2021.08.18
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先人たちから学ぶ新たな授業づくりの基礎技術「教師よし!」

教育界に名を残した先人たちの一人である大西忠治さんの著書には多くの教員たちが影響を受けています。大西先生の有名な指導技術の一つに「四分六の構え」というものがあります。教師の姿勢を黒板側に4、児童側に6の割合で向けて授業をすることで子どもたちの集中力を保つという技術です。
こうしたちょっとした教師のワザ(Tips)を知っているだけでも授業の雰囲気は大きく変わります。私たちはそういった先人たちのTipsを引き継ぎ、30人以上のもの人数でも授業規律を保ち、より良い授業にしようと努力してきました。一人一台時代が訪れた今、新たな授業つくりのTipsとは何でしょうか。

浦安市立高洲小学校 教諭 齋藤 大樹

GIGA端末使用時の授業規律をどこまで求めるか

この連載の中でもお伝えしていますが、本校は教科担任制を進めています。私は5年生と6年生の計6学級で総合的な学習の時間を指導しています。前期はScratch(プログラミング学習用ソフト)を用いてプログラミングの学習を行いました。Scratchには多くの有志が作ったプログラミングが紹介されており、スクロール型やシューティングのゲームなど、子どもたちが楽しめるプログラミングも多いです。
プログラミングは人気の学習内容なので、子どもたちも早く作ってみたいとワクワクしています。Scratchに限らず、プログラミングをするためには児童がある程度説明を聞く必要があります。分岐や繰り返しなどのブロックの使い方、絵の描き方など細かな操作方法をも説明する必要があるでしょう。
しかしながら、目の前にパソコンがある状況では、どうしても触りたくなるのが子ども心でしょう。早くプログラミングを組んでみたいという前向きな気持ちでしょうが、自分では教師の説明を聞いているつもりでもついつい目がパソコンの画面を向いてしまう子が多くなってしまいます。お子さんによっては既にプログラミング教室などで学習している子も多いので、知っていることだと判断してしまい、集中して話を聞くことができないお子さんもいるでしょう。有志の作ったプログラムでただゲームをするだけになってしまう子もいます。
また、調べ学習で検索をしているときに出てきた広告が気になって、ついついクリックしてしまうようなお子さんもいるでしょう。SKYMENUなどのソフトでは、児童の見ている画面を把握することも可能でしょうが、そういったソフトがない場合にはもはや児童を信じるしかありません。
特に自分の学級ではない場合ほど、GIGA端末使用時に、授業規律を子どもたちに意識してもらうことが難しいと感じます。他教科で授業規律を育てるという方法は教科担任制では限界がある場合があるからです。

ちょっとしたTipsで児童の心をつかむ

こうしてGIGA端末を使っている際に集中できていない児童を叱責するのは簡単です。しかしながらこうした話を聞かない態度は、本当に児童だけの責任なのでしょうか。そもそもGIGAスクール構想にある個別最適化された学習と、これまで私たちが行ってきた一斉指導の中での画一的な学習は少し異なる気がします。
本来であれば児童に学びに向かう人間性や態度を身につけてもらい、それぞれの興味関心に合ったものを学習してもらうということが必要なのでしょう。個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実、その理念は十分に理解しているつもりです。それでも全体指導の中で説明をしっかりと聞いてもらいたいことは出てきます。こちらがせっかく話しているのだから、ぜひ子どもたちにはしっかりと集中して聞いてほしいというのが多くの教師の願いでしょう。
そこで重要なのがちょっとしたTipsで児童の気持ちをつかむことなのかなと思います。

「三分開きの構え」で児童の全集中を保つ

WindowsやChromebookなどのラップトップを使わせている時に、パソコン画面を見なくても良い説明をする際には、ラップトップ画面を7割ほど閉じさせるようにしました。
大西先生に倣い、「三分開きの構え」と名付けましたが、完全に閉じないこの形がとても便利でした。三分程度の開きでは、子どもたちは画面をほとんど見ることができません。子どもたちは集中して話を聞いてくれるようになりました。
実はGIGA端末は文科省からの補助を受けて購入している端末が多いです。4万5千円という補助限度額を考えると、PCの場合にはほとんどがIntel社のCeleronを使っています。Core iシリーズやアップルのM1などと比べるとどうしてもCPUの非力さは否めません。特にWindowsだとスリープの解除ですら時間がかかってしまい、児童が操作する際にラグが発生する場合があります。ほんの10秒のラグの違いが全体説明の場面では、混乱の元となってしまうのです。
スリープになるのは嫌だけれども、ラップトップを開いたままだと集中力が保てないというときに「三分開きの構え」をぜひお試しください。

