2020.10.16
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放課後の子どもを、いったい誰が担うのか?

学校における働き方改革として、登下校や放課後は学校以外が担うという指針が示された......はずなのに、ゲンバはちっとも変わりません。ナゼなのでしょうね......? ちょっとブンセキしてみました。

東京都内公立学校教諭  カナダライアソン大学認定ファミリーライフエデュケーター(家族支援職)  特定非営利活動法人手をつなご(子育て支援NPO)理事 林 真未

文部科学省からの通知で、登下校と放課後のことは「学校以外が担うこと」と明記されたけれど…

登下校に関する対応や放課後や夜間の見回り、児童生徒が補導された時等の対応は、基本的には学校以外が担うべきこと、という国のガイドラインが打ち出されて半年がたちました(参考資料参照)。

でも、いまだに学校はそれに類する仕事を変わらずしています。

中学、高校は部活が大きな問題になっていますが、小学校でも、
●登下校の時の子ども同士のトラブルや、近隣の住民からの交通マナー違反や私有地侵入や器物破損等のクレーム。
●放課後の子ども同士のトラブル、公園での怪我、道路での危険行為。スーパー等での万引きやいわゆる「カツアゲ」行為。帰宅時間に帰らない子の捜索。
等々の登下校&放課後の子どもたちの問題に、まだまだがっつり対応しています。

多くの教員が「ブラックな働き方」に悲鳴を上げて、世の中もそれに同調し、国が働き方改革の方針を打ち出し、その一環で、学校外の子どものことは手放せと言っているのに……。

「学校以外」って、具体的にはいったい誰?

だって、「手放せ」と言ったって、手放した後に、誰がそれを受け止めてくれるのでしょうか。

親? 

働いている親が増えたから、家にいる親が少なくなっているし、電話連絡網も配られなくなったから、クラスメートの電話番号さえ分かりません。
当事者同士で解決するにしても、コミュニケーションに長けていて、トラブルに対処できる親御さんならいいのですが、子育ても人間関係も苦手で、いろいろなことに対処できない親御さんだったら、学校が手をひいた場合、その方は、ひとり苦しむことになりかねません。

地域? 

子どもは道端で遊ぶこともできなくなり、いけないことは叱ってくれる雷親父も、近所の子どもを分け隔てなく面倒見てくれるような人もいなくなりました。今では、昭和の風物詩です。
町内会や子ども会等の組織も、機能していないことのほうが多くなってきました。
都市部では、ご近所づきあいもなくなりつつあって、地域住民は、よく見かける子がどこの誰なのか知りません。だから気になることは、学校に伝えるほかありません。「子どもが帰ってこない」というときも、学校の教職員が、全員自分の仕事をストップし、近隣を駆け回って探すしかありません。たとえ勤務時間外であっても。

福祉機関?

子ども家庭支援センターや児童委員・主任児童委員などの公的リソースは、確かに制度的には地域の子どもの健やかな育ちを支援する役割を担っています。けれど、種々の事情から、それらが、各学校や各子育て家庭と十分な連携・支援関係を構築して、放課後の子どもの育ちを充分見守っている……とは言い難い現実があります。
学校のほうも、これらの機関に連携や放課後の対応の委譲を持ちかける余裕はありません。
(参考:教育と福祉の連携がだいじって世間は言うけど動いてくれるわけではない(いっしょにやろうよ)

このような状況の中で、さしあたって、放課後の子どものことは、今も学校が引き受け続けているのです。

「学校の教育活動にご協力いただきましてありがとうございます」思想からの脱却

ただ、学校が、登下校と放課後の対応を引き受け続けているのは、現実的に代わりがいない、ということだけが理由ではないと感じます。

私は、保護者時代ずっと、学校便りや学年便りの「いつも学校の教育活動にご協力いただきましてありがとうございます。」という文章に、とても違和感を持っていました。
だって、この言い方だと、学校が主体的に教育活動を展開し、それに保護者が協力しているっていう前提になりませんか。
けれど、長い子育て期間を通じて、もしかしたら成人した後でさえ、子どもの育ちに責任を持ち続けるのは親です。
学校は6年間(または3年間)、担任の先生はたった1、2年間の間しか、子どもの育ちに関わりません。
つまり本来的には、子育ての主体は親であり、学校はその一時的な代行者。
そう考えていたので、保護者から学校にお礼を言うことはあっても、学校が保護者にお礼を言うのはおかしいと考えていたのです。

