2020.06.02
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

アフターコロナ/ウィズコロナの教室から

かの有名なユヴァル・ノア・ハラリさんをはじめ、世界の識者の皆さんは、コロナ禍終息後もコロナ以前の世界に戻ることは決してないといいます。けれど、忘れてはならないのは、変わるのは世の中だけで、子どもが子どもとして生きていることに、何も変わりはないということです。

東京都内公立学校教諭 林 真未

イラスト/有田りりこ

子どもはそんなにヤワじゃない!

「子どもたちは、きっと不安を抱えています。しっかりとしたケアを」
もしかしたら、先生たちはそんな言葉を、ネットとリアルの双方で、何度も言われているかもしれません。

実際はどうですか。
子どもたちは、不安な面持ちで怯えながら学校に来ていますか?

東京の教員である私の場合、これを書いているのは休校中で、記事の公開は学校再開後。
ですから、私自身はまだ経験していませんが、おそらく、みんな元気に明るく登校しているのではないか、と予想しています。
不安な気持ちの子もいるかもしれませんが、すぐに周りの雰囲気にのまれて、いつもの笑顔を取り戻すんじゃないのかな。

こう思うことに、なんの根拠もありません。
ただ、子どもという存在は大人が思っているほど弱くない、と信じているだけです。
もし、いつまでも怯え続けている子がいたとしたら、それは大人の影響が大きいと考えます。周りの大人たちが(あるいはメディアが)脅威を繰り返し伝えるので、すっかりそれを取り込んでしまっているのではないでしょうか。
本来的には、子どもたちは、今までも、そしてこれからも、あらゆる環境の変化に、しなやかにしたたかに適応出来るだけの力を持っている、と私は考えます。

夏休みが少なくなって、運動会や学芸会がなくなって、勉強ばかりの毎日でかわいそう?
だいじょうぶ。その隙間をぬって、あるいは学習に関連して、驚くほどのアイデアで、子どもたちは楽しみを編み出すでしょう。
先生たちだって、行事がなくなってさびしい思いをしている子どもたちのために、代わりになる楽しい何かを企むに決まっています!

感染を防ぐ努力はしても、約束はできない

「新型コロナウイルス感染症予防のために、徹底した対策を」
これも、学校再開にあたって、学校に、つまりは先生たちに託された課題です。

けれどイギリスのある校長先生が、フェイスブックで宣言してくれたそうです。

“私は真摯に、そして断固として言えますが、学校においてソーシャルディスタンスなんてものは存在しません。今現在存在しないし、これから存在することもありません。

その通り! 世界中の学校の先生たちが、きっと彼に拍手喝采を送っていることでしょう。
ただ、彼の主張は、だから学校再開をすべきではないと続くのですが、私はそうは思いません。

これ以上、休校が続いたら、私たち教員もしんどいですが、それ以上に、家庭(保護者)がもちません。
子どもは、本来、たくさんの大人が支え合って育てるべき存在です。
それが今は、家庭だけが支えている状態です。これが長く続くのは厳しいです。

新型コロナウイルス感染症の感染者の中には、無症状の人もいるそうです。
つまり、現時点で、保護者も子どもも先生も、保菌者でないという確証はないのです。
検査を受けても、必ず正確な結果が出るというわけではなさそうですし。
また、子どもの患者は重症化する割合が少ないと言われています。
それに加えて、もちろん学校は、感染を防ぐために最大限の努力をします。
たとえば、分散登校をして、毎日教室の机や椅子、ドアなどをアルコール消毒する等々……。

それらを踏まえ、私は、
●誰もがうつるリスクとうつすリスクの両方を持ち合わせている。
●学校で感染を完璧に防ぐことはできない。
という二つのコンセンサスを、家庭と学校が共有した上で、学校を再開すべきと考えます。

そして、たとえ万が一、新型コロナウイルス感染症の感染者が出ても、それを決して責めあわないというくらいの安心感と信頼関係を、学校と家庭の間に築いておきたいものです。

「だいじょうぶ」と笑おう

再開したアフターコロナ/ウィズコロナの教室で、私たち教員は何をすればいいのでしょう。

……結論。

教室で先生がやるべきことは、
「だいじょうぶだよ」
って、笑うことだと思う。

もちろんホントは大丈夫じゃないかもしれないし、もっとやらなくちゃいけないこともあると思います。
でもまずは、「きっと、だいじょうぶ」と笑って、子どもたちを安心させたい。
安心すれば、子どもたちは、落ち着いて学びに向かうことができると思うからです。

同じように保護者の方に対しても、笑顔で「だいじょうぶですよ」と安心させたい。
そりゃ、大丈夫じゃない家庭もあるかもしれない。でも、だからといって眉間に皺を寄せてばかりいても仕方ない。それより、できることをやればいい。支援リソースを一緒に探せばいい。

実は、この結論に至るまで、この項を書いては消し、書いては消し、を散々繰り返しました。
ネットでも紙媒体でも、たくさんの人がコロナ後の教育のありようについていろいろ提言しているから、いちいち読んで、「そうだよなあ」って思って、調べて、難しいことを様々に、考えて考えて考えて……。

でも、結局は、こんなシンプルなことに行き着きました。
「だいじょうぶ」と笑おう。
私には、これが一番だいじ。

BGM ♪「真っ赤な空を見ただろうか」  by BUMP OF CHICKEN

林 真未(はやし まみ)

東京都内公立学校教諭
カナダライアソン大学認定ファミリーライフエデュケーター(家族支援職)
特定非営利活動法人手をつなご(子育て支援NPO)理事


家族(子育て)支援者と小学校教員をしています。両方の世界を知る身として、家族は学校を、学校は家族を、もっと理解しあえたらいい、と日々痛感しています。
著書『困ったらここへおいでよ。日常生活支援サポートハウスの奇跡』(東京シューレ出版)
『子どものやる気をどんどん引き出す!低学年担任のためのマジックフレーズ』(明治図書出版)
ブログ「家族支援と子育て支援」:https://flejapan.com/

同じテーマの執筆者

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop