2021.06.15
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複式学級の学級経営~複式学級の学習指導で大切にしたいこと~(第2回)

前回は、複式学級の学級経営で大切にしたいことを考えました。今回は、複式学級の学習指導で大切にしたいことを考えます。

複式学級は、異なる学年が一つの教室で学習するので、指導する側にとっては大変なことも多いです。大変ではありますが、子どもたちの特性や個性に応じた学習活動を行うことができるメリットもあると考えます。そう考える理由をご説明します。

北海道公立小学校 教諭 深見 智一

複式学級ならではの学習指導の工夫が求められる背景

写真1 複式学級での授業場面(校長通信より)

ある先生は、複式学級での学習指導における教師の役割について、片方の学年では「寿司屋」をやって寿司を握り(しかも、「お好み」の注文を受けて)、片方の学年では「中華料理店」で中華鍋を振っているような感じと例えられました。教師の忙しさを表す例としてとても分かりやすく、授業中の教師の「バタバタ感」を自覚しながら指導していた私としては、とっても納得できる例えでした。私は、複式学級ならではの学習指導の工夫が求められる背景として、次の2点が挙げられると考えています。

一つ目に、複式授業における学年別の指導の場合、一方の学年を教師が指導していると、もう一方の学年の児童は、自らの力で学習を進める「間接指導」(児童だけで学習する場面)の時間となります。そのため、児童が自らの力で学習を進めることができるよう配慮したり、必要な手立てを講じたりすることが求められます。

第二に、一単位時間の授業で、同じ教室内で複数の学年の学習が同時進行することから、児童の学年に応じた学習指導をすることはもちろん、個々の能力差や個人差に対応する必要があります。学年は異なりますが、複式学級は児童数が少ないことが多く、「いいですか?」「わかりましたか?」と教師が問うことなく、児童の学習状況を把握しやすいと言えます。

写真1では、右側に写っている学年(3年生)は、教師が児童に対して「直接指導」を行っています。その間、左側に写っている学年(4年生)は、教科ごとに決めている「教科リーダー」の児童が中心となって学習を進めていきます。教科リーダーは、定期的に交代し、多くの児童が様々な役割を経験できるようにしていました。

学習の見通しをもつための「学習計画表」

教師が直接指導することができない「間接指導」の場面では、児童が学習の見通しをもちやすくするために、「学習計画表」を教師が作成し、提示していました。学年によって形式などは異なりますが、

  1. 本時の学習の目標
  2. 学習の内容
  3. 先生がいるか(直接指導)/いないか(間接指導=子どもたちだけで学習を進める)

を記載していました。複式授業の度に毎時間、学習計画表を作るのは、それなりに時間がかかることになります。そもそも、複式学級の教材研究は、2学年分行う必要があります。それでも、作成しておくことで、結果的には学習がスムーズに進むので、教師側も子どももストレスなく指導・学習ができるように私は感じていました。

「教科リーダー」の児童が中心になって自主的に児童が学習を進めていく

写真2 3年生算数の「学習計画表」

筆者の学級では、学習計画表(写真2)の中の学習の順序を表す数字に、実線で描かれている丸が付されている場合は「間接指導」の場面、丸が付されていないものは「直接指導」ということになっていました。また、点線で描かれている丸が付されている場合は、基本的には直接指導ですが、もし先生が戻ってこない場合(もう一方の学年で指導している場合)は、「教科リーダー」が進めてもいいよ、と児童に説明していました。

「教科リーダー」が進行してもよいという場合は、本来は、教師が直接指導したいと思っている場面です。それで、児童だけでは思うように進行できなかったり、担任の意図したように進まなかったりすることも多々あります。それでも、そのような姿が見られることを期待して行っているわけではありませんが、子どもたちだけで一生懸命学習しようとしている姿を見ると、それは、

  • 学ぶことに興味や関心を持っている「主体的な学び」の姿であり、
  • 粘り強く自主的に友達と協力して取り組んでいる「対話的な学び」の姿の一部である

と思っていました。それで、そのような自主的な取り組みや努力を褒めることを心掛けて指導にあたるようにしていました。

「先生、ここまで頑張ったよ!」

一方の学年の指導を終えて、もう一方の学年の指導に入ったときに、「先生、ここまで頑張ったよ!」と話してくれる子どもたちの姿は、とても微笑ましく、充実感に溢れていました。

はじめて複式学級を担任した際には、「単学年の学級のほうがスムーズに学習を進められるのに…」と思ってしまいがちでしたが、教師が見方を変えれば、「新たな学びに向かう力」を育てるチャンスが複式学級にはあると前向きに考えることもできます。ただ、教師の見方を変えることは、私もそうですが、なかなか難しいものです…。

深見 智一(ふかみ ともかず)

北海道公立小学校 教諭


書籍等で取り上げられることがあまり多くない1学年につき1学級の単学級の学級経営、複式学級の学級経営について、これまでの実践や量的調査の結果をもとに、効果的な実践例を発信していきたいと考えています。

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