2019.07.12
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

生徒の声を聴くって大事

私たち教員は、どうしても自分の考えや連絡事項を一方的に伝えてしまいがちです。相手の話を聞こうと思ったときには時間が...なんてこともあるかもしれません。でも、慌ただしい毎日の中に、少しでも生徒の声を聴く時間を作っていけたら良いな~と思います。

前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭  山形県立米沢東高等学校 教諭 高橋 英路

8:20開始なら何時に行く?

勤務校では毎日8:20から朝学習があり、静かに着席して学習を始めることになっています。担任が来てのSHRは8:35で、8:20にはチャイムは鳴りません。登校してすぐの慌ただしい時間帯に、自分で時計を見て動く必要があり、なかなか大変です。さて、このようなとき、皆さんが担任なら、何時に教室に行ってみますか?

正解はないので、いろんな考えがあると思います。8:18頃に行って座るよう声掛けするとか、8:20過ぎたころに様子を見に行くとか、自主性に任せてあえて行かないとか…
ちなみに私は、8:05くらいに行って、8:20になる前に教室を出てきます。8:20を過ぎると静かに学習する時間なので、気になる生徒がいてもなかなか話ができません。なので、その前に教室周辺をウロウロしながら、掲示物を整理したり、朝の挨拶をしたり、話しかけてくれた生徒と話をしたりしています。そして、そのことは生徒たちにも伝えています。

「私がSHR前に教室に来るのは、皆さんが8:20に静かに着席するよう注意するためではありません。何か不安や相談がある人と話をしたり、みんな元気かな~と思って来ています。8:20からの朝学習は自分のために必要なものなので、私が何も言わなくても自分で必要だと判断して取るべき行動を取ってほしい」と。

1時間目が始まってしまうと忙しい日々がスタートしてしまいますから、朝の少しの時間でも、生徒たちの声を聴けるのは貴重な時間です。

アンケートしてみる

生徒が教員に相談したいと話しかけることはハードルが高いという場合もあります。だったら記述式のアンケートなら書きやすいと。ただ、学校全体でやる「いじめアンケート」や「進路アンケート(希望調査)」などに書くような内容でないこともあるでしょう。単にモヤモヤするとか、自分の考えが正しいのか大人の考えを聞きたいとか…

そんな小さな声を聴くため、私は1か月に1回くらいの頻度で学校生活アンケートというものを実施しています。気軽に書いてほしいので、アンケート自体も簡易なものでA5サイズの小さなアンケートです。内容としては、
①学校生活楽しい?:楽しい、まあ、普通、あまり、全然
②学習順調?:とても、まあ、あまり、全然
③生活順調?:とても、まあ、あまり、全然
④自由記述
⑤早急に面談希望?:あり、なし
といった具合です。

④や⑤に直接的に書いてくれればスグに面談できますが、①の内容から何らかのサインを読み取ることもできます。また、定期的に同形式のアンケートを行うことで、一見すると問題ないように見える回答であっても、前回との比較から見えてくるものもあります。さらに、クラス全体の傾向として、前回より学校生活楽しい人が増えたとか、減ったとか、学習で手一杯の人が増えたとか、そんな読み取りも可能です。

あとは、何もないのに特定の生徒を呼び出すよりも、「アンケートで、学校生活があまり…に〇をつけていたから気になったんだけど…」といった具合に話をするきっかけにもなります。義務的にやっているものではないので集計の必要もなく、純粋に生徒の声を聴くのに有効で、生徒としても1分くらいで回答できますし、私としてもクラス経営に非常に役立っています。

アドバイスほしい?聞いてほしい?

私たち教員は、相談されるとアドバイスしたがります(笑)。特に、生徒が真剣に聞いてくれるほど、話しまくってしまう人もいるでしょう。しかし、相談に来た生徒の本心は、アドバイスがほしいだけなのでしょうか?アドバイスしているのに聞いてないように見えるとか、表面上は「ありがとうございました!」と言っている生徒の表情が晴れないとか…

そんなときは、生徒に思う存分話をしてもらうことも大事だと思います。または、黙って聞くだけでなく、生徒の話をうまく引き出し、こちらがアドバイスしたいと思ったことを生徒自身に発見してもらい、自分の言葉で口に出してもらうといったことも有効です。同じアドバイスでも、教員から一方的に言われるのと、自分で考えてたどり着いたのとでは全然違います。

こういう見極めの難しいところは、生徒自身が「自分は話を聞いてほしいだけだ」とか「自分は的確なアドバイスをもらいたい」といったことを分かっていない場合もあるということです。その生徒にとってはどちらが有効なのか、そこをしっかり押さえていくのは教員としての力の見せどころなのかもしれません。

生徒の声を聴くというのは、大事ではありますが、実際にやるのはスゴク難しいことでもあります。皆さんは、どんな考えや工夫をして声を聴いていますか?ぜひ、いろんなコメントをいただければ幸いです。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

高橋 英路(たかはし ひでみち)

前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭
山形県立米沢東高等学校 教諭


クラス担任と、地歴科で専門の地理を中心に授業を担当。生徒達の「主体的・対話的で深い学び」が実現できるよう、p4c(philosophy for children)やKP(紙芝居プレゼンテーション)法などの手法も取り入れながら日々の授業に取り組んでいます。

同じテーマの執筆者
  • 前川 修一

    明光学園中・高等学校 進路指導部長

  • 村上 稔

    陸中海岸青少年の家 社会教育主事

  • 中村 祐哉

    広島県公立小学校 教諭

  • 泊 和寿

    石川県金沢市立三谷小学校 教諭

  • 高岡 昌司

    岡山県教育委員会津山教育事務所教職員課 主任

  • 笠原 三義

    戸田市立戸田第二小学校 教諭・日本授業UD学会埼玉支部代表

  • 常名 剛司

    静岡大学教育学部附属浜松小学校 教諭

  • 赤堀 達也

    旭川市立大学短期大学部 准教授

  • 藤井 三和子

    兵庫県立兵庫工業高等学校 学校心理士 教諭

  • 荒木 奈美

    札幌大学地域共創学群日本語・日本文化専攻 教授

  • 笠井 縁

    ユタ日本語補習校 小学部担任

  • 石元 周作

    大阪市立野田小学校 教頭

  • 平野 正隆

    東京都品川区立学校

  • 安井 望

    神奈川県公立小学校勤務

  • 青木 信一

    大阪市立中学校教諭、日本キャリア教育学会認定キャリアカウンセラー

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop