2018.11.15
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共生社会に向けた情報共有・・・特別支援教育からの発信!

発達障害、知的障害、肢体不自由、病弱、盲、ろう・・・・特別支援教育に携わる私達は当たり前のことであっても、まだまだ世間では知られていないことの方が多いのかもしれません。私達が知る「子供達の素晴らしさ」をもっと世に発信することで、世の中は少しずつ動き出すと思います。

京都教育大学附属特別支援学校 特別支援教育士・臨床発達心理士・特別支援ICT研究会 中川 宣子

盲ろうの子ども達の情報共有

国立特別支援教育総合研究所で受講した研修の中に「知的障害を併せ有する盲ろうの子供の指導(星祐子先生)」の講義がありました。
盲ろうとは、視覚と聴覚の両方に障害がある状態です。
講義では早速、アイマスクと耳栓が配られ、疑似体験が始まりました。
皆さんも想像してみてください。
まさに音も光もほとんどない世界。
周囲にある机や椅子の存在もわかりませんし、傍に誰がいるのかもわかりません。
体験はほんの僅かな時間でしたが、ただただ「不安」でしかありませんでした。
私達は、周りにある大量で広範囲の鮮明な情報をキャッチすることで「安心」を得ているのです。
講義では、盲ろうの子供達が抱える困難性が示されました。
・情報を得ることの難しさ
・認識の難しさ
・コミュニケーションをとることの難しさ
・移動することの難しさ
ここでいう「情報を得ることの難しさ」とは・・・
盲ろうの子供が得られる情報は直接触れての情報か、保有する視覚と聴覚で把握できる限られた範囲にある不鮮明な情報に限られます。
これらの情報は、一度に取り入れられる情報量が極めて少なく、複数の情報の同時処理が困難なため、情報相互の関連性・因果関係・全体像の把握が非常に難しいのです。
偶発的な情報はなく、提供される情報の有無で決まります。
ですから、盲ろうの子供達の学習は、人の存在こそが外の世界に繋がる窓口となります。
実体験を積み上げていくことで、概念を形成したり、言語を理解したりしていきます。
私達は、子供にとって必要な情報を、わかりやすく一貫して伝える工夫が必要になります。

彼らにとっての「情報共有」は、言葉の共有であり、概念・因果関係の共有であり、活動イメージの共有であり、感情の共有である・・・・ことがわかります。
これまで教育支援連携における「情報共有」の大切さについて何度も唱えてきましたが、あらためて「情報共有」について考えさせられました。

特別支援教育からの情報発信!

特別支援教育については、ニュースや記事で随分取り上げられるようになりましたが、「発達障害って何?」「特別支援学校ってどこにあるの?何をしているの?」・・・と、世間ではまだまだ知られていない、特別支援教育の情報が共有されていない現状があります。
子供達一人一人の素晴らしさを知っている私達こそが、世に向けて子供たちの情報を発信し、互いに理解、共有し合えるようにしていくことで、子供達の自立と社会参画を実現する共生社会に繋がるのだと思います。
共生社会は、子供達も大人達も、互いに情報共有し合うところから始まるのかもしれません。
これからも「学びの場.com」を通じて、どんどん特別支援教育からの情報発信をしていきますよー!

写真1 久里浜の日の出
※久里浜の地でお世話になりご指導いただいた多くの先生方、職員の皆様、地域の皆様へのご恩返しは、子供達への教育支援に向けて努力してまいります。誠に有難うございました!大感謝!(^^)

中川 宣子(なかがわ のりこ)

京都教育大学附属特別支援学校 特別支援教育士・臨床発達心理士・特別支援ICT研究
「特別支援教育とは、子ども達の特別な才能を学校・家庭・地域の連携により支え、教え、育てること」と考えています。日々の教育実践を、情報発信・交流し合い、共に子ども達の成長・発達に役立てていきましょう!

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