【学びの自立化と個別最適化】の実現にも教育支援連携
庭に咲く石蕗(ツワブキ)の花でさえ、よく見れば一輪一輪、特徴があることに気づきます。子供達一人一人の特性を活かす教育支援連携を!
京都教育大学附属特別支援学校 特別支援教育士・臨床発達心理士・特別支援ICT研究会 中川 宣子
学校祭「舞台発表」

年間行事の中でも、特に大きなイベントとして2日間にわたる「学校祭」があります。1日目は、中・高等部の作業製品や保護者のお店が並ぶ「バザー」、2日目は、僅か2週間で取り組む劇学習の「舞台発表」です。
今年度の小学部の「舞台発表」は『白雪姫』。子供達18人が、白雪姫、王子、鏡の精、村人、動物、こびと、魔女……と、それぞれの役を演じました。
学習を進めるにあたって、台詞に挑戦する子、歌を唄う子、楽器演奏をする子、ダンスをする子、果物を収穫したり、運んだりの演技をする子……誰がどの配役にするかは勿論の事、子供一人一人が出番の中でどのように見せ場をつくるかを検討します。
その時手がかりとなるのは、子供達一人一人の日々の学習情報です。
例えば、最近言葉が増えた子には台詞を、ダンスが好きな子にはリズミカルなダンスを、楽器に興味関心がある子には楽器演奏を、色や物の判別ができるようになった子にはそれを活かした演技を、というように日々の学習の中で見られる「成長の姿」や「興味関心」「子供の特性」に関する学習情報を活用して、配役や見せ場を決定していきます。
次に、配役や見せ場が決まれば、その演技をどうすれば子供が理解し、舞台の上で自信を持って発表できるか、つまり子供にとってどのような「支援」が必要かを検討します。
例えば、台詞の場面では、子供のそばで台詞を伝えることで復唱して言える子もいれば、舞台裾に台詞カードを提示して読める子もいます。立つ位置の理解は、お立ち台が必要な子もいれば、マイクスタンドや小道具が目印になる子もいます。
日々の支援情報を基に、「子供の理解」「認知特性」を捉え、一人一人に合った「支援」を探ります。
このようにして劇学習の2週間、「この方がいいかなぁ」「やっぱりこっちかな」と子供達とやりとりをしながら、また教師間では台本や小道具や音楽や衣装について試行錯誤しながら、そしてご家族には日々の学習の様子を伝え応援してもらいながら、学校祭当日を迎えました。結果「舞台発表:白雪姫」は、子供達一人一人に温かい拍手が送られ、大成功となりました。
【学びの自立化と個別最適化】の実現
この学校祭「舞台発表」を通じてあらためて実感したことは、私達は連携、協力して、子供の特性を発見し捉え活かすことが重要であり、そのためには学習・支援情報を皆で共有できているか、またこれらの学習・支援情報を継続して蓄積できているかが必要となり、これらが子供達一人一人の特性を捉えた「学びの最適化」の実現に繋がる!ということです。
「デジタル連絡帳」はここでも、学習・支援情報の共有、蓄積を可能にする有効なツールとして活用することができました。
先日11月4日・5日の2日間、デジタルテクノロジー活用による“教育”イノベーションをテーマにした国際カンファレンス『Edvation x Summit 2019』が開催され、経済産業省設置の教育改革有識者会議「『未来の教室』とEdTech研究会」(以下「未来の教室」)による、「2019年度実証事業 中間報告」セッションが行われたそうです。
その記事の中に「未来の教室」の目指す姿とは、「知る」と「創る」をぐるぐると回していくことで、子供達一人一人の「ワクワク」を醸成し高めていくという【学びのSTEAM化】を大きな軸として、そこにEdTech等を活用しての【学びの自立化と個別最適化】による「誰も取り残さない」学びの提供を実現し、そのためのICT環境や制度環境等といった【新しい学習基盤づくり】を進めていくという内容がありました。この中の【学びの自立化と個別最適化】については、「(一人一人の興味関心や認知特性を踏まえて)」という括弧書きが付いていました。
今回紹介した学校祭「舞台発表」は、一人一人の興味関心や認知特性を踏まえた教育支援連携による【学びの自立化と個別最適化】を実現した一例であったといえます。
社会の変革と共に、教育はいま大きく変わろうとしています。どのように変わろうとも、目の前の子供達がワクワクしながら学び続け、一人一人が自立し社会参画できるように、私達は教育支援連携していきたいですね。さぁ、今日も明るく強く楽しく!(^^)!

中川 宣子(なかがわ のりこ)
京都教育大学附属特別支援学校 特別支援教育士・臨床発達心理士・特別支援ICT研究会
「特別支援教育とは、子ども達の特別な才能を学校・家庭・地域の連携により支え、教え、育てること」と考えています。日々の教育実践を、情報発信・交流し合い、共に子ども達の成長・発達に役立てていきましょう!
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