2023.09.03
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保護者から見た学校 ―熱中症の対応について思うこと―(後編)

我が家には中学生の子どもがいます。数年前から「これ今の保護者の立場としてどう思いますか?」と行事の計画や配布プリントについて,職場で意見を求められることが増えました。私の考えていることが保護者にとっても学校にとっても,役に立つことがあるのかもと思うようになりました。保護者から見た学校について,また一教員として前向きにあくまで前向きに!考えてみたいと思います。 この連載は私の個人的な意見であることと合わせて,今までの勤務校や教職員の方たちへの批判,我が子の通う学校や担任への苦情では決してないことをご理解いただけると幸いです。 熱中症については、子どもたちの意識をアップデートするとともに、保護者と教員の意識もアップデートしないといけません。

愛知県公立中学校勤務 都築 準子

保護者の意識をアップデートしよう

保護者は、毎日子どもの体調をしっかり把握し、今日は部活に出して大丈夫だろうかと考えなくてはなりません。体調がよくなさそうだと思ったら、きちんと子どもと話をして、行かせない判断をしてほしいです。ただ、子どもが行きたいということもあります…親としては悩みますよね…我が子も予想最高気温で納得してくれる日もありますが、「今日は行く」と言う日もあります…

前回お話しした通り、子どもが「何かいつもと違う、変だなと思ったら、すぐ顧問に伝えて休む・帰る・連絡してもらうなどの行動ができる」ならすこしは安心できるのではないでしょうか。行かせるなら、まずそれが前提です。
朝の体調を把握せず、調子が悪くなったのは学校のせいだというのもなかなか難しい…。保護者もまた判断を学校任せにしてはいけないと思うのです。子どもたちが自分で判断し、保護者も考え、行かない選択をするところが多ければ、正直部活はできませんしね。

教師の意識をアップデートしよう

先日の部活の大会の前に「自分も県大会で熱中症になって棄権し、悔しい思いをした。だから体調管理をしっかりしていこう」という話が顧問からあったらしい。

ん?ちょっと待て!なにか違和感があるぞ。なんだろう?

県大会に出るような選手です。一生懸命練習し、体調も整え、万全の備えをして試合に臨んだのではないだろうかと推察します。緊張して前日眠れなかったとか、無理に練習を連日長時間頑張って疲れを残してしまったとか自分の反省点があったのかもしれません。
が、それを子どもたちに悪気なく、「君たちも気をつけなよ」と伝えるということは、ひねくれた解釈かもしれませんが、少なからず「熱中症になったのは自分のせい」と思っている、ということです。「熱中症になったのは体調管理ができなかった自分の責任だ」とその先生は思っているのではないかと思うのです。

なぜ、それがだめなのか。まず、気候が本人ではどうしようもできないほど過酷だったのではないかと考えます。私から言わせれば、当時の顧問がきちんと選手の体調を管理しなかったことに大きく責任があると思います。

中高生です。何のための顧問なんでしょうか。その子がどういう子(つらいことを言い出せる子なのか)で、体力的にどこまでやれるのかなどは、毎日見ていればある程度分かります。県大会に出場する生徒がたくさんいて1人1人見切れなかったのでしょうか。いや、だとしたら顧問の人数を増やすべきです。

熱中症は生徒の体調管理の甘さもあったかもしれないけれど、部活の活動中に起こった場合、やはり顧問の認識の甘さがあると思うのです。見た目で朝からなんか調子よくなさそうだな、とか、分からなければ前日の様子をそれとなく聞いてみるとかするべきです。もちろん、家庭からは元気に送り出してくれているという前提なのですが、そこは一旦疑ってみる。子どもの命になにかあった場合「『気を付けてね』って言ったよね?」では通用しない責任が伴うのです。

子どもが「先生が気を付けてねと言ったのに、自分は体調が悪くなってしまった。申しわけない」と思って言い出せない可能性もあります。
子どもたちには「熱中症は準備していたって誰だってなることがある」「体調が悪かったら大会だって我慢しないでいい」「そんなことで誰も責めたりしないし、先生は君たちを守りたい」ときちんと伝えてほしいです。子どもたちには「センセイも熱中症になったらしい」くらいの情報しか入っていません…。

教員が判断しやすいマニュアルを作ろう

大会でも子どもは炎天下で応援させたり、少ない顧問での引率をしていたり、見ているだけでハラハラしてしまいます。子どもたちを預かっているという意識が低い人がいます。
ただ、一顧問(ただの一教員)が判断できることではないものもありますし、組織でしっかりとした対応マニュアル等を作成し、遵守することが大切です。(各部活で暑さ指数WBGTをいつどこで測るのか、大会の引率の教師について子どもが安全に活動できるのに必要な人数、日陰を作るなど場所の確保についてなど…)
そしてできれば保護者に教えていただけるとよいです。みんなの目でみて守りましょう。監視という意味ではなく。

熱中症でつらい思いをする人をなくしたい…

どこの部活でも連日「誰かが吐いた」「体調不良で帰った」「先生が大丈夫?って言ってた」「うなだれてた子がいた」「日陰で休んでた」などと聞きます…熱中症なのか体調がよくならず休んでいる子もいます。本人もつらいですし、保護者も心配だろうと思うとこちらもつらいです。

文科省の「学校における熱中症対策ガイドライン作成の手引き」の一節に「気兼ねなく体調不良を言い出せる、相互に体調を気遣える環境・文化を醸成する」とありますが、それに尽きます。子ども・保護者・教員の意識が変わり、それが文化(当たり前)になれば、お互いに確認し合って安全に活動に取り組めます。思いの行き違いが起きて、いろいろなモヤモヤが増えたり、お互いが不幸な争いになったりする事態にもなりにくいのではと思います。ただの理想でしょうか…
部活を軽視しているわけではないのですが、子どもや教員の命を軽視している対応が不安なのです。今回、中学生の熱中症死亡を受けて、部活の在り方や夏の大会の是非を問う声が大きくなっています。みんなの意識が大きく変わることを望んでいますし、もちろん自分からも声を上げていきたいと思います。

都築 準子(つづき じゅんこ)

愛知県公立中学校勤務


仲間とかかわり合いながら主体的・協同的に学ぶ児童の育成を研究・実践しています。18年にわたる小学校勤務において,協同学習を取り入れた,全員が参加する授業作りを行ってきました。まずは,読んでくださる方に寄り添い,思いを共有していただけるよう心がけます。

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