2018.07.18
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やめる勇気

近年「ワークライフバランス」だとか「働き方改革」といった言葉をよく耳にするようになりました。先日は、国会でも働き方改革関連法案が審議され、可決・成立しました。こうした流れは学校も例外ではないようで、タイムカード導入や部活の休養日設定、学校閉庁日の導入など、様々な取り組みが進められているようです。


 一方、全体としての枠組みや法律が変わっても、個人に課せられる仕事内容や求められる水準が変わらなければ、なかなか難しい部分もあります。こうした動きの弊害として、勤務時間の過少申告や持ち帰り業務の増加といった話題を目にすることもあります。


 生徒のために一生懸命に働くことは悪いことではないと思いますが、生徒の前で心身ともに健康な姿を見せることもまた重要だと思います。今回は、こうした内容について考えたことを書いてみました。

前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭  山形県立米沢東高等学校 教諭 高橋 英路

教員ってクリエイティブ

公務員と聞いて、「クリエイティブな仕事」というイメージを持つ人は少ないかもしれません。でも、教員ってけっこうクリエイティブな仕事も多いと思います。学校の状況によっては、やらなければいけないことが厳格に決まっていて個人の裁量が入り込む余地がないかもしれませんが・・・。例えば、教室の掲示物のレイアウトをどうするか? SHRの内容をどうするか? 保護者会の内容をどうするか? そもそも保護者会をやるか?・・・

 クラス担任として、教科担任として、部顧問として、それぞれが独自に考えてやっている取り組みも多いのではないでしょうか?そういったところに魅力を感じて教員を目指す人もいるかと思います。ただ、それゆえに時間を忘れて「これも生徒のためになるな!」「もっと良くしよう!」と、どんどん業務が増えていくのも否定できません。また、どんなに時間を費やしても、ちょっとした生徒の変容など、成果が表れてくると、ますます力を入れたくなるのも事実です。

やめてみる

前述のように一生懸命考えて成果が見られた取り組みは、個人としても学校としても次年度以降に継承されていくと思います。しかし、続いてきた取り組みが廃止されたり、縮小されることは少ないのではないでしょうか?それは当然で、どの取り組みも生徒のために考えられたものですし、一定の成果があったから続いているわけです。

 しかし、学校全体として続いていることを個人の判断でやめることは難しいし全体のバランスを欠く可能性もありますが、個人として続けてきたことをやめてみるというのはアリだなぁと思います。「やめたことで悪影響があったらどうしよう・・・」と考えてしまうので、ちょっとしたことでもやめるには勇気がいります。でも、パンクするくらいいろんなことを考えて実践している人であれば、1つの取り組みをやめた(スクラップ)ことで生まれた時間を活用し、もう少し負担の少ない新たな取り組みを考える(&ビルド)ことは、きっとできると思います。

 私自身、やめる勇気がなかなかなく、現在の勤務校でやり始めたことを毎年のように積み重ねてきていたところがありました。まさに、ビルド&ビルド・・・といった感じでしょうか。今年度に入って、現在の学校で2周目の担任になったことで受け持つ生徒も変わりました。それを機に、「以前の生徒に合っていたから、今度の生徒にも合うとは限らない!」と割り切って、いろんなことを思い切ってやめてみました。最初は不安もあったのですが、時間的な余裕が生まれたと同時に、精神的な余裕も生まれ、目一杯やっていた(と思い込んでいた?)時期よりも、生徒に寄り添ってあげられるようになった気がします。

 もちろん、自分が楽するためだけにすべてをやめるなんて考え方はどうかと思います。が、生徒のために何かしてあげたい!という想いが強い人ほど、何かをやめてみると意外と良い方向に進むのかもしれません。

 私もまだまだやめる勇気はないのですが、当たり前のようにやっている〇〇をやめてみた!という話があれば、ぜひいろいろと教えてください。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

高橋 英路(たかはし ひでみち)

前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭
山形県立米沢東高等学校 教諭


クラス担任と、地歴科で専門の地理を中心に授業を担当。生徒達の「主体的・対話的で深い学び」が実現できるよう、p4c(philosophy for children)やKP(紙芝居プレゼンテーション)法などの手法も取り入れながら日々の授業に取り組んでいます。

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