2019.12.12
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学級担任ができる"読み"が苦手な子への合理的配慮

クラスに一人は必ずいる「読む」のが苦手な子。初見の文章を読む時に逐次読みになったり読み誤りが多かったりする子。漢字を読むのが苦手な子。そういった子にどういった支援を行うべきかをお話しします。有効な支援を行うだけでなく、学級担任の過度な負担にならないことも重要なポイントです。
※なお、読解が苦手な子には別の支援が有効となります。ここでは、あくまでも読む速度の遅さや不正確さがある児童や漢字が読めない児童の支援について取り扱います。

福生市立福生第七小学校 ことばの教室 主任教諭 博士(教育学)公認心理師 臨床発達心理士 髙橋 三郎

合理的配慮ってなんだろう。

最近、特別支援教育でよく聞く言葉のひとつである合理的配慮ですが、文部科学省のウェブサイト によると以下のように定義されています。
「障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。」(特別支援教育のあり方に関する特別委員会(第3回)配布資料3『合理的配慮について』文科省,2010より)」

このように障害のある人も、障害の無い人と同じように、人権や基本的自由を行使できるよう調整(支援)しよう!というのが、合理的配慮です。ですが、「均衡を失した又は過度の負担を課さない」という点も重要なポイントです。
何が「均衡を失した又は過度の負担を課すもの」にあたるのかは明確には示されていませんが、児童の教育的ニーズや学校の状況、地域の状況、体制面、財政面等が考慮事項として挙げられています。

いずれにせよ、支援者に対して過度な負担を要求する支援は、たとえ児童に対して有効でも「合理的」配慮とは言えません。あくまでも個人的な意見ですが、たとえば、毎日2時間以上準備を要する支援は「合理的」とは言えないと思います。

合理的配慮をするにあたって

合理的配慮を実際に行う際には、まず対象となる子供やその保護者とよく相談した上で行う必要があります。

また、保護者から合理的配慮を求められたら、必ず受け入れなければならないのかというと、そうではありません。東京都保健福祉局のウェブサイト によると、合理的配慮は「双方の建設的対話」により「必要かつ合理的な」対応をすることとなっています。もし、保護者から合理的配慮の申し出を受けても、その申し出の実現が困難な場合は、受け入れられないことを伝えて大丈夫だと思います。ただし、その場合は他の手段がないかどうかを、双方の対話によって模索していく必要があります。

"読み"が苦手な児童への合理的配慮の具体例

さて、ここからが本題です。在籍学級の様子や子供の実態を踏まえて、可能なものを取り入れていただけたらと思います。

① 授業中の音読を斉読にする。

初見の文章を流暢に読めず、逐次読みになってしまったり、読む速度が遅かったりする子供がいる場合には、音読は斉読(一斉に全員で音読する)をとることが有効です。
スムーズに読めないと、文章の内容理解も難しくなります。しかし、全員で一斉に音読すれば、もし自分が読めていなくても、周りが読んでくれますので、内容を理解することができます。

② 板書の漢字にはルビを振る。

漢字を読めない子にとって、読めない漢字の多い板書を読んだり書き写したりすることは、大きな負担です。

板書の漢字にルビを振ることは、漢字の読めない子供に対する非常に有効な支援です。事前準備も全くいりませんし、すぐにでも取り組めます。

もちろんすべての漢字にルビをふる必要はありません。読めなさそうな漢字にだけ振るのでOKです。

③音読の教科書は、後追い読みにする。できたらタブレット(スマホ)アプリの活用を。

読むのが苦手な子供にとって、音読の宿題は大きな負担になります。そのため、音読の宿題には一工夫が必要です。

その一つとして、後追い読みがあります。後追い読みとは、一文ずつ保護者が読み、その後に続けて同じように子供が読むものです(例:保護者「昔々ある所にお爺さんとおばあさんがいました」→子供「昔々ある所に……」)。この方法であれば、子供側の読む負担は大幅に軽減します。

ただし、この方法は保護者の負担が大きいです。また、高学年の場合、「お母さんと一緒にはやりたくない」と、子供自身が嫌がることもあります。

その場合には、「マルチメディアDAISY教科書 」 が役に立ちます。これは電子教科書の一種で、「デイジーポッド」 というアプリ上で起動します。これの良い点は、教科書の文章を読み上げてくれる機能があるところです。読み上げの速さや一文一文の間隔を調整できるので、これを使えば、一人で後追い読みができます。このマルチメディアDAISY教科書は申請が必要ですが、学校側でも保護者側でも申請が可能です。もちろん無料です。

使い方は、ウェブサイトの方を読んでいただければと思いますが、まず、提供の申請を行い、その後許可が得られたら、アプリをタブレットかスマホにダウンロードして使用することができます。

このマルチメディアDAISY教科書は私の担当する児童にも使ってもらっていますが、子供からも保護者からも良い評価をもらえています。ぜひ試してみてください。

まとめ

いかがだったでしょうか。先生方のクラスで使えそうな手立てはありましたか?
事前準備があまり要らない、ちょっとした工夫でも、十分な合理的配慮になり得る場合があります。ぜひ試してみてください。

髙橋 三郎(たかはし さぶろう)

福生市立福生第七小学校 ことばの教室 主任教諭 博士(教育学)公認心理師 臨床発達心理士
大学院で博士号を取得し、現在はことばの教室で子供達と向き合う日々を過ごしています。言語障害や発達障害に関する知見や指導方法を様々な先生方と共有できたらと思います。

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