2021.10.18
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

特別支援教育について一緒に考えてみましょう

「特別支援」という言葉を聞くと皆さんどのようなことをお考えになるでしょうか?
特別支援学校や特別支援学級だけで行われるものでしょうか?
そもそも「特別支援教育」とは、どのようなことを教えればよくて、どのようなことを考えるのでしょうか?
実はこれを書いている私もスパッと「これが特別支援教育です」と言い切れるものはありません......。

信州大学教育学部附属特別支援学校 教諭 丸山 裕也

はじめに

長野県飯田養護学校の中学部で勤務しております丸山裕也と申します。今回より、教育つれづれ日誌に参加させていただきます。
私の知識をお伝えするというよりは、皆さんと一緒にいろいろなことについて考えたり、逆に皆さんから学んだりすることができればと考えております。改めましてよろしくお願いいたします。

みんなが同じようにスポーツを楽しむには

フープサッカーの様子

さて、新型コロナウイルス感染症で「人と人とのつながり」が希薄に感じる今の学校では、友達や先生と一緒になってスポーツを楽しむことは、「つながり」をより深く、濃いものにしてくれるのではないでしょうか?
特に「だれかと一緒にスポーツを楽しむ」ということは、やっぱり楽しいことですよね。
例えばサッカーのパス回しの場面を考えてみましょう。パス回しの場面では、相手の表情を見たり、声を掛け合ったりしながら、相手に向けて力を加減したり、言葉かけをしてボールを蹴りますよね。力いっぱいボールを蹴ってしまうと、相手はうまく受け取れないかもしれません。「ちょっと!今のパスは強かったよ」、「ごめん、ごめん、次は優しく蹴るね」、そんなやり取りを通して「なるほど、こうやって蹴ると、受け取りやすいんだな」とか、「このくらいの力だと受け取りやすいかな」といったことを考えるようになっていくと思います。

しかしながら、「みんなが同じようにパス回しができるか?」というとそうではない場面もあるかもしれません。
例えば足に麻痺があったりすると、どうでしょうか?みんなと同じようにボールを蹴るのは難しいかもしれません。弱視で見えにくさがあると、ボールも同様に見えにくいかもしれません。また、子どもの中には、障がいの有無にかかわらず細やかな動きに対する不器用さがあってパス回しが苦手な子がいるのではないでしょうか?
そういった子はパス回しには参加できないのでしょうか?
もし、先生方のクラスに何らかの事情でパス回しが苦手、けれども「休み時間はみんなと一緒にパス回しをして遊びたい」と想いを伝える子供がいるとします。
そんな時先生方はどうしますか?ちょっと一緒に考えてみませんか?

例えば、「ボールを大きくしてしまう」というのはどうでしょうか?
バランスボールのように大きいボールであれば、足もボールに当てやすいかもしれません。
見えにくいというときには、モノクロのサッカーボールではなくカラフルな別のボールを使ってみるのもいいかもしれません。逆にカラフルだと光を反射して見えにくい子にはモノクロのサッカーボールがいいかもしれませんね。

さて、ではこんな時はどうしますか?
球体のボールは、優しく地面に置かないと動いてしまいますね。ゆらゆらと揺れているボールを蹴るのが何らかの事情で難しい。こんな時なら皆さんはどうしますか?

例えばこんなものを使ってみるのはどうでしょう。
これはリング状のフープを使った「フープサッカー」の様子です。
球体ではないフープは地面においてもボールのように転がっていくことはありません。
体育館や廊下のような摩擦の少なそうな床の上であれば、フープは理科の等速直線運動の実験のようにスーッと滑っていきます。
ゲームセンターにあるエアホッケーのような動きといえばわかりやすいでしょうか。ボールと動きは異なりますが、ボールとは違った新鮮な感触で蹴ることができます。

子どもの困り感を探して、アプローチを探していく

さて、今回は「特別支援教育について一緒に考えてみましょう」というタイトルでお話を進めてきました。スポーツひとつをとっても、「子どもの困り感」はその子どもによって千差万別で、その支援のアプローチも多様です。パス回しの例で説明した通り、その子が何に困っているかを先生が見つけて、そこにどうアプローチをしていくかが大切になってきます。
そのアプローチの結果の一つが、例えば今回ご紹介した「フープサッカー」だと私は考えています。

特別支援教育は「子どもの困り感を先生が一生懸命探していく」ことがスタートで、「そのアプローチの方法を先生が一生懸命探求していく」ことがとても大切だと私は考えています。例えば授業で、日常生活で、宿題で、給食で、休み時間で「何か困っていないかなぁ?」といった視点をもって見てみるといいかもしれませんね。
この記事を読んでくださった先生方のクラスで、少しでも困り感が少なくなって笑顔の子どもが増えることを願っています。

丸山 裕也(まるやま ゆうや)

信州大学教育学部附属特別支援学校 教諭
公認心理師、学校心理士、障害者スポーツ指導員(初級)、福祉用具専門相談員
「あした、またがっこうでね。」と、子どもも教師も伝え合うことができるような、楽しい学級づくりを目指しています。また、障害のある子どもたちの心の健康について、教育と心理の二面からアプローチしていく方法を考えています。
特別支援学校で出会ってきた子どもたちとの学びを、皆さんにお伝えしていきたいと思っています。


ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop