2020.09.01
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北の国から南の島へ(2)

青年海外協力隊の任期を終えて小学校の現場に復帰した私は、国際理解教育の一環として、子どもたちにヤップ島のことを紹介する授業を行っています。今回は、その授業の一部を紹介します。

尼崎市立立花南小学校 主幹教諭 山川 和宏

島の子どもたちの絵が教えてくれたこと

メンズハウスとヤシの木

授業は、ヤップ島の子どもたちに描いてもらった絵を紹介することから始めます。日本の子どもたちにヤップ島のことを紹介するために描いてもらった絵です。
きれいな海、ストーンマネーが並んだ銀行、男性しか立ち入ることのできない伝統的な建物、マンタ、伝統衣装を身にまとった自分、タロイモ畑、カヌー、釣り……。ヤップ島の魅力が伝わる様々な絵が並びます。

そして、たくさんの絵を並べていくうちに、子どもたちがあることに気づきます。
どの絵にも、ヤシの木が必ず描かれているのです。

ヤシの木は宝物

ストーンマネーとヤシの木

ヤシの木は、ヤップ島で暮らす人たちにとって、欠かすことのできない大切な植物です。
ヤシの実の中には、甘いジュースがたくさん入っています。ジュースは発酵させるとお酒になります。
さらに胚乳はそのままでも食べられるし、ココナッツミルクやココナッツオイルとしても重宝されています。石鹸や蝋燭の材料にもなります。栄養たっぷりの家畜のえさとしても利用されています。

殻は加工されて、コップやお椀などの食器、あるいはネックレスなどの服飾品や民芸品になります。焼くことで優秀な活性炭として、焚き付けや肥料としても使われます。
繊維質たっぷりの外皮は、ロープの材料になります。
葉は、屋根、敷物、ほうき、団扇、帽子など様々な用途で使われます。
幹は、建物やカヌーの帆柱などの建材として利用されます。

また、ヤシ科のビンロウ樹の実は、ヤップ人は常に持ち歩いてチューイングしています。その実をコショウ科の植物の葉でくるみ、石灰をふりかけ(時にはタバコの葉も加えて)、噛むのです(唾が赤く変色し、依存性があります)。

ヤシの木は、資源の少ない島にとって、まさに捨てるところがない貴重な植物なのです。

以上のようなことを踏まえ、ヤップ島の人たちにとってヤシの木ってどのようなものなのかを子どもたちに考えてもらうと、「宝物」「誇り」「生活に欠かせないもの」「日本人にとってのお米のようなもの」……といったような意見が出ることが多かったです。

また、どうしてそこまでヤシの木を大切にしているのかを考えていくと、豊かな日本と貧しいヤップ島の対比が浮かび上がることがあります。すると、ヤップ島の人たちをかわいそうだと感じる子どもたちも出てきます。その時は、ヤップ島の人たちの笑顔がいっぱいあふれたショートムービーを見てもらって、単にかわいそうという感想に留まるのではなく、そこには日本とは違う文化があって、日本の文化もヤップ島の文化もそれぞれによさがあることを感じてもらうようにしています。


何はともあれ、最後に子どもたちに質問します。
みんながヤップ島の子たちに日本を紹介するとしたら、どんな絵を描きますか?

山川 和宏(やまかわ かずひろ)

尼崎市立立花南小学校 主幹教諭
富良野塾15期生。青年海外協力隊平成20年度1次隊(ミクロネシア連邦)。
テレビ番組制作の仕事を経て、小学校教師になりました。以来、子どもたちと演劇を制作し、年に2回ほど発表会を行っています。

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