想定外はあり得ない ~仙台市立荒浜小学校に学ぶ~(第2回)
三陸沿岸に行って、津波の被害のすごさと、
復興する姿を目たかったのですが、時間が限られていました。
なんとか、仙台の震災遺構である旧荒浜小学校に行くことができました。
荒浜小学校には、当時320人の児童・教職員・地域住民の方が避難されていました。
翌日までかかりながらも、全員救出されたということです。
実際の場所を見ておくこと、当時の証言を聴いておくこと。
熊本地震の際に東北の方からもたくさんのアドバイスをいただきました。
その中には、いまだに仮設住宅にお住まいの方もおられました。
今後の防災教育に役立てるように
被害を受けた様子から学んだことをまとめておこうと思います。
熊本市立龍田小学校 教諭 笹原 信二
仙台駅から地下鉄で13分 せんだい3・11メモリアル交流館
JR仙台駅の賑わいから地下鉄で13分。荒井駅に着きました。
荒井駅は、津波の大きな被害をうけた仙台市東部の沿岸地域の玄関口。
構内に「せんだい3.11メモリアル交流館」がありました。
震災をきっかけに、過去と向き合いながらこれからの未来を考えるコミュニケーションの場として作られたそうです
参加型の展示がありました。付箋紙で思い出を貼っていかれるものです。
一枚一枚に心を込めて。
当時の様子、現在の様子が展示されていました。
説明されている方が涙ぐみながら、避難生活を振り返られていました。
3月12日に荒浜小学校から避難されている写真がありました。
言葉がでませんでした。
今からこの場所に行くのだと、どんな様子だったのだろうと、思いをめぐらせました。
2階まできた津波とがれき
津波が2階まできたことを示す表示が有り、
ベランダの鉄の柵が壊されていました。
校舎内に入っていくと、恐ろしい光景がとびこんできました。
ものすごいがれきが押し寄せてきた写真が残されていました。
思い出も、何もかもを壊していく津波。
3・11荒浜小学校の27時間
「3・11荒浜小学校の27時間」の映像を見ました。
救出の様子や、校長先生・教頭先生・町内会長などの証言がありました。
印象に残った言葉は「この世のものとは思えない。」
自分や地域の家、慣れ親しんだ建物や風景、
目の前で流されていく姿を見るのは、本当に辛かったと思います。
救出までの27時間。
実際にはもっと長い時間に感じられたことでしょう。
ラジオだけしか情報源はない、
そのラジオも同じ情報を繰り返すだけ、
何度同じ情報を聴いたか、この地域の情報を知りたい、
その言葉の重さが、熊本地震を思い出し、
非常時に情報を正しく入手することの難しさを感じました。
全員が救出されたこと、関係された方々の力に感激します。
しかし、途中下校した児童1人とそのお母さん、避難住民を届けた消防団員1人などこの地域の住民2200人のうち190人余りの方が亡くなったそうです。
(荒浜地区で唯一残った建物が荒浜小学校の校舎)
この話をされているときの校長先生の目には光るものがありました。
傷つけられた体育館の時計は、地震発生の時刻ではなく、津波到達の時刻でとまっていました。
ありがとう荒浜小学校
「ありがとう 荒浜小学校」
閉校されたときに在校生が残した言葉です。
「さようなら」でも「またね」でもなく「ありがとう」。
震災当時1年生だった児童が卒業する年に
142年の歴史に幕を閉じたのです。
ニュースで見た「あらはまカルタ」も展示されていました。
「あ」は「荒浜小学校 百四十二年 ありがとう」
「へ」は「ヘリコプター みんなを助けてくれてありがとう」
「ぼ」は「ぼくたちを支えてくれたのは日本中のみなさん 世界中のみなさん」。
風化させてはいけない
屋上から見る荒浜地区は、残された松の木、大規模な更地、
まだまだ続く工事など、当時の様子が残る光景と
新たな姿を目指す光景がいりまじっていました。
7年以上経った今でもこんな姿なのか?と思いました。
それは、想像を絶するスケール、被害、津波のすごさ。。。
表しているのですね。
津波歴史の研究者である羽鳥徳太郎氏が
1993年の読売新聞の記事で書かれていた言葉を引用します。
「いつ起こるかわからない自然災害の備えには、
まず、先人の尊い犠牲が刻まれた郷土の歴史を知り、
教訓を引き出し、これを伝承することだ」
過去の歴史、経験、教訓を学び、そして風化させないように
伝承していくこと、私たちに求められる使命なのだと改めて思いました。
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笹原 信二(ささはら しんじ)
熊本市立龍田小学校 教諭
37年の教師人生を終えたが、もう少し学びたく再任用の道を選択。過去の経験を生かしつつ、新しいことにもチャレンジしていきたい。
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