ポジティブな声がけを
新年度が始まり、ある程度の緊張感を持って過ごす4・5月が過ぎ、少しずつ「乱れ」が表面化する時期になりました。ただ、それは生徒たちが悪くなっているということではなく、緊張感の奥に隠れていた本来の性質が少しずつ見えてきたというだけだと思います。なので、私たち教員としては、ここからが頑張りどころなのだと思います。
4・5月にできていたものができなくなったり、4・5月に感じなかった問題が出てきたりすると、焦ってしまうのも事実です。「魔の6月」といった言葉も聞かれます・・・。また、この時期に問題が表面化しやすいのは新入生であり、上級生と比べることで余計に焦ってしまうかもしれません。この6月、皆さんは、どんな姿勢で臨んでいますか??
前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭 山形県立米沢東高等学校 教諭 高橋 英路
焦りは禁物
(1)上級生と比較
上級生と比較すると、1年生はできないことが多いです。が、それは当たり前のことで、何かあるたびに「1年生は・・・」などと言っていたらキリがありません。上級生だって、1・2年前は1年生で、同じように課題を抱えていたはずです。ただし、その課題の現れ方にはイロイロなケースがあるわけで、「部活は一生懸命だが授業に集中できない」とか「授業はきちんと受けるが元気がない」など、まさに千差万別だと思います。こうした違いは、同じ学年の別のクラスにも言えることですし、個人個人によっても言えることです。なのに、「1年生はできてない!」「〇組はダメだ!」「〇〇くんはできてるのに」といった評価は、無意味だと考えます。
(2)過去の経験からパターン化
勤務が長くなると、何か問題が起こると「あぁ、このケースね」「〇〇くんと同じパターンね」といった思考をしがちです。しかし、実際の生徒は一人ひとり違うわけで、周囲の環境も違います。以前うまくいったからといって、本人の声を聞かずに勝手にパターン化することは危険だと思います。
(3)焦って原因追及
何か問題が起こると、「どうして?」「何でそうなってる?」「何が原因?」と、ついつい原因を知りたくなります。でも、それは大人の勝手な事情であって、本人にとってはどうでも良いことです。話したがらないのに無理に聞くことは逆効果ですし、問題を長期化させかねません。「放っておく」というと語弊がありますが、「手は離しても、目は離さず」というスタンスでいることが大事だと思います。
ポジティブな声がけ
例えば、授業中に発言を求められていなくてもついつい答えてしまう生徒に対して、「うるさい!」などと一喝してしまうのはどうでしょう?私語ならともかく、授業に関連する内容であれば、「認めてもらいたい」とか「自分は分かった!と伝えたい」ということかもしれません。だとしたら、興味がないといって寝ているのに比べたら100倍も素晴らしいですよね。
また、学校に来てスグ「眠い」「だるい」といった生徒に対しても、「やる気あるのか?」といった言葉はどうでしょう?理由はともかく、眠い、だるいながらも、学校に来たということは素晴らしいことだと思います。「だるい!」と聞いたら、「だるいのに、頑張って来たね!」と返したいですよね。私の勤務校では始業前のSHRで健康観察をするのですが、夜間定時制で働いてから登校する生徒も多いため、体調不良者もけっこういます。そこで何らかの不調を報告した生徒には、「なのに、頑張ってきたね!素晴らしい!」と声をかけるようにしています(もちろん、あまりの体調不良時には養教と相談して早退させますが・・・)。
生徒たちはまだ高校生。授業や部活、生活態度、家庭生活、バイトなど、すべて完璧にできるなんてありえません。できていないところがあって当たり前で、そこをどう成長させていくかがポイントだと思います。できていないところに対する嫌味や皮肉、ネガティブな声がけで成長しますか??反発心からの成長を期待しているのでしょうが、そんなネガティブな声が飛び交っている空間で生活するのは嫌ですよね・・・。6月に限らず、教室でも、廊下でも、職員室でも、常にポジティブな声が飛び交うようになれば良いなぁと思い、記事を書いてみました。
高橋 英路(たかはし ひでみち)
前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭
山形県立米沢東高等学校 教諭
クラス担任と、地歴科で専門の地理を中心に授業を担当。生徒達の「主体的・対話的で深い学び」が実現できるよう、p4c(philosophy for children)やKP(紙芝居プレゼンテーション)法などの手法も取り入れながら日々の授業に取り組んでいます。
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