加点法で
私たち教師は至るところで子どもたちを一定の価値規準・基準に照らし合わせて評価、評定しています。極端に言えば、子どもたちの「おはようございます」に「元気な声だね」というのも評価が入っています。漢字テストに〇をつける、算数のテストに点数をつける、授業中の発言に「なるほど」「面白い」とコメントするのも全て「評価」と言えるかもしれません。何かを形容する言葉には・・・特にパーソナリティーを形容する言葉には・・・ポジティブかネガティブかどちらかのニュアンスが含まれているので、言語を媒介として子どもたちと相互交流している以上「評価」は必然なのかもしれません。必然ならば、できるだけ加点法で評価をしたい、そのような思いを日々もっています。今回はその「加点法」で子どもたちを評価している日常を紹介します。学級だよりから抜粋しています。文体がこのような場に適切ではないかもしれませんがご容赦ください。
佛教大学大学院博士後期課程1年 篠田 裕文
スタンプで加点法評価 ある日の学級だよりから
何で○○じゃないんですか?
〇月◇日△曜日、2回この言葉を聴きました。1回目は社会科の振り返り。この日の社会は時間調整が上手くいかず、子どもたちに「明日朝、書く時間をとるからふりかえりは途中で良いよ」と声をかけ授業を終えました。
ところが昼休み。9人の子どもたちが次々にノートを持ってきました。「見てください」「どうですか?」と口々にたずねてきます。コメントをフィードバックすると指摘した課題をすぐに書き直して再提出。このレスポンス(反応)の早さには驚くばかりです。
基本的に、子どもたちが書いたものにはスタンプをおします。小さいスタンプが4色、大きいスタンプが4色、そして銀のスタンプ、金のスタンプと続きます。小さい黄色いスタンプが押されてあれば100点満点です。そこからはプラスアルファ、加点法です。今日はある子に銀を押しました。銀を押した子が言ったのが「なんで金じゃないんですか?」です。その裏には
〇 どうしたら金がとれますか?(もっとよくなりますか?)
という向上心を感じました。事実、「こっちには資料が明確に示してあります。君が選んだものは資料がもともとすくないので(考えを述べるのが)大変だったでしょう。その『資料の差』だけです」と話すと、「ああそうか。確かに少なかったもん」と納得していたようでした。
リコーダーのテストでも見られました。何人もの子が挑戦。「なんで銀じゃないんですか?」という質問。これもまた
〇どうしたら銀がとれますか?(もっとよくなりますか?)
と向上心がある質問。
「タンギング よかったらね。○○さんのを聞いてごらん」というと「わかった。もう1回やる」とチャレンジ精神を発揮していました。この子はすでに合格、100点以上。それなのに上を目指そうとする。時間がなくてこの日は再チャレンジできませんでしたが、きっと再び私の机の前にくることでしょう。
ふりかえり
規準・基準に照らし合わせてスタンプを押していきます。ただそこまで厳密ではありません。1工夫加えたら1段階上のスタンプ。2工夫加えたら2段階上。そのようなアバウトさもありました。それは「努力」や「過程」を加味することができるからです。到達度評価をしながらも個人内評価なのです。全員に「銀や金」のスタンプをとるためのアプローチを保障したいと思っていました。
もちろん他人と比べる子もいます。それはそれでいいと思っています。ようは、スタンプによって子どもたちが「頑張ろう」「やってみよう」「工夫してみよう」「おれってできるじゃん」って思ってくれたらいいのです。
評定・評価は学校の脈略でいえば、子ども、教師双方にとって「次につながるもの」です。子どもにとっては次への意欲や予測や方向性。教師にとっては自分の指導の改善等。「評定・評価」そのものを子どもも教師も楽しむことができたらいいなと思っての「スタンプ」の利用でした。
最後までお読みいただきありがとうございました。(評定・評価、規準・基準の区別を明確にせず本記事を書いております。ご容赦ください)
篠田 裕文(しのだ ひろふみ)
佛教大学大学院博士後期課程1年
修士課程を修了し博士課程に進学しました。修士時代に学んだこと、学校現場で実践したことを書き綴りたいと思います。
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