席替え=クジって決まってるの?
年に何度か席替えをするクラスも多いのではないでしょうか?年度当初は出席番号順に座っていて、顔と名前が一致してきたら「そろそろ...」なんてタイミングでやっているとか、定期試験ごとにやっている、月に1回、要望があったら・・・いろんなやり方があると思います。また、決め方についても、クラスの人数や校種によって違いがあるのかもしれません。今回は、自分の担任するクラスでの席替えをめぐるやり取りについて書いてみました。
前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭 山形県立米沢東高等学校 教諭 高橋 英路
先生、好きな席じゃダメなんですか?
それまではクジで席替えをしていたクラスでしたが、前回の席替えからしばらくたち、また席替えをしたい!という要望が出てきました。生徒の中にはすでに自主的にクジをつくってくれた人もいました。そんなとき、「先生、好きな席じゃダメなんですか?」という提案がありました。場合によっては「ダメ」と一蹴されてしまうのかもしれませんが、それをあえて提案してくれたことが嬉しく感じました。「こんなこと言ったら否定されるかな?」「席替えはクジに決まっているよね」といった思い込みで、自分の考えを表明できない空間というのは、なんだか寂しい気がするからです。
さて、その後、クラスで話をしてもらい、最終的には多数決で、今回の席替えは「自分たちで自由に考えて席を決める」という方法になりました。
が、しかし!・・・
どんな風に話をするのか楽しみに見ていたところでしたが、何となく早い者勝ちのような感じで、座席表にどんどん書いてしまったようです。「このまま早い者勝ちで席がうまっていって大丈夫かな?」と思いましたが、あえて口は出さずに見守ることにしました。すると、最初に提案した生徒とは別の生徒が皆に訴えかけました。「勉強している人もいますが、ちょっと手を止めて聞いてください。席を自分たちで自由に考えて決めるとなったが、現状では自分の仲良しの生徒同士で少し話して早い者勝ちでどんどん席を決めてしまっている。このままだと、クラス全体での意見のすり合わせもないまま不満を持つ人が増えてしまうかもしれない。いったん、この作業を止めて、決め方を再検討してはどうだろう?」という趣旨でした。なんだかんだで、早いもの勝ちになっているな~と感じている生徒、早く決めて座席表に書いたけど不公平かな~と思っている生徒が多かったようで、その提案の後、大きな拍手が起こりました。
そして、新たな提案として、「①このままのやり方で決めていく、②クジで座席を選ぶ順番を決めてその順に好きな席を決めていく、③その他あれば言ってほしい」と呼び掛けていました。その後の話し合いで結局②の提案に従い、とりあえず全員がクジを引いて座席を決める順番を決め、その順に好きな席を選ぶというスタイルが採用されました。
このやり取りから伝えたかったこと
こういうやり取りを見て、皆さんはどのように感じますか?「やっぱり揉めるに決まってる」「分かりきってるんだから最初からクジにしとけばいいのに」と感じる方もいるかもしれません。でも、最初に提案してくれた生徒の声や、その後にクラス全体で白熱した議論などを見ていると、遠回りのように見えて、単なる席替えというイベントで成長した生徒が多いのではないかと思うんです。また、今回のように、誰かを傷つけるとか、そういったことでなければ、何を言っても否定されない空間を大事にしたいと考えています。
他にも、様々な先生方とお話し、普通なら即答でダメと言われる提案を真剣に考え、実現してしまったというような事例もたくさんお聞きしたことがあります。学校やクラスが、生徒が委縮したり、先入観にとらわれすぎたりせず、自由な発想で物事を考えられる場になったら良いなと思い、今回の記事を書きました。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
高橋 英路(たかはし ひでみち)
前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭
山形県立米沢東高等学校 教諭
クラス担任と、地歴科で専門の地理を中心に授業を担当。生徒達の「主体的・対話的で深い学び」が実現できるよう、p4c(philosophy for children)やKP(紙芝居プレゼンテーション)法などの手法も取り入れながら日々の授業に取り組んでいます。
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