2021.01.06
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この時期の3年生の指導

新しい年が明け、全国の受験生にとって入試直前という時期になりました。中学生も高校生も、この時期の3年生の授業は受験に向けた最後の追い込みといった意味合いが強くなる場合も多いと思います。そんな中で、授業を受けている3年生の指導について記事を書きました。

前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭  山形県立米沢東高等学校 教諭 高橋 英路

年明けの受験生

年明けすぐ、大学進学を目指す高校3年生にとっては、共通テスト直前であり、その結果を踏まえて国公立大学2次試験や私立大学の個別試験に挑戦していくことになります。年末年始の期間中も毎日相当量の学習をこなし、休みが明けると授業はもちろんですが、放課後も遅くまで残って学習したり、先生に質問したりするなど、真剣な雰囲気がこちらにも伝わってきます。

また、中学3年生にとっても、私立高校入試が始まり、その後に公立高校入試も控えており、こちらも受験に向けて全力投球といった雰囲気ではないでしょうか。

一方、民間就職や公務員試験、推薦型、総合型選抜などで合格を決めた生徒もいるわけで、そうした生徒たちは高校卒業後に向けた取り組みが必要な時期でもあると思います。

受験生の指導

これから受験を控えている生徒たちは最後の追い込みといったところでとにかく必死に勉強しているでしょう。ただ、そうなってくると、「その教科の学習=入試の問題演習」となってしまい、場合によっては、その授業でつけてほしい力や教科・科目の学問的な楽しみといった部分から離れてしまうこともあるのではないでしょうか。もちろん、高大接続改革が進み、大学入試が教科・科目の目標や学力の三要素をバランスよく測ることができるよう変化しているのも事実ですが、「そうは言っても、やはり……」という声もあると思います。

また、受験科目として必須でない科目についてはどうでしょうか。受験間近になって、そうした科目の学習へのモチベーションの低下が心配されるということもあるかもしれません。

このような時期にあって、授業ではどのような工夫をしていますか?私が個人的に気を付けていることは以下の2点です。

  1. 入試問題の演習を行うにしても、「授業でつけたい力」の要素は取り入れる。
  2. 受験に必要かどうかに関わらず、全員に授業に参加しているという意識を持たせる。

例えば、私の場合は「発信力(=自分の考えを伝える力)」をつけたいと考えているので、生徒が黙々と問題を解いて教員が一方的に解説するような形でなく、生徒同士で相談したり、生徒数名が前に出てきて解説したりする形をとるなど、結果として同じ内容を伝えるにしても、生徒が自分の言葉で伝える機会を設けるようにしています。生徒が解説する際には、単なる答え合わせではなく、関連する事項を教科書や資料集で調べて「豆知識」として紹介してもらうようにしています。教員は必要に応じて修正したり補足したりするのが役割です。

進路決定者の指導

さて、受験を控えた生徒に対し、すでに進路が決定している生徒については、どのようなことを伝えていますか?学校によって、進学後の基礎学力をつけるために共通テストに向かわせたり、職業科のある学校では3年間の集大成として課題研究発表会に向かわせたりするなど、様々なあり方が考えられると思います。いずれのケースも、卒業後を見据えた前向きな指導になっているというのがポイントだと思います。進路さえ決まれば良いとか、おとなしく卒業を迎えるようにといったことでなく、やはりそれぞれの進路に向けて、必死に頑張っている進路未決定者と同じくらいのモチベーションで何かに取り組んでいくことが大事なはずです。ただ、その「何か」を学校として統一したものを提示するのか、個々人に合わせて自ら見いだすのかといったところは議論の余地があるかもしれません。

大学進学の場合、推薦型や総合型選抜で合格しても、入学後の学力保障といった観点から共通テストの受験を義務付けている大学も少なくありません。そうした状況から考えて、大学進学者は共通テストを目標として基礎学力を担保するという考え方もあると思います。また、進学後の学習を先取りする形で、関連分野の新聞記事をスクラップしたり、新書を読み込んだり、学びたい学問について教科担当の先生から話を聞いたりするのも良いでしょう。さらに、進学後に取り組みたい活動の先取りや後輩に思いを伝えるという意味では、いったん引退した高校の部活動に参加したり、後輩とともに地域活動や探究活動を行ったりすることも考えられると思います。いずれにしても、進路決定した生徒が卒業までにどのような生活を送ったかということは、進路決定の時期が早ければ早いほど、卒業後の進路先でのスタートに大きな影響を与えるはずです。現実的には進路未決定者への指導を優先しなければならないこともあるわけですが、進路決定者がどのような過ごし方をすれば良いのか、それぞれの生徒と一緒に考えていければ良いと思っています。

現実はなかなか理想のようにいかない場合もあると思いますが、この時期の高校3年生の指導について、考えたところを記事として書きました。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。本年もよろしくお願いいたします。

高橋 英路(たかはし ひでみち)

前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭
山形県立米沢東高等学校 教諭


クラス担任と、地歴科で専門の地理を中心に授業を担当。生徒達の「主体的・対話的で深い学び」が実現できるよう、p4c(philosophy for children)やKP(紙芝居プレゼンテーション)法などの手法も取り入れながら日々の授業に取り組んでいます。

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