2019.02.20
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部活動問題から提唱する幼児期・児童期の保育・教育について(1)

ドミノ倒し

旭川市立大学短期大学部 准教授 赤堀 達也

以前、「部活動について考える(1)~部活動と非認知的能力~」で部活動は非認知的能力を育てることができると述べました。これは裏を返すと、「部活動を始める年齢までに非認知的能力が育ちにくい仕組みになってしまっている」ことを示しています。部活動を始める年齢までに、非認知的能力がある程度育っているならば、「ブラック部活動」ではなく、生徒たちが困難に向かって協力しながら取り組んでいく「いい教育」になります。現状では非認知的能力が着目されてこなかったために、部活動で一から取り組まなくてはいけない状況です。もし非認知的能力を育てることができたら、部活動だけでなく、その他の教育活動全てが行いやすくなっていきます。そのため、部活動が始まる前の時期、幼児期と児童期のあり方について述べていきたいと思います。


非認知的能力について、軽く復習しましょう。


<非認知的能力>

  • 目標に向かって頑張る力
  • 他の人とうまく関わる力
  • 感情をコントロールする力


になります。これらは学力のように数字に表せる能力ではないため、「非認知」と呼んでいます。これらの能力は、これまでの子ども社会の中で自然と培うことができていました。しかし、社会が発達し、子ども達の間で「サンマ(三間)の間抜け現象(減少)」がおきています。サンマとは三つの間(空間・時間・仲間)のことを指しています。この三つが抜けているということです。


<サンマ(三間)の間抜け現象(減少)>
子ども社会で

  • 空間
  • 時間
  • 仲間  が減少している現象


空間とは、空き地や自然が少なくなり、頼みの公園は木登り禁止・ボール禁止・迷惑禁止など制限がかかり、遊ぶ空間が減少しています。
時間とは、習い事などで遊ぶ時間が減少しています。
仲間とは、少子化や、上記したように習い事でお友達とすれ違い、遊ぶ仲間が減少しています。また近所のお兄さんお姉さんにあこがれて「あんなことできるようになりたい」と思う機会もありません。例えお友達と遊んでも、公園でゲーム機で遊ぶといったように、結局は単独で遊んでいます。(通信で一緒に遊んで入るようですが…)
これらのような状態であるため、他の人とうまく関わる力が育ちません。他人と関わる機会が少ないため、感情をコントロールする力も育ちません。お兄さんお姉さんにあこがれる機会もないため目標に向かってがんばる力も育ちません。子ども達は遊びの中で身につけていたものが多くありましたが、社会の変化が子ども社会の変化をもたらし、それらが欠如してしまっています。
それでいて、家庭の形も変わり、大家族から核家族への変化や、雇用制度改革が進む日本社会のため女性も社会に出ることが必然となり、家庭で育てることもできません。
そのため、空間があり、時間があり、仲間がいる園及び小学校では遊びを必要としています。今の子ども達には、遊びの中で学ぶ体験をしていくことが大事なのです。
部活動を指導し、幼児体育や運動遊びを研究している立場から、園や小学校の先生たちがとてもがんばって行っている保育・教育が実るように、意図を持った運動遊びを推奨しています。それは「コーディネーション遊び」です。次回説明していきます。

「三つ子の魂百まで」と言いますが、幼児教育の父フレーベル(ドイツ)は「子どもは五歳までにその生涯に学ぶすべてを学び終わる」と言っています。それほど幼少期の教育は重要です。幼児期から非認知的能力に触れ、児童期に定着させていくことは、子どものその後の人生にとっても大切なことであり、日本の教育界の根幹を成すとても大事なことです。
部活動が問題となっていますが、部活動が問題ではないのかもしれません。いじめ問題、体力低下問題など、よく見てみるといろいろなところで非認知的能力に関係する問題が噴出しています。ドミノ倒しで最初の牌を倒すと連鎖していくように、下の年齢の保育・教育を工夫することで、上の年代にも良い影響を出せないかと考えています。是非次回の掲載もご覧ください。

赤堀 達也(あかほり たつや)

旭川市立大学短期大学部 准教授・北海道教育大学旭川校女子バスケットボールヘッドコーチ
これまで幼児・小学生・中学生・高校生・大学生と全年代の体育・スポーツ・部活動指導してきた経験から、子どもの神経に着目したスポーツパフォーマンス向上を図る研究を行う。

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