前回、各地で部活動問題が噴出していることから、幼児期や児童期の保育・教育に非認知的能力を取り入れてみるといいのではということを提言しました。その際に、コーディネーション能力を意識して運動遊びに取り組むと効果が上がりやすいです。そのコーディネーション能力について説明したいと思います。
コーディネーション能力とは、ドイツ発祥で、もともとトップアスリートを育成するために考案されたものです。その能力を育成する方法をコーディネーショントレーニングと呼んでいます。そのトレーニングは神経系に働きかける特性があるため、その行い方を工夫すれば、幼児期や児童期にとても有効な遊びとなります。ちなみにコーディネーション能力とは7つに分類され、
<7つのコーディネーション能力>
- リズム能力
- バランス能力
- 連結能力
- 定位能力
- 識別能力
- 変換能力
- 反応能力
となっています。通常、運動能力を高める際に、例えば、速く走るために足の筋肉を強くする、ボールを遠くに投げるために肩を強くするといったような出力を考えがちですが、この考え方の特徴としては、目をよくする、耳をよくするといったような入力から着目していることがあげられます。
例えば野球の外野の選手は、バットの「カキーン」の音を聞いて、手前なのか頭を越すのか判断できるといいます。またサッカーの名プレイヤーは視野が広く、右を見ながら、左から走りこむ選手にアシストパスを出したりします。このよう高度に情報を入力できるようにするようにトレーニングしていくものがコーディネーショントレーニングです。幼児期・児童期はこのようなことを運動遊びとして行っていくといいです。
それぞれの能力について簡単に説明しましょう。
- リズム能力…音楽に合わせる能力。また見て真似する、イメージしたものを具現化する力も含む。
- バランス能力…バランスを保ち続けたり、崩れたバランスを立て直したりする能力。
- 連結能力…体をタイミングよく無駄なく動かす能力。
- 定位能力…物や人との距離・速さ・時間と関連付けながら動く能力。空間認知能力。
- 識別能力…道具やボールを操る能力。
- 変換能力…予測したり、予想外な出来事に対応したりする能力。
- 反応能力…音や合図に適切に反応する能力。
となっています。幼児期・児童期は、先ほども申したように人生のうちで最も神経が育つ時期であるため、これらの能力を偏ることなく満遍なく行い、後の可能性を広げるように考えてあげるといいです。次回はその実践例を紹介していきたいと思います。
赤堀 達也(あかほり たつや)
旭川市立大学短期大学部 准教授・北海道教育大学旭川校女子バスケットボールヘッドコーチ
これまで幼児・小学生・中学生・高校生・大学生と全年代の体育・スポーツ・部活動指導してきた経験から、子どもの神経に着目したスポーツパフォーマンス向上を図る研究を行う。
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倉敷市立連島南小学校 教諭
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前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭
山形県立米沢東高等学校 教諭 -
近畿大学 語学教育センター 准教授
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大阪市立堀江小学校 主幹教諭
(大阪教育大学大学院 教育学研究科 保健体育 修士課程 2年) -
東京福祉大学 国際交流センター 特任講師
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静岡大学教育学部附属浜松小学校 教諭
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兵庫県立兵庫工業高等学校 学校心理士 教諭
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浜松学院大学 現代コミュニケーション学部 子どもコミュニケーション学科 教授
前浜松学院大学短期大部 幼児教育科 特任講師 -
愛知県公立中学校勤務
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鹿児島市立小山田小学校 教頭
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元静岡大学教育学部特任教授兼附属浜松小学校長
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明石市立鳥羽小学校 教諭
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目黒区立不動小学校 主幹教諭
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