活学校の社会~GIGAによる最適化~「教師よし!」(1)
「GIGAスクール構想とは、通信速度が速くなって、HDD容量が大きいパソコンが入ること?」
GIGA(ギガ)と聞くと通信会社のCMなどで流れる5G(ジェネレーション)のことや、容量のGB(ギガバイト)のことかと思うが、どうもそうではないらしい。かくいう私もその一人だった......
GIGAこと「Global and Innovation Gateway for All」の意味について読者の皆さんと考えていきたいと思っています。
浦安市立美浜北小学校 教諭 齋藤 大樹
一つ一つの実践を大切にして
大きいテーマパークがあることで有名な千葉県浦安市で勤務をしている齋藤と申します。ICTや教科担任制などの実践に取り組んでいます。先日、学びの場.comの取材を受ける機会がありました。取材いただいた内容は「授業実践リポート」として後日、公開される予定です。
取材されたことが契機となり、私の中でICT活用などの実践を公開したいという気持ちが高まっていきました。前述のGIGAの勘違い話ですが、職場の同僚にも聞いてみたところ、多くの職員が同じような認識でした。恐らく同じように誤認されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ICT活用やGIGAスクール構想が進んでいく中で、それぞれの先生方が活用例をどんどん提供していくことが重要だと考えます。実践者として、上から意見するのではなく、共に仲間と学び合っていきたいという気持ちでエッセイを書いていきたいと思っています。先生方の一助となれば幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。
1.活学校の社会を目指して
タイトルの「活学校の社会」は、AI時代やSociety5.0と言われる新しい社会でも、学校が子どもたちを活性化させるような、活き活きと輝かせる存在であってほしいという願いを込めています。
イヴァン・イリイチが『脱学校の社会』で、学びの本質について提案してから半世紀が経過しました。イリイチは、学校が制度化していく中で、学ぶことよりも学校に行くことそのものが重要視され過ぎてしまうことを危惧していました。「学び」に学校が必要不可欠ではなくなるというこの考えについて、私は、荒唐無稽のような気がしていました。
しかしながら、コロナ禍により、私のこれまでの学校への価値観が揺らいでいます。社会全体がICTによる働き方改革やリモートワークなどが進む中、子どもたちに、そして社会に必要とされる学校とは何なのでしょうか。きちんと考えないとそれこそ子どもたちや社会から学校がそっぽを向かれてしまう気がしています。一斉休校、そして休校明けの生活を経た子どもたちに、どのようなやり方で学校に魅力を感じてもらえるのかを読者の皆様と考えて参りたいと思います。
2.鍵となるのは最適化~「教師よし」の教科担任制
「Global and Innovation Gateway for All」を直訳すると「全ての人のためのグローバルとイノベーションへの入り口」となるでしょうか。文部科学省の文書などを見ると、「誰一人取り残さない、個別最適化された学び」とするものが多くなっています。
私は、この「All」というものに、教師も含まれるのではないかと思っています。学校が魅力ある存在であるために、私たち教師の力を最適化していく必要があるのではないでしょうか。私たちの働き方は改革が急務とされており、教材研究する時間をどのように確保するかが課題となっています。各種調査にて多忙化・残業時間の多さが指摘される中、少しずつ脚光を浴び始めているものが教科担任制です。
今年度の1月に発表された中央教育審議会の答申では、専門性が高い教員が児童一人一人の学習の習熟度に応じて指導できるよう、令和4年度をめどに小学校5年生と6年生の授業を対象として、中学校のように教科ごとに専門の教員が教える「教科担任制」を本格的に導入するよう求めています。
私たちは、児童の学びの最適化のため、そして先生方の授業準備時間の確保のため、教科担任制を数年間かけて推進してきました。来年度予定されている教科担任制の本格的な実施に向けて、どのように準備を進めていくべきなのか、それぞれの先生方の力をいかに最適化してきたかを伝えます。
(1)生活の場面から
私たちは学校長の学校教育目標に則り数年前から、給食を食べるときに本来とは違うクラスで食べるなどの給食交換指導の実践を行ってきました。保護者向けにお伝えしますと、私たち教員は、授業はもちろんのこと、「ヒドゥン・カリキュラム」といわれる授業以外の隠れた部分でも子どもたちを育てています。
こういった授業以外の場面では、教科書のような分かりやすい指針があるわけではないので、それぞれの先生方の経験や価値観が如実に表れます。様々な先生方に給食や掃除といった場面で声をかけてもらうことによって、子どもたちは生活習慣の改善をすることができました。先生方も自分の学級だけを良くすれば良いと考えるのではなく、皆で子どもたちを見ていこうという気持ちが高まっていきました。
(2)交換授業
教科担任制を組む前段階として、隣のクラス同士で授業を交換することも気軽にできる取り組みです。算数などは、一時間ごとの達成目標が明確なので、数時間指導を交換するなども効果的ではないでしょうか。子どもたちも「隣のクラスの先生が来てくれた。」と楽しそうにしている姿がよく見られました。低学年などでも実施しやすいと思います。
(3)一部教科担任制
3クラスあるような学年の場合、Aさんが社会を担当、Bさんが理科を担当、Cさんが総合的な学習の時間を担当するというように、いくつかの教科を教科担任にする方法です。教材研究の教科が2教科ほどなくなるので、全教科の授業準備を行わなくて良いのが利点でした。
また、児童によって同じ授業実践を行ったとしても結果は全く異なります。そこで児童の実態に応じて指導方法に工夫を凝らしていくことが重要になります。何年も子どもたちを見てきたり、同じ学年を何度か持ったりすると自然と身につくこの考えは、若年層の教員にとっては決して当たり前の考えではありません。「クラスによって全く反応が違いますね」と驚く若手の先生方を多く見てきました。若年層教員の方々が繰り返し授業実践を行うことで、様々な発見があったようです。
本校の場合は、2年前から児童の実態を見ながら実践しており、子どもたちへの指導内容の質の向上を図ることができました。当時、4年生を担任していたのですが、4年生という理科や社会科の学習内容が高度になってくる学年において、児童の理解度を高めることにつながっていた気がします。
次回 完全教科担任制の実践と高学年ブロックによる教科担任制の実施へ
次回は、昨年度実施した教科担任制や高学年ブロックでの教科担任制の実施報告をしたいと思います。
齋藤 大樹(さいとう ひろき)
浦安市立美浜北小学校 教諭
一人一台PC時代に対応するべくプログラミング教育を進めており、市内向けのプログラミング教育推進委員を務めていました。
現在は小規模校において単学級の担任をしており、小規模校だからこそできる実践を積み重ねています。
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