ところが、教員になって、職員室でベテランの先生にこのことを伝えたら、
「言われてみればそうなのだけれど、この文面に違和感を持ったことはまったくなかった」
と驚かれました。

この例からわかるように、
子どものことは、自分たちが指導、監督しなければ。
という感覚が、先生たちには無意識に沁みついています。

そしてそれが、登下校や放課後の指導を手放し難くさせているのではないか、と私は思っています。
口では「登下校や放課後のことまで面倒見きれないよ」と言いながら、子どものことはなんでも……と、長年してきた習慣を手放すことへの、漠然とした不安があるのではないでしょうか。……考えすぎ?

何のための働き方改革か

そもそも、放課後の子どもたちのことを手放すのは、教員が子どもの面倒を見るのがイヤだからではありません。先生たちはいつも子どもの心配をしています。だから、先述したように、大して関わりのない子でも、いなくなったと聞けば、自分の仕事を差し置いて探し回ることを厭いません。あるいは、担任する家庭生活が心配な子に、どんな手立てがあるのだろうといつも頭を悩ませています。

それでも、その部分を他に委譲して働き方改革できればありがたいと考えるのは、子どもに、より豊かな学びの場を提供したいという強い思いからだと思います。
今は、学校にたくさんのことが課せられているために、授業準備や教材研究を勤務時間内に終わらせることは不可能です。働いている方が多いため、学習に課題のある保護者の方との面談も勤務時間外がほとんど。残業代もないし、勤務の振り替えもありませんから、ご存知の通り、これらはすべて教員のボランティアです。
けれど、できれば勤務時間の中で十分に授業を吟味し、組み立てる時間を取りたいというのが、先生方の、切実な積年の願いだと思います。

つい最近、私の学校にSSS(スクールサポートスタッフ)さんが配置されました。2018年度のスタートから、2年半ほど後ですね。
ゲンバの先生の雑用を軽減しよう、と文部科学省の方が尽力してこの予算を勝ち取ったと聞いていたので、さっそくどんどん活用……と思ったら、周りの先生方は、
「雑用を頼むのは申し訳ない」
「依頼文を書くより自分がやった方が早い」
などと、利用を躊躇しておられました。
しかし、管理職からの働きかけもあり、今では、職場全体で上手に制度を活用しています。

同じように、登下校・放課後の子どもたちも、学校以外が担うことができる日が、2020年の通知から数年後に、私の身近にやってくるのかもしれません。

ただ、SSS制度は、予算を勝ち取ることで実現したけれど、放課後の子どもたちを学校が手放すためには、違う変化が必要です。

働くことを奨励する時代に逆行しますが、男性でも女性でも、自らの手で子育てをする楽しみを選ぶ人が増え、平日の昼間の地域に大人が戻ること。
地域住民が、SNSに投稿したり学校に電話したりするのではなく、自ら子どもと関わってくれること。そのためには、「ご近所さん」同士が、お互いを知りあう必要がありますね……。

あれ? これって、少し前の日本ではないですか?
昭和の専業主婦とご隠居さんたちが、子育てで担っていた役割は、大きかったんですね……。

林 真未(はやし まみ)

東京都内公立学校教諭
カナダライアソン大学認定ファミリーライフエデュケーター(家族支援職)
特定非営利活動法人手をつなご(子育て支援NPO)理事


家族(子育て)支援者と小学校教員をしています。両方の世界を知る身として、家族は学校を、学校は家族を、もっと理解しあえたらいい、と日々痛感しています。
著書『困ったらここへおいでよ。日常生活支援サポートハウスの奇跡』(東京シューレ出版)
『子どものやる気をどんどん引き出す!低学年担任のためのマジックフレーズ』(明治図書出版)
ブログ「家族支援と子育て支援」:https://flejapan.com/

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