2020.07.03
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不安や悩みを抱えた子どもの心に効く!withコロナ対応の英語絵本の読み聞かせのコツ(続編)

英語の絵本は読み聞かせするものではありません!絵本の挿絵を使って、子どもと対話を楽しむために使います。ソーシャルディスタンスを保ちながらも、子どもが英語の世界に入り込むだけでなく、不安や悩みを抱えた子どもの心を癒すためにも絶好の教材ではないでしょうか。

静岡大学教育学部附属浜松小学校 教諭 常名 剛司

前回は、「withコロナ対応の英語授業に使える絵本の読み聞かせ5つのコツ!」として、

コツ①英語授業では、絵本は読み聞かせしない

コツ②英語絵本の選び方

(1)できれば学習内容と関連付ける

(2)季節、行事と関連付ける

(3)自分の心に響くストーリーのものにする

(4)子どもの英語レベルに合わせる

までをまとめました。今回は、その続編です。

コツ③ 子どもの英語の発話を引き出す

Story Timeは教師からの一方的な英語のお話の時間なのではありません。子どもとともに作る楽しいおしゃべりの時間にしたいものです。そのような子どもが安心して自然に英語でつぶやける時間にしたいものです。そのためのちょっとしたコツを紹介します。まずは・・・

(1)心を込めて読む

教師が、絵本に書かれている英語をただ棒読みしていたのでは、子どもは物語の世界には入れません。教師が絵本のストーリーをしっかりと理解し、さらにそこに書かれている英文や挿絵に込められた異文化の断片の意味もまた掴んでいなければ、心を込めて読むことなどできません。

例えば・・・

「No,David!」シリーズの続編で「David gets in trouble」という絵本があるんです。この絵本もまた作者のDavid Shannonさんの自分の子どもの頃の数々の失敗談が「あー。やっちゃったのね(笑)」という感じで、面白可笑しく取り上げられています。その中に、Davidが口に石鹸を加えて、膝を抱えて困った顔をしたページがあるんです。そこに書かれた英文は「But Dad says it!」です。日本語にすれば、「だって、パパがそう言ったから!」とでも訳せるでしょうか。どういう意味なのでしょうか。私もよく分からなかったので、ハワイ出身のALTに聞いてみたらすぐに教えてくれました。それは・・・

「アメリカでは、悪口を言うとか、嘘をつくとかをdirty mouseと言うんだよね。要するに口が汚いってこと。だから、そう言う子には、『あなたは、口が汚いから石鹸で綺麗にしなさい!』って親が叱るんだよね。」と教えてくれました。絵本の中でDavidが口に石鹸を加えていたのは、そういうことなんですね。そして、そういう文化的な背景の違いについては、そこだけ日本語で説明してあげると子どもたちも絵本のストーリーの背景がすっと入っていくようになります。そして、そのような経験を子どもたちが繰り返すことにより、文化や人間の多様性を理解しようとする心が育っていくのではないでしょうか。

(2)問いかけて自分ごとにさせる

絵本を教師がどんどん読むだけでは、双方向の対話は生まれませんし、物語の内容理解のスピードがついていけない子どももいます。そこで、絵本の挿絵を使って、子どもに英語で問い掛けることによって、絵本の内容を自分ごとにさせることができます。そうすることで、子どもはより深く内容を理解して、物語の世界に入り込んでいくものです。

そんな時に使える子どもの発話を引き出す5つの問い!

①「What’s this?」これはなに?

「Dear Zoo」という動物園からプレゼント用の動物を贈ってもらう仕掛け絵本があります。贈られてきた動物の上に、木箱などが描かれたフリップで隠されています。そんな時に、すぐにフリップをめくらないで「What’s this?」と問い掛けるのです。子どもは、そのフリップの大きさや形から隠された動物を想像して、口々に英語で呟いてしまうんです!「Dear Zoo」には、姉妹版として「Dear Santa」という本もありますので、こちらはクリスマスの時期にいいですね。

②「What’s next?」次はなんだろう?

Story Timeで使える英語絵本だと、ストーリー展開が似ていることが多いものです。初めに、お話の導入があって、次に同じような具体例の繰り返しがあって、最後にオチがあるという流れです。話の中盤は、大体同じような内容、表現の繰り返しが多いので、この部分でその次の展開を予想させる「What’s next?」が効果的です。例えば、「Sam and Dave dig a hole」なら、サムとデイブと犬が地中を掘って宝探しをします。サムたちは、宝のすぐ近くまで来てるのに、なぜか宝を避けるようにして進んでいってしまいます。ページをめくる前に、この問い「What’s next? Go straight? Up? Down?」と次にサムたちが行く方向を想像して発話させると楽しいですよ!

③「Do you 〜?」あなただったらどう?

「Where’s Spot?」というスポットという可愛い子犬を探す仕掛け絵本があります。「Dear Zoo」のようにフリップがついていて、前置詞も一緒に学べます。次々と出てくる動物を「What’s this?」と予想させた後に、「Do you like dogs?」と問い掛ければ、子どもの自分ごとになっていきますよ。さらには「What animal do you like?」と問えば、さらに話が弾みますよね。

④繰り返しの表現を強調して読むことで問う

First the egg」という1ページに1語しか書いていない本があります。その本は、「First the ○○,then the △△.」という表現の繰り返しだけなのですが、子どもは「次はなんだろう?」と食い入るようにして絵本の世界に入り込んでいきます。「First the egg, then the chicken.」「First the caterpillar, then the .」のところで止めると「Butterfly!」と呟くようになってきます。本文を使って、次は何かと予想させることで自分ごとにさせていきます。

⑤「How many?」いくつあったの?

Story Timeの最中に、教師から子どもへの問い掛けが多過ぎるのは逆効果です。物語の流れやリズムを損なわない程度に問い掛けるといいので、ページごとに問い掛ける必要はありません。数ページに一回くらいでいいでしょう。そして、読み終わった時に「How many animals?」などと問うことで、物語全体の振り返りを簡単にできます。

話がまたまた長くなってしまったので、今回もこの辺で終わりにします。次回はこの続きを紹介して完結したいと思います。

常名 剛司(じょうな つよし)

静岡大学教育学部附属浜松小学校 教諭
小学校英語教育の研究を担当しています。自律的に取り組む本物の文脈の中で,子どもの資質・能力を育む小学校英語教育のあり方について考えていきます。

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