2019.09.18
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「子供発信力」を育成する教育支援連携

「子供発信力」を育成していますか?

京都教育大学附属特別支援学校 特別支援教育士・臨床発達心理士・特別支援ICT研究会 中川 宣子

大人発信の現実

学校というところはとかく、子供からの発信よりも、大人からの発信情報が多い現実があります。

「あーしなさい」「こーしなさい」「違う違う、こうやりなさい」

これらは、子供達が困ると思うからつい先回りしてやってしまうことであり、子供達がわからないと思うからつい言ってしまうことであり、子供達の事を思って、ついつい大人発信の情報が多くなっている状況です。

しかしこれからの時代は、大人発信といった枠組みの中だけでなく、その枠組みを超えた子供発信の発想や力が必要になる時代です。では子供発信の発想や力、「子供発信力」はどのようにすれば育成できるのでしょうか?

私はその幾つかの方法の中の一つに「デジタル連絡帳」による教育支援連携があげられると考えています。

子供発信エピソード

「子供発信力」の育成として、次のようなエピソードがあります。

Aさんは2年前まで、「今日学校で何があった?」と尋ねられると、「うーん、何あったかな?」と首を傾げて笑っていました。それから2年間、Aさんは学校でも家庭でも、色々な事にチャレンジして、あらゆる面で大きく成長していきました。その毎日の学校学習、家庭学習の様子は「デジタル連絡帳」に記録されています。

学校と家庭で、この「デジタル連絡帳」の写真や動画を教材として活用しました。学校では毎日、子供達は自分のトピックニュースを皆の前で発表し、互いの情報を共有する中で、友達や先生から褒められ認められたり、友達の頑張りを新たに発見したり、友達の体験を疑似体験して真似っこしたり……の学習を続けました。

これらの学習の継続は確実に、子供達の自己肯定感、コミュニケーション力を高めました。まさに「子供発信力」育成の学習環境です。Aさんも、写真や動画を指差しながら「これ、作ってん」「お母さんと行った」と自分が学習した事を、皆の前で堂々と話すようになりました。

そして先日、校外学習で科学センターに行った時のこと。科学センターの入り口には、動く大きな恐竜が出迎えていて、Aさんはその恐竜や色々な展示物に興味を示し楽しんでいました。その日の「デジタル連絡帳」の家庭欄には、次のようなことが書かれていました。

・・・・・「科学センターどうやった?」と聞きましたところ、「お母さん、恐竜ってむっちゃでかいの、知ってる?」と。身をもって体験したんやなと嬉しくなりました。また、一緒に行ってみたいと思います。(「デジタル連絡帳」家庭欄より)・・・・・

このエピソードからは、Aさんが科学センターで大きな恐竜と出会い、その大きさにビックリしてとても印象に残ったことがわかります。そしてこの感動を自分の感想としてだけでなく、お母さんに向けて「知ってる?」と投げかけ、Aさんから発信しています。おそらくこの言葉の後には、「お母さん知ってる?私は知ってるよ。教えてあげるわ」という気持ちが続いたはずです。そして、「それならまた一緒に行ってみよう、Aちゃん今度教えてね」と、お母さんはAさんの気持ちをしっかり受け止め、次なる行動に向かっておられます。素晴らしいですね。

まさに子供が体験し学んだことから(アクティブ・ラーニング)、子供自身が感じ考えたこと発信し、この子供発信が、家族や周囲の人を動かす力になる。この「子供発信力」が今求められている教育の一つであり、これからの時代に活きる力になるのではないかと思います。

「子供発信力」を教育支援連携で

「子供発信力」を育成する学習環境……これには今回紹介した「デジタル連絡帳」といったICT活用が有効です。と同時に、子供の発信を受け止める大人の存在、大人が受信する力も必要です。子供が何を発信しているのか、言葉だけでなくしぐさや態度からも、子供発信を受信する力、「大人受信力」です。このことについては、次の機会に。

ススキの穂が実り始めました。ススキの花言葉は「心が通じる」「活力」「生命力」だそうです。子供達と心が通じるように、子供達の活力・生命力がみなぎるように、今日も明るく強く楽しく、教育支援連携をしていきましょう(^^)/

中川 宣子(なかがわ のりこ)

京都教育大学附属特別支援学校 特別支援教育士・臨床発達心理士・特別支援ICT研究
「特別支援教育とは、子ども達の特別な才能を学校・家庭・地域の連携により支え、教え、育てること」と考えています。日々の教育実践を、情報発信・交流し合い、共に子ども達の成長・発達に役立てていきましょう!

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