特別支援教育の最前線に力を!―チームとしての学校―
特別支援教育の最前線はどこにあるか?最前線に力を集結しましょう!
京都教育大学附属特別支援学校 特別支援教育士・臨床発達心理士・特別支援ICT研究会 中川 宣子
特別支援教育の最前線はどこにあるか?
特別支援教育の最前線はどこにあるか?と尋ねられれば、私は「目の前の子供達にある!」と答えます。今日を生きる子供達が、特別支援教育の最前線!私達はこの最前線にいる子供達を中心に、子供達の自立と社会参画に向けて教育的活動を充実し、力を集結していかなければなりません。
子供達に向かって力を!
「学校教育法 第三十七条」の中には、次のような文章があります。
第4項 校長は、校務をつかさどり、所属職員を監督する。
第5項 副校長は、校長を助け、命を受けて校務をつかさどる。
第7項 教頭は、校長(副校長を置く小学校にあっては、校長及び副校長)を助け、校務を整理し、及び必要に応じ児童の教育をつかさどる。
第11項 教諭は、児童の教育を掌つかさどる。
第12項 養護教諭は、児童の養護をつかさどる。
第13項 栄養教諭は、児童の栄養の指導及び管理をつかさどる。
第14項 事務職員は、事務をつかさどる。
第15項 助教諭は、教諭の職務を助ける。
〔『学校教育法』 第三十七条 昭和22年3月31日 法律第26号
(平成29年5月31日施行)一部抜粋〕
ここにあるように、学校は、校長先生も、担任の先生も、補助の先生も、保健の先生も、事務職員さんも、それぞれが役割を担い、皆が連携、協働して、子供達の自立と社会参画のために教育的活動を充実していかなければなりません。
しかし実際はどうでしょう。教員であるあなたは、日々子供達の教育に専念できていますか?子供達に向かって、力を注げていますか?そしてあなたの学校は、それぞれが自分の役割を果たし、皆がチームとなって、子供達のために連携、協働できていますか?皆の力は、子供達に向かって集結していますか?
OECD国際教員指導環境調査(TALIS)
例えば少し前ですが、次のような調査がありました。それは、OECD国際教員指導環境調査(TALIS:Teaching and Learning International Survey)という、学校の学習環境と教員の勤務環境に焦点を当てた国際調査です。2008年に第1回調査が実施され(参加24か国・地域、日本は不参加)、2013年に実施された第2回調査には日本を含む34か国・地域が参加しています。
この調査結果を見ると、教員が一週間当たりの仕事にかける時間は、参加国平均では38時間ですが、日本は最も多く54時間。その内訳として、教員の仕事の時間配分について見てみると、教員が指導(授業)に使ったと回答した時間は、参加国平均で19時間、これに関しては日本も週18時間で同程度であるものの、日本の場合、一般的事務業務(教員として行う連絡事務、書類作成)に使った時間、学校運営業務への参画に使った時間、学校内での同僚との協働作業や話し合いに使った時間など、授業以外の業務に多くの時間を費やしているという結果が示されています。日々の私達の仕事を振り返ってみても、十分頷ける調査結果ですよね。
「チームとしての学校」私達のできること
そこで文部科学省はこれらの調査結果を踏まえ、「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について(答申)」の中で問題提起し、「チームとしての学校」を実現するための3つの視点を示しました。3つの視点とは、「専門性に基づくチーム体制の構築」、「学校のマネジメント機能の強化」、「教員一人一人が力を発揮できる環境の整備」です。
内容を読めば、大きく頷けるところばかりで、きっとその通りだと思われることでしょう。とはいっても、教育現場にいる私達が、これらのことを実現していくには、何ができるでしょうか。まず、できることから始めましょう!
例えば私達は「チームとしての学校」の第一歩として、「デジタル連絡帳」を活用しました。「デジタル連絡帳」は、担任の先生と保護者だけではなく、校長、副校長、学部主事、補助の先生が、それぞれのIDとパスワードを持てば、いつでも「デジタル連絡帳」をパソコンから閲覧できます。
例えば、Aさんが今日の「体育」の授業で新記録を更新したことも、Bさんが苦手な給食を頑張ったことも、CさんとDさんが初めて共同で作業したことも、Eさんの休日の様子も、「デジタル連絡帳」を通じて、担任の先生から校長先生まで、皆で子供の情報を得ることができます。
つまり、特別支援教育の最前線の情報を皆で共有することができるのです。情報共有は「チームとしての学校」の第一歩です。ここから、チームとしての教育支援連携は始まります。
特別支援教育の最前線に力を!
特別支援教育の最前線にいる子供達の教育の充実。このことは、私達も日々、切に願うことであり、そのためにも「チームとしての学校」の実現を、私達もできることから一歩一歩進めていきましょうね!今日も明るく強く楽しく前進です!(^^)!
参考資料

中川 宣子(なかがわ のりこ)
京都教育大学附属特別支援学校 特別支援教育士・臨床発達心理士・特別支援ICT研究会
「特別支援教育とは、子ども達の特別な才能を学校・家庭・地域の連携により支え、教え、育てること」と考えています。日々の教育実践を、情報発信・交流し合い、共に子ども達の成長・発達に役立てていきましょう!
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