2021.02.01
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ケガと弁当は自分持ち!ー冒険遊び場と学校ー

子育て支援業界から学校業界に入って驚いたのは、ほとんどの先生方が「冒険遊び場(プレーパーク)」の存在を全く知らないということ。子育て支援業界じゃあ、知らない人はいないムーブメントなのに。学校も冒険遊び場も、子どもを想う気持ちは一緒。この二つは、もっとわかり合っていい。というわけで、今回は「冒険遊び場(プレーパーク)」について語ります。

東京都内公立学校教諭  カナダライアソン大学認定ファミリーライフエデュケーター(家族支援職)  特定非営利活動法人手をつなご(子育て支援NPO)理事 林 真未

はじまりは1970年代

「冒険遊び場(プレーパーク)」とは、子どもが「遊び」を作る遊び場です。

「ボール遊び禁止」「木登り禁止」「花火禁止」など、禁止事項だらけの都市公園の現状を憂いた大人たちが、禁止事項を徹底的に排除した遊び場の必要性を痛感し作った場所。
1970年代に海外の事例を参考に実践が始まり、1979年には、東京・世田谷に常設の羽根木プレーパークが誕生しました。

以後、「自分の責任で自由に遊ぶ」「ケガと弁当は自分持ち」のキャッチフレーズとともに、その活動は全国に広がり、冒険遊び場の数は、今や400にも上っています。
詳しくは、日本冒険遊び場づくり協会のウエブサイトをご覧ください。

「冒険遊び場」へ遠足に行こう

「今年の遠足、『冒険遊び場』に行きませんか?」と、学年で提案したことがあります。
私から「冒険遊び場」のコンセプトを説明された学年主任は苦笑い。
「……学校で行くのは無理かなあ」
それでおしまい。
実は私も、「多分無理だろうなあ」と思いつつダメ元で提案しただけなので、理由は聞きませんでした。

教師になる前の保護者時代の私なら、きっとこう言ったことでしょう。
「なんでダメなんですか?子どもたち最高に楽しいと思いますよ!親に連れて行ってもらえない子もいるんだから、学校で連れて行ってあげましょうよ!」

学校は、「ケガをさせない」が大命題

学校は「安全管理」を引き受けているから、危険のない学びしか提供できません。
小学校低学年の遠足はたいてい、子どもの様子が見渡せる芝生広場。子どもたちも、先生に許された範囲の遊びだけをします。
けれど、本来、豊かな学びやわくわくする遊びと、危険は隣りあわせのもの。
たとえば、落ちる危険、ケガをする危険があるけれど、木登りほど五感を働かせ心身を鍛えしかも面白いものはなかなかない。

もし保護者が全員、「ケガは本人の責任ですから、学校には一切責任を問いません」と言ってくれたら、「冒険遊び場」に子どもを連れて行くことはできます。
でも実際には、学校には「管理責任」が重くのしかかっているから、学年主任は「冒険遊び場」への遠足に苦笑いするし、私も理由は聞きません。
本当は、先生だって、子どもに「自分の責任で自由に遊ぶ」体験をさせたいに決まっています。

「自分の責任で自由に遊ぶ」って言ってる時点で自由じゃない

ところが、実は私、「冒険遊び場」に関する苦い思い出があります。
「冒険遊び場」のコンセプトに強く共鳴していた保護者時代、私は小学生の息子を、休みの日によく「冒険遊び場」の場所まで連れて行っていました。
しかし、大人になった彼に聞いてみたら、子どもの頃、それがイヤでイヤでたまらなかったというのです。

どういうこと?
火遊びだって木登りだってなんだってできる素敵な場所で遊べて最高だろうって、こっちは車に乗せてまで「冒険遊び場」に連れて行ってあげていたのに。

彼は言いました。
「だってなんか大人が見てるしさ。いろいろ『やれば?』とか言われるし。だいたい、『自分の責任で自由に遊ぶ』とかわざわざ言ってる時点で自由じゃないんだよ!」

「冒険遊び場」が特別な場所である限り

息子の発言はとてもショックなものでした。
「冒険遊び場」ほど素晴らしいものはない、と思っていたのに。
けれど子どもにとっては、親に連れて行かれる遠くの場所は、見守られて遊ぶ空間は、どんなに素敵なところであっても、自由な「遊び場」ではなかったのです。

日常的に、子どもだけで行ける、大人の目が届かない場所。
それが、彼の(子どもの)理想の遊び場なのでしょう。
「冒険遊び場」が特別な場所である限り、子どもにとって理想の遊び場ではない、と私は息子に教えられました。

「冒険遊び場」と学校

子どもにとって、日常性こそ、なにより大事。
子どもだけで行けて、そこに行けば友達に会える。それが大事。

「冒険遊び場」は、子どもが制約なしに遊ぶことのできる場所だけれど、多くの子にとって日常的にそばにあるものではありません。
一方、「安全管理」の名のもとに、様々な制約を子どもに課す学校ですが、それはいつも子どものそばにあります。
「冒険遊び場」の眩しいコンセプトに憧れていましたが、そんな学校の当たり前も、実は、とても大切なものだったのです。
見果てぬ夢ではありますが、校庭が「冒険遊び場」であったなら最強です。

そんな学校が生まれるといいな。

林 真未(はやし まみ)

東京都内公立学校教諭
カナダライアソン大学認定ファミリーライフエデュケーター(家族支援職)
特定非営利活動法人手をつなご(子育て支援NPO)理事


家族(子育て)支援者と小学校教員をしています。両方の世界を知る身として、家族は学校を、学校は家族を、もっと理解しあえたらいい、と日々痛感しています。
著書『困ったらここへおいでよ。日常生活支援サポートハウスの奇跡』(東京シューレ出版)
『子どものやる気をどんどん引き出す!低学年担任のためのマジックフレーズ』(明治図書出版)
ブログ「家族支援と子育て支援」:https://flejapan.com/

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