「文化を越えて友情を育む」
先日、「映画と教育」に掲載された山崎エマ監督のインタビューの記事を読みました。日本の公立小学校の1年間に密着したドキュメンタリー『小学校~それは小さな社会~』という作品で、こちらでの公開を楽しみにしております。インタビューの中で山崎監督が「アメリカでは子どもたちに掃除をさせると『なんで自分の子がそんなことを』という話になる」ということに触れており、アメリカの小学校で働く日本人教師として大変共感いたしました。
実は私の働く学校では日米の学校間で行われる「文化を越えて友情を育む取り組み」を長年行っています。その取り組みについて紹介したいと思います。
在沖米軍基地内 公立アメリカンスクール 日本語日本文化教師 下條 綾乃
日米学校交流の取り組み

我が校の「文化を越えて友情を育む取り組み」とは「小学生の異文化と言語習得に焦点を当て、その国の文化と言語に対する理解と認識を深めること」です。その基準は「文化的能力の強化」をあげており、「生徒がその国の文化について調べ、考察し、その場所の地域社会とつながりを持ち、地域社会の文化を自分の文化と比較し、地域社会で交流し協力する機会を得る」ことを第一の目的としています。
以前、21世紀型スキルについて触れました。21世紀社会において必要とされる4つのスキルである、Critical Thinking(批判的思考)、 Creativity(創造性)、 Collaboration(協働)、 Communication(コミュニケーション)。このスキルを習得する上で、「文化的能力の強化」はグローバルでインクルーシブな社会において最も重要な能力になるのではないかと私は考えます。
先日、この私たちの取り組みの一環で我が校の5年生を引率し、地元日本の学校を訪れました。児童たちは給食や清掃活動を通して、自分の学校とは大きく違う日本の学校の一日を体験しました。日米2つの教育システムの相違と共通点を浮き彫りにしたこの訪問について、後日の授業で児童や先生たちに感想を聞いてみました。
アメリカ人児童のコメント
「日本の学校のお友達はまだ私たちのことを知らないのに、とても歓迎してくれて、親切で感動しました」
「最初は会うのが怖かったけど、徐々に自信がついてきて、合同バレーボール大会ではなんとMVPももらいました!すぐに仲良くなれて本当に良かった、私たちの学校にも来てほしい!」
「とてもとても楽しかったし、新しい友達もたくさんできました。この学校に明日から毎日通いたい!掃除も給食係はこんなこともやるのかとびっくりしましたが、とても楽しかった。私は明日から自分たちの教室やトイレをきれいに使いたいと思いました」
「日本の生徒の日常生活を見ることは、楽しくもあり、勉強にもなりました。また会っていろいろなことを一緒にしたい!まずは自分の部屋や机をきれいにしようと思いました」
アメリカ人教師のコメント
「昼食後、児童たちは新しい友人たちと一緒に学校の掃除をしたのですが、この日常的な作業は、日本の児童がいかにチームワークとコミュニティを日常生活に取り入れているかを示す、目からウロコの体験となり、私たち教師は多くのことを学びました」
「この文化交流は、理解と親善を育む共有体験の力を証明するもの。児童たちは、視野を広げ、新しい友人を作り、生涯忘れられない思い出を作りました。どんな遠足よりも価値のある訪問でした」
「異文化に触れることで、児童たちは世界について学ぶだけでなく、よりつながりのある思いやりのある国際社会を作るための積極的な参加者となることができる。それを目の当たりにし、このような交流会を持つ意義や大切さを感じました」
「何よりも私たち教師が生涯学習者になり毎日新しい挑戦を経験することを感じました。日本の先生たちはなんと働き者!彼らの一日にする作業にびっくりしました。就業時間内に授業を準備したり、子どもたちと一緒に昼食を教室でとると、先生たちはいつ息抜きするのでしょうか?敬意を表したいです」
児童たちのみならず、教師も学びの多い一日になったようです。
来月には、なんと訪問した日本の小学校の子どもたちと先生方が我が校に訪れます。日米2つの教育システムの相違と共通点を体験できる訪問交流が与える影響は計り知れません。子どもたちや先生方からどのような感想が聞けるのかとても楽しみです。
参考資料

下條 綾乃(しもじょう あやの)
在沖米軍基地内 公立アメリカンスクール 日本語日本文化教師
日本語学校や領事館等で日本語を教えた後、米軍基地内の公立アメリカンスクールで日本語日本文化を教えて20年ほどになります。何年経っても毎日驚きと気づきがあり、それらの一部を皆さんと少しでも多くシェアできたら嬉しいです。外国の子供達に自分の話す言葉や習慣、文化を教えることの楽しさ、難しさ、面白さを呟いていきます。
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