2021.07.14
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個人面談マニュアルー小学校・保護者ー

児童生徒ではなく、保護者と1対1で面談するとき、私がしていることを挙げてみました。

読者を経験のない先生と想定して、経験者には当たり前のことも、丁寧に書きました。

東京都内公立学校教諭 林 真未

面談の始まる前と終わり際を大切に

講座の始まる前、終わった直後の、リラックスした時間を大切にすること。
これは私が家族支援をしていた時に学んだ鉄則。
個人面談は講座ではありませんが、応用して使っています。
具体的にはこんな感じ。

【始まる前】
まず、来た方が、すぐ見て分かるような場所に、張り紙をします。
個人面談の予定表と、その横に、
「お忙しいところありがとうございます。お時間になりましたらお入りください。お待ちの間は、椅子と机をご利用ください。」
と書いた紙。
そして廊下の壁に沿って、椅子2脚と机を並べておきます。
2脚にするのは、夫婦そろって来たり、小さい弟妹を連れてきたりするかもしれないから。
机の上には、大人向きの本と絵本を数冊。
大人向きの本は多賀一郎著『学校と一緒に安心して子どもを育てる本』(小学館)がオススメです。
絵本は、0−2歳でも読める文字のない絵本や、3−5歳が1人で飽きずに読めそうな、電車や動物図鑑など。いつ呼ばれるかわからないのに、読み聞かせするようなストーリー絵本は落ち着いて読めません。
こうして、丁寧な張り紙をすることで、また、待っている間心地よく過ごせる配慮をすることで、歓迎の意を伝えたいのです。

【終わり際】
面談が終わった後、別れ際も大切に。
話が終わり、保護者が席を立ったからといって、すぐに次の方の資料に目を通すなど、切り替えてはいけません。
終わった後の、最後の最後に、本音を漏らす方や大事な質問をする方があるので、最後までゆっくりお見送りします。
庭のハーブを摘んできて、レシピを添えて、ご自由にどうぞと廊下に置いておいたりもしました。
とにかく
「きてよかったな」
と思えるような仕掛けを何かしたかったのです。

時間厳守

私は、予定時間厳守です。
保護者の方の話が長くなりそうだったら、
「ゴメンナサイ、時間なので」
とお伝えして切り上げてもらいます。

先生方の中には、たくさん話をしたい親の順番を最後にしたり、その子の後ろを空き時間にして、たっぷり面談するという方もおられます。
けれど私は、必ず同じ時間で面談するようにしています。
人によって時間が長短するのは、なんだか申し訳ない気がして。

それだけじゃなく、誰かの時間が延長すると、それ以降の予定時間が狂ってしまう。
きちんと時間を守ってきた方が、待たされることになってしまいます。
どの方も、たった15分程度のためにわざわざ学校まで来てくださっているんです。
こちらとしては、せめて時間通りに進行しないと。
生真面目にそう思っています。
長い面談が必要な場合は、また別の日に設定します。

まず聴く

面談が始まったときには、必ず先に、保護者に尋ねます。
「何か、学校や担任に伝えたいことはありますか。」
聞くではなく、聴く。

心配事や不満、いったい何に一番困っているのかを、こちらの恣意的な理解を極力交えず、正確に把握するように努力します。そしてその解決策を練ってから、こちらの伝えたいことを言います。
伝えたいこと。私の場合は、たいてい、学校でのその子の素敵なふるまいやありよう。そして一緒に学べることへの感謝と。
このとき、学習した成果物や図画工作の作品などを用意しておくと、話が弾みます。

イラスト/有田りりこ

子どもに問題行動があるとき

学校で問題行動があることを、保護者に伝えるとき、私はこういう言い方をします。

「私はまだ〇〇さんと3ヶ月のお付き合いなので、〇〇くんを生まれた時から育てている、お母さん(お父さん)に教えて欲しいことがあります。〇〇君は、学校で✖︎✖︎してしまうんですけれど、どうしてだかわかりますか? また、やめさせるにはどうするのが効果的でしょうか」
たとえ真実であっても、
「〇〇さんは✖︎✖︎して困ります。」
と不躾に言うのは禁物です。

人間は真実よりもイメージによって生きています。
「〇〇さんは✖︎✖︎する」のがたとえ真実であっても、この言い方では、「先生、なにもあんな言い方をしなくても」という感情がその人を覆ってしまいます。
そうすると、先生に対する不信感が生まれ、うまく行くことも行かなくなってしまうと思います。

等身大の自分で 子どもの善い育ちを目指す仲間として

どうしても、保護者が苦手、と構えてしまう先生が多いですよね。
正直、私もその気持ちはわかります。
けれど本来、先生と保護者は、肩を並べて子どもの善い育ちを目指す間柄。協力関係のはずです。
苦手意識を持つのは、うまくいかなかったときからでも間に合います。

保護者の方より自分(先生)の方がずっと若くて心配?
それなら、無理をして先生らしくする必要はありません。
子育て経験がないから、親の気持ちはわからない?
それなら、わからないとそのまま言えばいい。
逆に、その分子どもには近いのですから、子どもの気持ちを代弁することもできるかもしれません。

等身大の自分でなければ、結局ボロが出ます。
いつでも飾らず無理せずにいれば、毎日胸を張って自然体で生きていけます。
親がほしいのは指導でも迎合でもなく、共感そして誠意です。
子どもを真ん中に、お互いを信頼し合って面談できるといいですね。

林 真未(はやし まみ)

東京都内公立学校教諭
カナダライアソン大学認定ファミリーライフエデュケーター(家族支援職)
特定非営利活動法人手をつなご(子育て支援NPO)理事


家族(子育て)支援者と小学校教員をしています。両方の世界を知る身として、家族は学校を、学校は家族を、もっと理解しあえたらいい、と日々痛感しています。
著書『困ったらここへおいでよ。日常生活支援サポートハウスの奇跡』(東京シューレ出版)
『子どものやる気をどんどん引き出す!低学年担任のためのマジックフレーズ』(明治図書出版)
ブログ「家族支援と子育て支援」:https://flejapan.com/

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