2021.11.03
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子どもの運動ギライにどう対応する?

私、アグネス・チャンがこれまで学んだ教育学の知識や子育ての経験をもとに、学校や家庭教育の悩みについて考える連載エッセイ。遊び場の減少やテレビゲームの登場、コロナ禍での行動制限などにより、子どもの運動不足が心配されています。今回は「子どもの運動ギライにどう対応する?」についてお話します。

子どもの身体と脳が発達するためには、運動が必要です

アメリカでは小児科医学会が、「子どもの成長には、毎日最低1時間の自由な遊びの時間が必要だ」と提案しています。自由に遊ぶ時間が足りないと、子どもの身体や脳の発達が遅れてしまうそうです。身体を動かすことで、脳は複雑に刺激され発達します。家の中で勉強ばかりしていても、賢い子どもにはなれません。激しい運動をする必要はありませんが、身体を動かして外で遊ぶことは習慣づけたほうがいいでしょう。特別なことではなく、当たり前の日課にすることがポイントです。

うちの息子たちは毎日、学校が終わったら必ず1時間、公園に行くようにしていました。いつも同じ公園に行っていると友達も集まるようになって、それがまた楽しくて公園に行く。彼らは何かスポーツをするわけではなく、走り回ったりしていただけですが、それでも十分だと思います。毎日の公園タイムのほかにも、遠くのスーパーまで歩いて買い物に行ったり、階段を上り下りするような遊びを考えたりして、子どもたちが身体を動かすような機会を作っていました。

もしかしたら意外な才能があるかも!?

子どもは親の影響を受けますから、親がスポーツ好きだったらなんの心配もいりません。子どもが小さいときから一緒にキャッチボールをしたり、サッカーボールを追いかけたりして、子どもも自然に運動が好きになるでしょう。残念ながら、我が家は私も夫も文化系タイプで、運動は得意ではありません。そのせいか、子どもたちも運動はそれほど好きではなく、足が速い次男は陸上部に誘われていましたが、走ることが嫌で断っていたくらいです。

走るのは嫌いな息子たちですが、なぜかバドミントンは好きで、よくやっていました。「運動が嫌いだから仕方ない」と諦めていた子どもも、もしかしたら別のスポーツなら楽しいかもしれません。王道のスポーツ以外にもフェンシングやスケートボード、ボルダリングなど、今までやったことがないようなことに挑戦してみたら好きになるかもしれません。流行りのスポーツなら子どもも興味を持ちやすく、意外に上手にできて自信が付くこともあります。

スポーツにこだわらなくても、和太鼓やダンスだって身体を動かして全身が鍛えられます。うちは、家族で釣りによく行っていました。釣りはじっとして魚がかかるのを待っている時間が長いのでほとんど動かないように思うかもしれせんが、それでも釣り場を探して山を歩いたり、釣り竿を振り上げたりして、家で椅子に座っているよりはずっと運動になります。

運動が大切だからと、子どもが嫌がっていることを無理やりさせてもあまりいい結果にはならないと思います。「嫌いなことでも乗り越えたら好きなる」っていう意見もありますけど、子どもにもよりますよね。これなら楽しめそうっていうことが見つかれば、運動が好きになって長く続けることができます。うちの子たちも、今でも釣りが上手ですよ!

子どものエネルギーは外で遊んで発散させましょう

子どもはエネルギーにあふれた存在です。家の中ばかりで過ごしていては、エネルギーが内側にこもってイライラしたり、爆発したりしてしまいます。定期的に外に連れ出して、発散させてあげたいですね。私は子どもが小さかった頃はいつも遠くの公園までバスに乗って連れて行っていました。自然の中で、思いっきり遊んでエネルギーを発散すれば、親も子もすっきりします。活発ではない子どもの場合、初めは何をしたらいいか分からず戸惑うかもしれませんが、広い場所で過ごしていると勝手に身体が動き出すものです。慣れるまでは、ちょっとしたゲームを用意してあげるのもいいですね。公園のあちこちにこっそり何かを隠しておいて、子どもに探してもらう宝探しゲームも楽しいですよ。

子どもが少し大きくなったら、「夕焼けを見に行こう」「海へ散歩しよう」と誘ったり、「ここから○○まで歩いていけるかな?」「遠くの喫茶店までウォーキングしない?」と面白そうなプロジェクトを企画したりするのもいいですね。そうやって外に連れ出せば、身体を動かすだけではなく、結果的にゲームやインターネットをするような時間も減らすことができます。

身体を動かすことは大人にとっても大切です。私も運動不足になりがちなので、意識的に歩くようにしています。今は1日1万歩を目標に頑張っていますよ。以前なら車で行っていたような距離も、今では歩くことが普通になりました。子どもの頃から身体を動かすことを日課にしていれば、たとえ運動が嫌いでも習慣として身に付きます。運動が苦手だった息子たちも、大きくなってからはハイキングやランニングなど、自分にあった方法で身体を鍛えているようです。

子どもの身体と脳を成長させるためには、食べ物と運動の両輪で進めていかないといけません。良い食べ物を食べて、身体を動かす習慣をつけること。どちらも親が子どものためにしてあげられることですから、しっかりと考えたいですね。

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

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