デジタル教科書ってどうなの?
「デジタル教科書」が新年度から、全小中学校に無償で提供されるニュースが1月に発表されました。
文部科学省が本格導入に向けて、「外国語(英語)」で配布し、希望する一部の学校には他教科1教科分を提供する流れになっています。
教科書会社によって性能や仕様が様々でありますが、今後デジタル教科書が紙の教科書と同様に無償化になるのか、今後非常に注目されている動きの1つです。
今回は、デジタル教科書を導入するにあたって、各学校や指導者が気をつけていきたいことを述べようと思います。
兵庫県西宮市立甲陽園小学校 教諭 羽渕 弘毅
デジタル教科書を導入するにあたって大切にしたいこと
①紙の教科書との優劣を決めるものではない
デジタル教科書のことが話題になると、どちらのほうが使いやすい(素晴らしい)という議論になりがちです。
そうではなく、紙の教科書の役割とデジタル教科書の役割をうまく学習に活かせるように授業設計していくことが必要であると考えます。アナログが活躍する学習活動、デジタルが活躍する学習活動……授業のねらいにせまるために道具をどのように使うかを考えることが大切です。
そして、最終的には児童生徒が自分の学びやすさに応じて学び方を選択できるような能力の育成を目指したいですね。
②教えやすくするものではなく、学び(使い)やすくするものである
デジタル教科書を使って、「『教え』やすくなった!」という声はよく聞きます。
さて、今回児童生徒に配布されることによってもう1ランク上を目指した授業の在り方を考えなくてはいけません。
それは、デジタル教科書がいかに児童生徒にとって学びやすくなるものかを目指すことにあります。
例えば、指導者が出す課題に対して児童生徒自らデジタル教科書を上手く活用しながら取り組むことです。
そこで重要なのは、「いかに自ら課題に取り組みたくなるような課題であるか」だと考えています。
外国語科におけるパフォーマンス課題をクリアするために、デジタル教科書を使って見本となる動画を自ら視聴したり、自己表現に必要な語彙や表現の発音を調べたりすることが考えられます。
これは普段の授業でも同様のことが言えます。デジタル教科書を導入の前に、「課題」について改めて考えてみませんか。
③学びの過程を見取る
3つ目は、デジタル教科書の仕様にもよりますが、学びの過程が残るようなものであってほしいという願望です。
前学期や前学年に学んだこと(学習履歴)はもちろん、教科書内の課題に取り組んだ時の様子(一度消して、もう一度書いている姿など)や記録が残ったり、学級内で共有できたりすることが可能になってほしいと考えています。
そうした学びの過程が残ることで、指導に生かすことができるはずです。
「外国語(英語)」のデジタル教科書では、音声を聞いたり、動画を視聴したりすることができます。
また書く活動にも使える場面が増えることが想定されています。
そのため、イヤホンやタッチペン(※書きやすさの検討が必要)の準備や導入を検討していかなくてはいけません。
新しいものが導入される際は、非常に苦労が多いです。
教科の特性に応じて、新しい授業の創造を目指したいですね。
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羽渕 弘毅(はぶち こうき)
兵庫県西宮市立甲陽園小学校 教諭
専門は英語教育学(小学校)、学習評価、ICT活用。 広島大学教育学部を卒業後、高等学校での勤務経験を経て、現職。 これまで文部科学省指定の英語教育強化地域拠点事業での公開授業や全国での実践・研究発表を行っている。 働きながらの大学院生活(関西大学大学院外国語教育学研究科修士課程)を終え、「これからの教育の在り方」を探求中。 自称、教育界きってのオリックスファン。
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