「大人受信力」を磨く教育支援連携
金木犀の花が咲き始め、甘い香りが漂っています。嗅覚・視覚・聴覚・・・と五感を働かせて、子供達からの発信をキャッチしましょう!
京都教育大学附属特別支援学校 特別支援教育士・臨床発達心理士・特別支援ICT研究会 中川 宣子
「大人受信力」が試される

前回は「子供の発信力を育成する教育支援連携」について述べました。
子供達を観察していると、言葉だけでなく、言葉の抑揚、表情、身振り、視線等、様々な発信をしていることがわかります。
例えば、先日行われた「運動会」の朝。登校してきた子供達は、ご家族の応援が嬉しくて、「ママ、パパと来た!ジージ、バーバも来た!」と笑顔の報告や、声は大きく、トーンも高く、目をキョロキョロさせたり、飛び跳ねたり、走り回ったり、中には、イヤイヤと愚図ってみたり、突然涙を浮かべたりと、いつもと違う様子を見せて、どれも嬉しい気持ちが溢れんばかりでした。
このように特別な日は、特別な発信をしてくれる子供達ですが、日常の中でも子供達は多くの発信をしています。
ここで考えなければならないのは、子供が一所懸命発信したとしても、受ける側に準備が無ければ何にもならない事です。
子供からの発信をどう受け止めるか、「大人の受信力」が試されます。
「大人受信力」を磨く
学校では、子供達の様子を写真やビデオで見ながら、複数の先生達で、授業や子供達の事を討議する授業研究会があります。
参加者である先生方は一つの同じ学習の様子を見ていますが、A先生は「この様子から、この子は○○しようとしたと考えます」と言い、B先生は「いや、それはどうかな。私は△△と捉えました」と多様な意見が出ます。そして「なるほど、そんな風に捉える事できるのか。そう解釈したか」と、自分とは違った子供の捉え方、「受信力」の違いにハッと気づかされます。
このような「受信力」の違いを経験することによって、ハッと気づかされた分だけ、「子供からの発信」を、より多様に受信できるようになります。つまり「大人受信力」は磨かれます。
「でも、授業研究会なんてそう頻繁にできないし・・・」そうですよね、大事なことだとはわかっていても、なかなかできない現実がありますよね。しかし、日々の中で、ちょっと意識するだけで、「大人受信力」は磨くことができます。
例えば、「デジタル連絡帳」を活用します。「デジタル連絡帳」には、子供の家庭学習・学校学習の様子が、写真や動画で記録されています。
朝の職員室では、ご家庭から送られてきた一枚の写真を見ながら、Aさんのことが話題になります。「見て見て、Aさんが昨日△△したんやって」「どれどれ、へぇ、これ○○ちゃうの?」「あっ、そうか。ほんまやね。すごいねー」
放課後の教室では今日の学習を「デジタル連絡帳」に記録しながら、Bさんのことが話題になります。「この写真見て、今日のBさんの体育の様子」「わーめっちゃいい顔して走ってたんやねー」「最近他の教科でも意欲的にやっていたよ」「そうなんやー。嬉しいなあ」
ご家庭でも子供のことが話題になります。「写真を見て意外にもよく頑張っている姿に驚きました」「全くできないと思い込んでいました。皆の中で育ててもらえていることに喜びを感じます」(デジタル連絡帳家庭欄から)
こうした子供についての日々の情報共有が、「大人受信力」を磨いていきます。
教育支援連携で「大人受信力」を磨こう!
自分一人よりも、より多くの目で見て感じたこと=受信したことを情報共有することで、子供の理解が深まる事は、当然のことです。情報を共有しながら、意識して子供を観察することで、「大人受信力」は益々高まります。「大人受信力」が高まれば、子供の特性をより発見することに繋がります。
「大人受信力」は、日々の教育支援連携によって、磨かれ強くなるのです。
学校は「運動会」が終わり、次の行事は「遠足」「研究発表会」「学校祭」と続きます。
子供達を中心に、子供達からの発信を皆でキャッチする教育支援連携で、明るく強く楽しく、子供達の自立と社会参画を目指していきましょう!

中川 宣子(なかがわ のりこ)
京都教育大学附属特別支援学校 特別支援教育士・臨床発達心理士・特別支援ICT研究会
「特別支援教育とは、子ども達の特別な才能を学校・家庭・地域の連携により支え、教え、育てること」と考えています。日々の教育実践を、情報発信・交流し合い、共に子ども達の成長・発達に役立てていきましょう!
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