チョークの色は背景と文字色で表現

大西先生は『授業つくり上達法』の中で、チョークの色にも言及されています。チョークの色の見やすさを考えて板書するが如く、色にも気を付けて指導したいものです。
プロジェクターで資料を提示している学校が多いと思います。ワードやエクセルの資料を見せている場合には、背景を白地にして文字を黒にしている方が多いと思います。そうすると画面が見えないことはないでしょうか。私の教室には天窓がついており、午後になるとちょうど黒板に光が当たって見えにくくなることがあります。
こうした時、背景を濃い緑にして、文字を白にすると明るい教室でも文字が見やすくなりました。更にこの設定だとプロジェクターを白のスクリーンなどではなく、黒板に向けても文字が視認しやすくなります。個人的には、黒板に資料を映すと便利です。なんとプロジェクターで映した画面に直接チョークで書き込むことができます。
電子黒板などのインタラクティブペンで書こうとすると発生する一瞬のラグが発生します。ホワイトボードマーカーを使おうとするとチョークから持ち直さなければならず面倒です。私はどうも古い人間なのか、チョーク一本で勝負したくなってしまいます。
もちろん動画などを見せる場合にはホワイトボードやスクリーンに投影しますが、地図などを提示して書き込む場合には、黒板に投影すると便利です。プロジェクターに壁色補正がついている機種もあるでしょうから、そちらも設定するとより画面が見やすいでしょう。ワードでは、「リボンーデザインーページの背景―ページの色」を使うとページの背景を変更することができます(パワーポイントの場合は、「デザインー背景―デザインの書式設定」)。ぜひ一度試してみてください。

 

貼りものはパワーポイントの枠外で表現

「緑色の背景に白文字」と「貼りもの」

板書技術で大西先生が紹介されているように貼りものも板書の重要な技術です。タイミングを見て児童に掲示するために文字や写真を隠しておきたいということもあるでしょう。パワーポイントを使っている際には、アニメーション機能をつけておくことが多いです。こちらは多くの方が既に実践していると思います。ただ、授業はLIVEなので、どのタイミングで貼りものを使うか、事前にアニメーション機能をつけたくないはという方もいるでしょう。
そうした時に、私が使うのは、パワーポイントのスライド枠外に文章や図、写真を置いておく方法です。必要に応じてスライド枠の中にドラッグする方法です。escボタンを押してスライドを止め、枠の中に持ってきた後にファンクションキーとF5を押してもう一度スライドを再開します。そうするとアニメーション機能のタイミングを深く考えなくても、自分のタイミングで表示したい文書や図を示すことができます(もっと良い方法があるかもしれません)。

現場でただひたすらにカイゼンをしてTipsを創る~

一人一台のGIGA端末を最適に活用する。私たちが学んできた先人たちが仮に今もご存命だとしたら、この難局をどのように乗り越えていったでしょうか。私自身は研究者ではありませんし、しょせん公立学校に数多存在している教師の一人です。大それたことを考える立場ではないことも十分承知しています。
ただ、現場にいる私たちが世の中の変化を自分ごととして考え、常に指導技術をカイゼンし続けることが重要だと考えています。私たちが学んできた先人たちもそれぞれの時代の中で実践をし続けてきたのでしょう。日々のカイゼンの中で思いついた、本当にちょっとしたTipsを後輩に伝えていきたいものです。

齋藤 大樹(さいとう ひろき)

浦安市立高洲小学校 教諭


一人一台PC時代に向けてプログラミング教育を進めており、市内向けのプログラミング教育推進委員を務めていました。
一部教科担任制を取り入れ、2年連続で総合的な学習の時間を指導しています。

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