2019.06.21
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元モンスターペアレントが伝授する"保護者対応"の極意

今回は、私の実体験をもとに、多くの先生方が「苦手〜」と嘆く"保護者対応"について書いてみました。

東京都内公立学校教諭 林 真未

“保護者対応”はやめたほうがいい。

保護者から教員になった時、“保護者対応”という言葉を知り、「学校は、私たち保護者に“対応”していたんだ……」と、悲しい気持ちになったことを覚えています。家族支援者として、すべての子どもの育ちに並々ならぬ知識と情熱をもち、学校に意見する私は、おそらく学校からしたら煙たい存在(=モンスターペアレント)。そのくせ、仕事に夢中で自分自身の子どもは放任でしたから、きっと当時の先生たちは「学校教育に意見する前に、自分の子をしっかり育ててくれ」と心の中で思いつつ、私に“対応”していたのだろうな……と今ならわかります笑。

けれど当時の私がほしかったのは、“対応”ではなく“わかり合うこと”。 うるさい保護者がなにか言ってきたから、事を荒立てないようにうまく立ち回ろう、ではなく、子どもを善く育てるという同じ目的に向かう者として、本音で語ってほしかった。 この気持ちは、私だけではないはずです。 “保護者対応”はやめたほうがいい。 おそらくどんな保護者でも、先生に“対応”されている限り、納得することはありません。

じゃあどうすればいい?

……とはいえ、今、逆の立場になってみると、様々なタイプの保護者がおられるので、“保護者対応”という言い方も、先生方が本音をためらうキモチも痛いほどわかります。 そこでここからは、教員+元保護者+家族支援者の視点で、先生と保護者が良い関係を築くコツを考えてみました。

●先生と保護者は、子どもを善く育てるという同じ目的に向かって共に歩む仲間だと徹底的に信じる(マスメディアに踊らされない)。
→これ、理想論・精神論チックですけど、一番だいじ。根幹です。このことを基本に、相手を信じ、誠意をもって話をすれば、滅多なことにはならないはずです。

●先生と保護者の“暗黙の上下関係”を壊し、対等で親しい関係を築く。
→居丈高な保護者も、暗黙の上下関係を感じればこそ、そうなっているのです。それを意識的に壊し、対等で親しい関係を築くことで、良好なコミュニケーションが生まれます。 相手を、保護者の一人としてではなく○○さんという個人として相対する感覚もだいじです。

●価値観や主観を混じえずに、保護者の話をそのまま聞く。
→人は、自分が思っているよりずっと、自分の価値観や主観を混じえてものごとを理解しがちです。それを自覚して話を聞き、そのままの形で受け止めないと、話がこじれます(自戒をうんと込めて)。

●アサーティブな話し方をする。
→アサーティブな話し方とは、卑屈にならず、強気にならず、含みのある表現も使わず、相手も自分も尊重するコミュニケーションのことです。自分の気持ちの裏まで丁寧に伝え、相手の主張にも耳を傾けます。
参考;
・アンディクソン「第四の生き方・自分を生かすアサーティブネス」(つげ書房新社/1998年)
アサーティブジャパン 

●保護者は学校の実態を知らないのだから、丁寧に説明をする。
→保護者の情報源は、子どもの話、他の親の噂、学校公開で見た様子だけ。それらは断片的・主観的な情報であり、学校で先生たちが日々どれだけのことをしているかを、実際にはわかっていません。遠慮なく自分の献身的な仕事ぶりを伝えたほうがいいです。

●保護者は一人ひとり違う。子どもと同じように、発達障害やメンタルを抱えた人を含む、いろんな保護者がいるという前提を持つ。
→このことを知っておかないと、せっかくの誠意が空回りしてしまうこともあります。保護者との話し合いが自分のキャパを超えた時には、専門職や管理職に繋ぐ潔さをもつことです。

とりあえずこんなところでしょうか。 私自身も、“わかっちゃいるけど失敗ばかり”の毎日ではありますが、 まあ、なんだかんだ言っても、最後は愛と誠意さえあればなんとかなる!
最善を尽くしてもなんとかならなかったときは……「相性が悪かった」とあきらめましょう!

イラスト/有田リリコ

林 真未(はやし まみ)

東京都内公立学校教諭
カナダライアソン大学認定ファミリーライフエデュケーター(家族支援職)
特定非営利活動法人手をつなご(子育て支援NPO)理事


家族(子育て)支援者と小学校教員をしています。両方の世界を知る身として、家族は学校を、学校は家族を、もっと理解しあえたらいい、と日々痛感しています。
著書『困ったらここへおいでよ。日常生活支援サポートハウスの奇跡』(東京シューレ出版)
『子どものやる気をどんどん引き出す!低学年担任のためのマジックフレーズ』(明治図書出版)
ブログ「家族支援と子育て支援」:https://flejapan.com/

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