく、すぐに教材が作れたり、配布することができたり非常に便利なものです。
しかし、「書くこと」においては紙媒体を選ぶようにしています。自治体によってはタブレットやタッチペンの性能に差があり、一概に紙媒体を薦めることはできませんが、アルファベットを書いたり、文のまとまりを書き写すことは紙媒体で行っています。
授業の中では、デジタルに頼る部分とアナログに頼る部分があり、その意図を明確にしつつ指導を進めようと考えています。
終わりに
実証事業は始まったばかりです。
今後、学習者用デジタル教科書を利用した指導法や学習方法の事例を収集し、指導者や児童生徒への影響を確かめる必要があると考えています。
そのためにも教員研修だけではなく、日々の実践を交流する機会を意図的に計画すべきかもしれません。
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羽渕 弘毅(はぶち こうき)
兵庫県西宮市立甲陽園小学校 教諭
専門は英語教育学(小学校)、学習評価、ICT活用。 広島大学教育学部を卒業後、高等学校での勤務経験を経て、現職。 これまで文部科学省指定の英語教育強化地域拠点事業での公開授業や全国での実践・研究発表を行っている。 働きながらの大学院生活(関西大学大学院外国語教育学研究科修士課程)を終え、「これからの教育の在り方」を探求中。 自称、教育界きってのオリックスファン。
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