2022.07.05
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

学び続ける教員を目指して(前編)

「教育公務員は、その職責を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならない。」と私たち教員が研修を受けることについて教育公務員特例法21条に示されています。
また元サッカーフランス代表監督のRoger Lemerre氏は「学ぶことをやめたら、教えることをやめなければならない」と言っています。
どうやら私たち教員は、「学ぶ」ことについて、意識をし、考えていくことが大切であるようです。しかしながら、忙しい毎日の中、なかなかそこに意識を向けることは難しいですね。
私たち教員の「学び」はどのようなものなのか、それは私にもまだわかりませんが、私自身は「学び続ける教員」でありたいと思っています。
今回の記事では、私の「学び続ける」というところについて、体験を踏まえてご紹介をしていきたいと思います。今回は前編となります。お付き合いいただければありがたいです。よろしくお願いいたします。

信州大学教育学部附属特別支援学校 教諭 丸山 裕也

右も左もわからない。

私はある大学で教職課程の科目を履修し、卒業時に教員免許を授与されました。その後、教職の道に進み、特別支援教育の世界に入っていくことになるのですが、その中でまだ若い私は自分の「特別支援教育」や「教育心理学」に関する知識の浅さを痛感しました。
きっと、この記事をお読みの先生方の中にも同じような経験をした方もおられるのではないでしょうか?

私の場合は生徒の引継ぎの資料に書かれている心理検査が何を示しているのか、その子がどんな障害で、どんな支援が必要なのか、最初は資料を呼んでもよくわからなかったのです。また、先輩の先生方が話している会話の中で出てくる単語もわからないことがありました。当然、わからないままで良いわけがありませんので、周りの先生方に尋ねたり、自分で本やネットで調べたりして、そうしていくうちに少しずつ知識が身についてきました。
この時の私にとって、学ぶということは「わからなくなってから、人に聞く。調べる」というものでした。
今思うと、困ってから対策をするという、どちらかというと受け身の学びであったように感じます。

ようやく、少しは知識が身についてきた私に、ある時「特別支援教育コーディネーター」という大きな役割がまわってきました。
これまで他の先生に尋ねることの多かった私が、今度は尋ねられる側になり、そこでまた自分の知識の浅さを痛感しました。特別支援教育コーディネーターは様々な生徒の、具体的な支援についても相談される場面があり、それは時には自分の学校以外の学校で困っている生徒の支援にも関わります。

そうなってくると、その場で聞いたような知識だけではなかなか通用しなくなってきます。
受け身型の学びではいけないと、そのころから感じるようになりました。
私は、放課後の時間や土日に研修に参加をし、知識の補充を行っていきました。
1つの研修に参加するようになると、その内容に関連する研修に参加したくなったり、研修で関わりのある内容の本を読みたくなったりするようになりました。
これまで受け身だった学びが、だんだんと率先して学ぶようになってきたのが自分でもわかるようになりました。そしてこの頃に「学校心理士」を目標に仕事と並行して勉強を始めました。

ところが、そんな生活をしていると、いつのころからか「学ぶこと」が「目的」になっていて、学んで満足するようになり、研修に参加して、「あー、これで詳しくなったなぁ」と感じておしまいになっている状態が続くようになりました。

川の色は「水色」じゃないよ?

水の色って透明

学ぶことが「目的」になってくると、たくさんの研修に参加している自分はたくさん勉強して知識があると思い込んでしまいます。
そんな私の失敗談をしたいと思います。

ある時、「絵の描き方」の研修を受け、その研修の中で、水の表現をするときにスポンジを使って描くと子どもたちでも描きやすいと教わりました。
当然、私も同じように子どもたちに伝えていきます。

「スポンジを使って、こうやって水色の絵の具を使って川の水の色を描いていきましょう」

教わった研修の通りに、見本の絵を描いていきます。
そんな私の姿を見てある生徒がこう教えてくれました。

「川の色は、水色じゃないよ」

実はこの写真は、授業の後に生徒が普段使っているタブレットを使って撮影してきてくれたものです。
そうですよね、水の色は透明ですね。つまり川の水の色も当然、透明ですね。

でも絵で描くときは、川の水を水色や青色で表現することが多いですよね。それは私たちはこれまでの経験やイメージで知っているからではないでしょうか。ところが特別支援学校に通う生徒たちはそのイメージがないこともあります。

研修に参加して満足していると、その後どのように活かしていくかということが疎かになってきます。この失敗談はそのことを私に教えてくれた出来事でした。


ここまで、私の拙い教育実践についてお話をしてきました。後編では特に「特別支援教育」というところを中心に、学びについてお話していきたいと思います。

次回の記事もどうぞよろしくお願いいたします。

丸山 裕也(まるやま ゆうや)

信州大学教育学部附属特別支援学校 教諭
公認心理師、学校心理士、障害者スポーツ指導員(初級)、福祉用具専門相談員
「あした、またがっこうでね。」と、子どもも教師も伝え合うことができるような、楽しい学級づくりを目指しています。また、障害のある子どもたちの心の健康について、教育と心理の二面からアプローチしていく方法を考えています。
特別支援学校で出会ってきた子どもたちとの学びを、皆さんにお伝えしていきたいと思っています。


ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop