てんやわんやの日々~「傾聴」を考える~
前回から2週間、あっと言う間に日が過ぎています。「受容―共感―自己一致」をお試し頂く機会はあったでしょうか。
後で振り返って「ここがうまくできたから、こういう言葉が引き出せた。」、「あの表情を見られてよかった。次に繋がるだろうな。」など、出来たことを自分で評価をしていくと自信に繋がりますね。
「あの時、もう少し違う質問の仕方があったよね。どう言えばよかったかな。」、「わかったつもりで言ったら、黙っちゃった...。」このような反省もあるでしょうか。
相手のあることは、なかなか思うようにまかせない時もありますが、常に学生の話を聴くという意識を持つと、後で後悔をする回数も減っていくでしょう。実際にできている部分に自信を持ち、自己効力感を高めながら、経験を積み上げていきたいものです。
さて、今回は、いくつかの前回の追記の後、私の学生たちとのにぎやかな日常をお読み頂き、最後に「傾聴」について考えたいと思います。
東京福祉大学 国際交流センター 特任講師 赤羽根 和恵
第5回の追記―事例の中で書き残したこと―
前回書いた事例の中で、書き落したことがあります。私が「明朝、入管に電話をして聞いてね。」と言った際、学生は朝一で直接入管に聞きに行きました。そこを「行動力があるね。電話より行った方がいいよね。」と承認をしています。これが大事。それを書き落としており、読み返して慌てました。
修正や追記は出来ないとのことなので、こちらに書かせていただきます。
勤務時間外の対応
また、「夜に電話」と書いていますが、21時頃に電話があり、帰宅途中で話しをしました。私は電話番号を教えていますが、もちろん電話番号やメールアドレスを教えない先生もおり、それは個人の判断で良し悪しではありません。以前、別の職場で学生の母親から延々を電話とメールが来たことがあり、多様な方がいるので職場の電話番号以外は、教えない方が良いのかもしれません。その判断は、また別の機会に譲り、現在の職場での留学生への伝え方を書きます。
初回のクラスミーティングで電話番号を教え、原則、ビジネスアワーの常識の範囲という考えを伝えます。その上で、「でもみなさんはアルバイトを夜中から朝まで行って明け方に帰ってくる人もいます。メッセージを入れておいてくれれば、朝それを見て返事をします。急に何か困ったことがある時は、夜中でもいいので電話をください。もし眠っていても、朝、見たら必ず電話をします。」それを聞いて「大丈夫!大丈夫!」と、学生たちは笑っていました。しかし慣れてくると、夜遅くにLINEグループに「明日、何時からですか。」と質問が入り、他の学生が、「先生は休みです。ちゃんとしてください。明日は13時からですよ。」と、配慮と注意、返事を答えています。
幾度か繰り返されていたら、ジョークで「わからない人はお休みです。」と返答している学生がおり、質問をした学生が心配になったのでしょう。私に直接「先生、明日は休みですか?」と聞いてきました。何か起きたかとLINEを見て、「日本語のジョークでは、わからないこともあるから、フォローもしてね。」と伝えました。
後日、過労で倒れて救急車に乗ったことと、貴重品を紛失して再発行をした報告があり、どちらも大事に至らず良かったと安堵しました。
その場合、状況や気持ちをしっかり聴き、大変な中でちゃんと出来たことを労いました。また、心配する気持ちを伝え、かけがえのない存在であることをしっかり伝えていきます。次回、同じことのないよう、健康に留意するように、うっかり紛失をしないように、それぞれの抑止になると願いながら…。
定期的にホームルームの時間がないことや、業務連絡が多いのでこちらの隙間時間で連絡をするためには、働き方や個人情報うんぬんより、モバイルの利用に軍配が上がります。
最近は、落ち着いてきたので、休日や夜遅くにはメールやLINEは見ずに済んでいます。個人的に聞いてくる学生もいますが、幸い急を要することではありません。そこで、自分の生活と時間を持つようにして、メンタルヘルスケアを大切にしています。どこかで心配を手放さないと、長くこの仕事は出来ないと思っています。
「傾聴」
カウンセリングにはいろいろな方法がありますが、すべての基本として「傾聴」を行います。これは、産業カウンセラーもキャリア・コンサルタント、コーチングも同様で、「聴き手」が「話し手」のあるがままに受け入れ、「受容」し、あたかも自分の気持ちのように「共感」して聴いていくことで、安心して話が出来るようになります。
話している時に、あいづちやうなずき、言った言葉を繰り返えされると、「わかってもらってる」と、感じますよね。
その上で、要約を入れると、話し手の気付きが促され、最終的には問題解決に繋がるような方向になります。
「傾聴」とは、ただ話を聞いて感情を受け止めるのではなく、問題解決を促す聴き方と言えます。そして話している内容だけでなく、様子をよく観察しながら、言葉以外のノンバーバルな情報も読みとり、本人が抱えている問題と、その問題の本質が何かを考えながら丁寧に聴いていきましょう。
面談の時間を区切ることも必要です。業務時間には限りがありますし、時間を決めずに長時間かけていても集中して聴くには限界もあります。自分の集中出来る時間を知り、まずは20分、30分と定めることです。途中で区切っても構いません。その際には、次回の約束をして、それまでに出来る小さな目標を立ててもらうと良いとされています。それでも長くなる場合は、「今日は、特別にあと10分だけ」として、終わりを決めておくようにします。
終わりに
相手のあることはなかなか難しいことも多く、うまくいかない時もあります。自分のコンディションも大きく左右しますし、時間がない場合は、つい後回しにしたくなります。一瞬でもそう思うと、気を付けていても態度に出てしまうこともあるでしょう。そこでまず、緊急性の確認をして、急がないことには、「今、時間がないけど、後でちゃんと聴かせて。」と伝えて、代わりの日時を約束します。すぐその日時を決められない場合は、そう伝えて必ずフォローをすればよいでしょう。
失敗をしたら無理に取り繕うよりも、その場で詫びて修正をすればいいし、それが可能なのは、日々誠実に対応している姿を感じ取ってもらっているかどうかではないでしょうか。
現在の職場では、学生たちは優秀な先生が欲しいのではなく、共感をして一緒に考えてくれる人間味のある先生を求めているように感じています。
対象となる学生の属性が異なっても、共通するところがあるのではないかと考えています。
今週、第2回目の個人面談があります。次回、またご報告したいと存じます。
赤羽根 和恵(あかばね かずえ)
東京福祉大学 国際交流センター 特任講師
経営学・経済学が専門ですが、留学生クラスの担任も兼務しています。これまでの企業経験、キャリアコンサルタント、産業カウンセラーとしての視点も生かせるよう心掛けています。
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