ICTを利活用した教育支援連携モデルの教育的効果Ⅳ<災害時の教育支援連携>
地震、豪雨、猛暑・・・天災が続いています。災害時に、あなたはどうやって、クラスの子供達の情報を得て、教育支援をすることができるでしょうか?
京都教育大学附属特別支援学校 特別支援教育士・臨床発達心理士・特別支援ICT研究会 中川 宣子
災害時の情報共有、そして教育支援
災害時に、あなたはどうやって、クラスの子供達の情報を得て、教育支援をすることができるでしょうか?
先日の大阪の地震の時、私は通勤途中の電車の中でした。
また、先日の豪雨の時、川の氾濫や土砂災害の警報が出て、学校は2日間、休校でした。
災害時は、子供達やその家族だけでなく、学校も教師も被災しています。
その中で、私達教師は、また学校は、子供達の情報をどのように把握し、何を教育支援できるのでしょうか?
「○○さんは今、どうしているだろうか?」
災害時に私達が気になるのは、「○○さんは今、どうしているだろうか?」ということです。
家族の人と一緒にいるだろうか?
家で何をしているだろうか?
不安な思いをしていないだろうか?
日頃、体調を崩して欠席した子供には、電話をかけたり、家庭訪問をしたりして、その様子を伺うことができます。
しかし災害時には、教師も学校も被災しているため、家庭訪問するにも電車は運休、道路は通行止め、電話さえも通じにくい状態です。
災害時、子供達への直接的な支援には、限界があります。
つまり、被災した場合、子供達への支援は、その場で、そこに居るもので、何とかしなければなりません。
災害は不安の塊
子供達にとって、災害は不安の塊でしかありません。
地震が起きた瞬間、大きな揺れが続き、電車が止まりました。
「怖い!」
「何が起こったの?」
「ここからどうしたらいいの?」
何日も豪雨が続きました。
「いつになったら外に出られるの?」
「学校には行かないの?」
「電気はいつになったらつくの?」
「避難場所って何?どこに行くの?」
「ここはどこ?こんな所で寝られない。トイレもできない。」
災害時の「デジタル連絡帳アプリ」の利活用
今回の地震、或いは豪雨の時、電話よりもアプリケーションの方がよく繋がりました。
「デジタル連絡帳アプリ」が利活用できたのです。
子供(保護者)と学校が繋がっていれば、災害時にも子供の情報を得ることができ、その情報を共有し、より最適な教育支援を選択することができます。
子供(保護者)と学校が繋がっていれば、連携して、日頃の教育支援を継続することができます。
例えば、「お家の様子はどうですか?○○さんはどうしていますか?」と発信すれば、
「大丈夫です。家で本を読んで過ごしています。」
「外に出たがって靴を履いて泣いています。」
「学校に行くと言って、カバンを背負っています。」
と返事が届き、子供の現状や家庭の困りごとの情報を得て、共有することができます。
そして、具体的な支援を、教師・学校から家庭・子供に発信することができます。
「家の方、大丈夫でよかったです。引き続き様子を見てください。また何か困ったことがあれば連絡ください。」
「しばらく外に出られないので、○○ちゃんもお母さんも大変ですね。最近学校では、パズルに興味を示していましたよ。段ボールなど少し厚めの紙に一緒に絵を描いて、それを切ってパズルごっこしてみてはどうでしょうか ?」
「早く学校で会いたいですね。しかしこれも○○さんにとって勉強ですね。日頃学校から帰宅した時のように、カバンからコップやタオルを出して、いつものところにカバンを片付けてみてください。一度部屋着に着替えてみるのもいいかもしれません。私からのメッセージビデオを送ります。○○さんと一緒に見てください。」
他にも、避難所での具体的な困りごとを共有でき、具体的な支援を伝え共有できます。
マットの敷き方一つでも、ヒントやアイデアが得られるかもしれません。
食事やトイレも、校外学習の積み重ねで得られた情報が役立つかもしれません。
映像から教師の声を聞き、顔を見ることができれば、それだけで少し安心できるかもしれません。
非常時には、日頃の教育支援情報が役立ちます。
非常時に、日常の生活を少しでも取り戻すことができれば、不安な中に、僅かな「安心」が得られます。
「安心」があれば、次に進むことができます。
「デジタル連絡帳アプリ」はこのように、災害時にも役立ち、教育支援連携が継続できるツールであることがわかりました。
子供と保護者と教師と学校が、非常時にもリアルタイムに繋がり、離れていても教育支援連携を続けることができました。
災害時、これまで築いてきた家庭と学校間の教育支援連携を継続することが、子供達にとって必要です!
夏休みも教育支援連携
これから夏休みに入ります。
今年は猛暑続く中、子供達の体調管理も心配ですね。
夏休みの間も、日頃の教育支援連携を継続し、そして9月からの新学期に繋がるようにしたいですね。
今回はICTを利活用した教育支援連携モデルの教育的効果Ⅳ<災害時の教育支援連携>をお伝えしました。
次回、教育的効果Ⅴもお楽しみに!
暑い今夏、皆さんも体調に気をつけて、頭も身体も冷やしながら、明るく強く楽しく、子供達の自立と社会参画のために、教育支援連携を継続していきましょう!(^^)!

中川 宣子(なかがわ のりこ)
京都教育大学附属特別支援学校 特別支援教育士・臨床発達心理士・特別支援ICT研究会
「特別支援教育とは、子ども達の特別な才能を学校・家庭・地域の連携により支え、教え、育てること」と考えています。日々の教育実践を、情報発信・交流し合い、共に子ども達の成長・発達に役立てていきましょう!
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