withコロナ対応の英語授業に使える絵本の読み聞かせ5つのコツ!
3密を避けながら恐る恐る再開した学校。今まで当たり前にしていた活動が気軽にできません。そんなときは、以前のような子ども同士のペア対話重視の授業スタイルに無理にこだわらずに、楽しい絵本を使って教師と子どもの対話重視の活動を代わりに取り入れるのもいいのではないでしょうか。
静岡大学教育学部附属浜松小学校 教諭 常名 剛司
子ども同士のペア対話の代わりに教師対子どもの対話にする
Story Timeの5つのコツ!
コツ① 英語授業では、絵本は読み聞かせしない
よくある日本語での「絵本の読み聞かせ」は、読み手から聞き手へ絵本のストーリーを読んで聞かせることが多いと思います。もちろん、子どもはただ聞いているだけではなく、絵本の世界に入り込んで、自然な反応や呟きをしています。そんな夢中になっている時のキラキラした瞳は、子どもの可能性を豊かに感じさせてくれるし、側で見ている教師にとっても、その横顔を見ているだけで幸せな気持ちになるものです。
しかし、英語の授業では、日本語で行う「絵本の読み聞かせ」と同じようにやっていてはダメです。英語の絵本は読み聞かせするものではありません。かつては英語の「絵本の読み聞かせ」をすることで、子どもに豊かな英語表現や異文化に触れさせるという「聞く」とか「異文化理解」という目的で使われることが多かったかと思います。しかし、そのような目的だけではもったいないですし、絵本のよさを十分に引き出せているとは言えません。それに、「絵本の読み聞かせ」が子どもたちにとって一方的に物語を「聞く」だけの時間になってしまい、ただでさえよく分からない英語で話を聞かせられるので、座っているだけで眠くなってしまう子もいるでしょう。ですから、英語授業の場合は、ただ単に英語の絵本を読み聞かせするのではなく、話し手が絵本の挿絵を使いながら、声色の工夫やジェスチャーも補助的に使って子どもの反応を引き出し、思わず子どもの口から英語が飛び出して「話す」姿が見られるような物語の時間になる「Story Time」であるべきです。コツ② 英語絵本の選び方
(1)できれば学習内容と関連付ける
単元に関連する内容の英語の絵本を探すのは非常に難しいですが、やはり子どもが学習している単元に関連した絵本を使うことで、単元の学習で使用している表現が絵本にも出てくれば、その表現の定着に役立つでしょう。また、話の理解の助けにもなります。
【単元の学習と関連づけられそうな絵本の例】
◯将来の夢を聞き合う単元→『I don’t want to be a frog』(Doubleday Books for Young Readers 、Dev Petty著)
◯色の学習の単元→『Strawberries are red』(Candlewick、Petr Horacek著)
◯前置詞を使う単元→『Where’s Spot?』(Warne、Eric hill著)
◯好きなもの(動物)を尋ね合う単元→『Dear Zoo』(Little Simon、Rod Campbell著)
◯夢の時間割を考える単元→『No、David! 』( Blue Sky Pr、David Shannon著)
『David goes to school』( Blue Sky Pr、David Shannon著)
(2)季節、行事と関連付ける
(3)自分の心に響くストーリーのものにする
時々、ハードカバーのしっかりした英語の絵本なのに、やけに何かの教科書っぽいストーリーの絵本を見かけます。使われている表現も学校で学習するような語句が散りばめられているのですが、なんだか、とにかく英語表現の定着を前面に出してくるようなわざとらしさが感じられて心に響きません。やはりどの絵本にも作者の考えていることや感じていることが伝わるようなストーリーがあるものです。読み終わった後に、じんわりくるもの。驚きの展開。クスリと笑ってしまうもの。まずは教師の心に響くストーリーの絵本がいいですね。そんな絵本は、読んでいる教師の心が言葉にのって、子どもの心に響くはずです。そんなストーリーなら、子どもは英語の絵本の世界に引き込まれて、夢中になって英語を聞いて、話してしまうものです。
(4)子どもの英語レベルに合わせる
次回に続く
そう言えば、教師になりたての頃は、校庭の大きな木の下の木陰に子どもたちを集めて、国語の物語文の範読をしたことがありました。木陰で風に吹かれてとても気持ちがよかったことを覚えています。今、思えば「そんなことやっちゃってたの?」という実践でしたが、このような3密を避けなければならない状況では、あえて「そんなことやっちゃってもいいんじゃないの」という発想も大事なのかもしれません。足りなくなった気がする授業時数をなんとかこなすために、子どもに知識を詰め込もうとしても、子どもの心がついてこなかったら形だけの学びになってしまいます。忙しい毎日ですが、時には、木陰でゆっくり本を読み、空を見上げてくじら雲を探すような時間があってもいいはずです。
次回は、今回の続きを取り上げていきたいと思います。よろしくお願いします。
常名 剛司(じょうな つよし)
静岡大学教育学部附属浜松小学校 教諭
小学校英語教育の研究を担当しています。自律的に取り組む本物の文脈の中で,子どもの資質・能力を育む小学校英語教育のあり方について考えていきます。
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