2021.12.28
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STREAM教育の到来、ロボットとリアリティを大切にしたプログラミング教育

人型ロボットといえば鉄腕アトムやドラえもんを思い浮かべる方が多いでしょう。特にドラえもんの愛くるしい姿や仕草は、老若男女問わず人気です。大山のぶ代さんや、水田わさびさんなど歴代の声優さんたちが築き上げた親しみやすいその声も人気です。ドラえもんの姿を見ると、声を聞くと、どことなく安心するような、ホッとした気持ちになることができます。ロボットとは夢や漫画の世界のものでしたが、今やその夢を実現したロボットが登場しています。今回は、ロボットを活用したSTREAM教育について考えていきます。

浦安市立美浜北小学校 教諭 齋藤 大樹

STREAM教育とはなにか。

前回、STEAM教育というA(アート感覚)を大切にした教育が重要視されているという記事を掲載しました。アートを大切にした本校の造形活動の様子を紹介しましたが、その第2弾として、今回はSTREAM教育に取り組んだレポートを紹介します。STEM、STEAMと来て、次はSTREAM。Rとはロボットのことを主に示します。リアリティなど他の言葉を指す場合もあるそうですが、一般的にロボットを表すことが多いようです。

「Pepperくんが教室にやってきた!」

STREAM教育を進めるにあたって、今回はソフトバンクロボティクス株式会社にご協力いただき、人型ロボットのPepperを用いることにしました。ソフトバンクグループでは、以前より社会貢献の一環としてPepperを活用したプログラミング教育サービスの提供を行っており、本校でもプログラミング学習の進展のために貸与してもらうことになりました。ソフトバンクロボティクス株式会社による教師用指導書も作られており、誰でもPepperの動かし方や充電方法、プログラミング方法も分かりやすく示されていました。本校の子どもたちは、Pepperを親しみを込めて「Pepperくん~!」と呼び、楽しそうにプログラミング学習に取り組んでいました。子どもたちは、人型ロボットであるPepperが本当に好きなんだと感じました。

自然と笑顔になる人型ロボット

自然と笑顔になるような姿

海外では人型ロボットやAIというと、必ずしも人々に愛される存在というイメージではないと聞いたことがあります。
映画『ターミネーター』ではロボットが暴走して既存の世界を滅ぼし、『マトリックス』では進化したAIが人々を電力の供給源として利用している様子が描かれています。

それに比べて日本でのロボットというと前述したドラえもんの様に夢を叶えてくれるというイメージがあるでしょう。
遂に人々の人型ロボットという夢を叶えてくれたPepperは、その存在だけで自然と人々を温かい気持ちにさせてくれます。
Pepperは、ちょうど子どもたちの身長と同じくらいの高さで、愛くるしい姿をしています。
Pepperには挨拶やラジオ体操などを行うことができるようなアプリケーションがインストールされています。
試しに廊下で挨拶をさせてみたところ、低学年だけではなく高学年も笑顔で挨拶を行っていました。
子どもたちが「ぜひ触ってみたい」「動かしてみたい」という気持ちを持ち、それが授業への意欲の源となっていることを感じました。

アンプラグドやブロックプログラミングの経験を土台として

Robo Blocksの操作画面 © SoftBank Robotics

Pepperを動かすには、「Robo Blocks」というScratchベースのプログラミングで指示をします。
子どもたちは、これまで学習してきたアンプラグドやScratchなどのブロックプラグミング学習を応用して取り組むことができるのでものの数分でPepperを動かすことができました。

ロボットに何をさせるかが重要

AIやロボットには善悪の判断ができません。人間が指示をすることで、愛嬌のあるPepperに誹謗中傷などの発言を言わせることすら可能になってしまいます。そうしたことが起こらないようにしっかりとモラル教育を行い、倫理観を持ってロボットにプログラミングをさせることが重要なのでしょう。

まず高学年の児童には、どのような場面でPepperが活躍しているのかイメージをさせました。そして、「その状況での課題を解決しよう」と声かけしました。子どもたちの発想は豊かで、高齢者を楽しませるようなゲームを作ったり、保健室で怪我をした児童を励ましたりするプログラミングを考えていました。下学年を楽しませたいと思い、じゃんけんゲームなどを工夫して考える子もいるなど、相手の気持ちを考えて自然と人を笑顔にさせるプログラミングを考え始めました。

初めは単に遊び感覚だった子どもたちの表情も次第に真剣になり、試行錯誤を繰り返してより良いプログラミングを組もうと努力していました。街中で見かけることが多くなってきたロボットがどのような仕組みで動いているのか、そしてロボットには何が求められているのかを学ぶ良い機会になったと思います。

リアリティあるSTREAM教育を目指して

今回はPepperを使ったSTREAM教育についてお話ししました。Rとはロボットという意味だけでなくリアリティという意味もあるそうですが、ただ単にブロックプログラミングするだけではなく、実際にロボットという実体験を児童に味わわせることも大切なのでしょう。

常にインターネットやAIに触れる子どもたちだからこそ、人型ロボットというリアリティのある体験によって学びを深めることが、明日の社会を生き抜く子どもたちを育てるのだと思います。ロボットによるリアリティのある教育、ぜひ2022年もそうした教育実践を重ねていきたいと思います。

読者の皆様も、どうぞ良いお年をお過ごしください。

*Pepperはソフトバンクロボティクスの商標です。

齋藤 大樹(さいとう ひろき)

浦安市立美浜北小学校 教諭


一人一台PC時代に対応するべくプログラミング教育を進めており、市内向けのプログラミング教育推進委員を務めていました。
現在は小規模校において単学級の担任をしており、小規模校だからこそできる実践を積み重ねています。

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