吃音について担任が知っておくべきこと
吃音のある子への支援はまず吃音の理解から始まります。もしクラスに吃音のある子供がいたら目を通しておいてください。
福生市立福生第七小学校 ことばの教室 主任教諭 博士(教育学)公認心理師 臨床発達心理士 髙橋 三郎
前回の記事は「担任ができる吃音のある子への支援」についてでした。吃音のある子へ支援を行うためには吃音に対する正しい理解をもつ必要があります。今回の記事では、吃音について学級担任が知っておくべきことをまとめました。
吃音とは
吃音は語頭の繰り返しや引き伸ばし、詰まり、などによってスムーズに発話することができなくなる発話の流暢性の障害です。吃音のある人はおよそ100人に1人程度いると考えられています。吃音は初語の時点(1歳ごろ)から起きるものではなく、言語の発達が著しい2~3歳ごろに始まることが多いと言われています。
吃音の原因には生物学的要因がある
吃音の明確な原因は明らかではありません。しかし、遺伝や脳機能といった生物学的要因が吃音の背景にあることはおそらく間違いないだろうと近年は考えられています。実際に、近年の研究では、吃音に関連する遺伝子が報告されていますし(Kang et al., 2010)、吃音児・者の脳が器質的および機能的に、非吃音児・者とは異なる可能性が指摘されています(Chang et al., 2015; Sato et al., 2011; Yada et al., 2019)。
吃音は、外的なストレスや保護者の過保護(育て方)に起因するものではない
確かに心因性吃音という「外的なストレスに起因する」と考えられている吃音もあると言われていますが、非常に報告は少なく、また、発症は10代後半から成人にかけてです(Guitar, 2007)。したがって、幼児期に発症する吃音は心因性吃音とは言えません。よく「弟(や妹)が生まれた時期に吃音がはじまった」「弟(や妹)に構い過ぎてしまった。そのストレスが吃音の原因なのでは」と言う話を保護者から聞きますが、実際はそうではありません。先に述べた通り、吃音は2~3歳ごろに始まることが多く、これは、下のきょうだいがちょうど生まれる時期と重なります(2~3歳違いのきょうだいって、結構多いですよね)。なので、きょうだいの誕生が吃音と関係してそうに一見、見えるだけです。
また、親の過保護といった、保護者のある子供の育て方に起因するわけでもありません。以前、「保護者が心配性で過保護なのが吃音の原因なのでは?」と尋ねられた経験がありますが、そういったことはありません。保護者の過保護が吃音の原因なのではなく、子供が吃音なので我が子に対する心配が強くなり、結果として過保護に近い状態になっていると捉えた方が望ましいでしょう。もちろん、すべての吃音のある保護者が過保護な訳では無く、非吃音児の保護者と同様に、子供との関わり方には個人差が大きいです。

髙橋 三郎(たかはし さぶろう)
福生市立福生第七小学校 ことばの教室 主任教諭 博士(教育学)公認心理師 臨床発達心理士
大学院で博士号を取得し、現在はことばの教室で子供達と向き合う日々を過ごしています。言語障害や発達障害に関する知見や指導方法を様々な先生方と共有できたらと思います。
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