児童の交通事故について考えたい
平成30年3月20日に警察庁から「児童・生徒の交通事故」という資料が公表されました。
そこには、警察庁が把握している日本全国で起こった交通事故などについて詳細に整理されたものが示されています。
それらの資料から分かること、学校ができることなどを話題にしたいと思います。
帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師 鈴木 邦明
「小1は小6の8倍、交通事故で亡くなっている」
警察庁の統計によると、この5年間で、小学生が歩いていて交通事故でなくなったものは84人で、そのうち小学校1年生が32人(約4割)なのだそうです。1年生に引き続き2年生も多くなっています。1年生の数値は6年生のものの8倍に当たります。
その理由は明白です。幼稚園、保育園などにおいては、通園に関し、ほとんどの場合、大人が付き添っています。園まで親などが連れて行く場合もありますし、園バスが自宅の近所まで迎えに来てくれる場合もあります。子どもだけで通園するということはほとんど無いと思われます。
それが、小学校入学後には、子ども達だけで通学しなければならないケースが増えて来ます。投稿時間は、集団登校にせよ、個人登校にせよ、同じ時間に登校することが多いです。しかし、下校時間は、それぞれの学年で違うことが多いです。特に1年生だけ早く帰ることも多くあります。
道などを一人で歩くことに慣れていない1年生が他の学年とは別の時間帯で下校する時間帯がとても危険になります。統計でも下校時(15時から17時)の事故が多いことが示されています。
そういったことが分かっているのですから、小学校入学前に行われる説明会などでこれまで以上にしっかりと保護者に伝えていくことが大事なのだと思います。そうすることで、入学前に保護者が子どもと通学に関して練習することもできます。学区内で特に危険な場所というものがあります。そういった箇所が事前に分かっていれば、保護者ができることも多くなります。
「情報を適切に共有したい」
これまで書いたように子どもが交通事故に遭いやすい状況はある程度、統計的に分かっています。上で示した「1年生は6年生の8倍、死亡事故が多い」「15時から17時に事故が多い」の他にも「交差点で死亡事故が多い」などがあります。
こういった統計をもっと学校での教育に適切に用いることができたら、色々なトラブルが減っていくのではと思います。私は約1年前まで小学校の現場にいました。その後、大学に移ったのですが、そのことで、公的機関が出している統計などの資料に触れることが増えました。今回紹介した警察庁の資料もそういった中で読んだものです。そういったものの中には今回のもののように現場にとっては非常に有益であるものも含まれています。
しかし、そういったものが適切に現場まで届いているとは言えないのが現実です。多分、資料などは学校まで届いているのだとは思いますが、それぞれの教員がきちんと理解できるまで、または組織として取り組みが形になるまではなっていないと思います。
私は小学校の現場にいた頃、こういった資料が回覧で回って来たときに、さっと目を通し、チェックだけして次の人に回していました。文科省、県教委、市教委、その他機関から、非常にたくさん送られてくるこういった資料に関し、一つ一つ丁寧に読んでいては時間がなくなってしまいます。自分にあまり関係がないと思える資料は表紙をさっと見ただけだったと思います。
自分がやっていたように対応している先生もたくさんいると思います。そうでもしないと限られた時間の中で本当にしたい仕事ができなくなってしまいます。こういった状況においては、適切にフィルターを掛けられる人の存在がとても重要になります。学校においては、教頭や副校長の立場の人が、その学校において必要であるのか、そうでないのかを適切に判断するということです。同様のことが、市区町村や都道府県の教育委員会にも言えると思います。
「終わりに」
登下校中の交通事故などは事故にあった子どもも、親も、教員も、自動車などの運転手も皆が不幸になります。
今回、話題にした資料などを適切に使う形でそういった悲しい事故が少なくなっていくことを願います。鈴木 邦明(すずき くにあき)
帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師
神奈川県、埼玉県において公立小学校の教員を22年間務め、2017年4月から小田原短大保育学科特任講師、2018年4月から現職。子どもの心と体の健康をテーマに研究を進めている。
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