ICTを利活用した教育支援連携モデルの教育的効果Ⅱ<家庭学習と学校学習が繋がる>
これまで「教育支援連携」をキーワードに伝えてきましたが、時々質問されることがあります。教育支援連携が目的ですか?いいえ、違います。教育支援連携は、子供達の自立と社会参画が目的です!子供達の自立と社会参画という同じ目的に向かって、教師も家族も学校も地域もそれぞれの役割を発揮し合って連携、協力し、教育支援を実践することが大事。その一つの方法として、ICT(デジタル連絡帳アプリ)を利活用すると予想以上の教育的効果がある!をお伝えしています。さて今回は、「ICTを利活用した教育支援連携モデル」の教育的効果Ⅱ〈家庭学習と学校学習が繋がる!〉についてです。
京都教育大学附属特別支援学校 特別支援教育士・臨床発達心理士・特別支援ICT研究会 中川 宣子
「すみません」と謝って
この春入学された1年生の子供のお母さんと話す機会がありました。
「入学されて2か月が経ちましたね。どうですか?」
「先生、有難うございます。おかげさんで毎晩よく眠れるようになって、助かっています。それに、最近私、謝らずに済むようになりました。今まではどこへいっても、迷惑かけてすみませんと、謝ってばかりでしたから。」
お母さんのこの言葉に、胸がキュンとしました。
電車に乗れば、大声で叫ぶ我が子の口を「シー」と押さえて、「すみません。」
公園で遊んでいたら、泣く我が子をブランコから降ろして「ごめんねー。」
買い物へ行ったら、走り回る我が子をつかまえて「すみません。」
子供と一緒に電車に乗る、公園で遊ぶ、買い物へ行く‥そんな親子の日常の中で、幾度となく周囲に謝ってこられたお母さん。
「私、謝るの得意なんです!」とほほ笑むお母さん。
我が子の社会参画のために、自立のためにと、ご家族は日々努力されています。
家庭学習と学校学習が繋がる!
このようなご家族の努力を、教師や学校はどれくらい知っているでしょうか?
(担任)「え?!お母さん、それやったら、早く言ってくれたらよかったのに。」
(保護者)「先生、前から家ではこうやったら、できていましたよ。」
ご家族による家庭での教育支援情報を得ることができれば、また学校での教育支援情報を家庭に伝えることができれば、連携して教育支援を実践することができます。
家庭学習と学校学習が繋がる!これは、子供達の教育支援にとって必要不可欠です。
それには、ICT(デジタル連絡帳アプリ)の利活用がとても有効です。
「デジタル連絡帳アプリ」を利活用すれば、家庭学習と学校学習は繋がります。
質、量ともに豊富な教育支援情報を、毎日継続して共有することができます。
「デジタル連絡帳アプリ」は、子供達の自立と社会参画を目指し、子供達の特別な才能を引き出し向上できる教育支援連携ツールの一つとして活用できます。
お話を聞くのが楽しみ!
ここに、家庭学習と学校学習が繋がり、子供の成長・発達が見られた事例を紹介します。保護者と担任教師の「デジタル連絡帳アプリ」でのやり取りからです。
(保護者)これまで「学校で何したん?」と聞いても「わからない。」としか答えてくれなかったのに、最近、帰宅すると色々お話してくれるようになりました。「今日は、カレーを食べて、ちくわをちぎったんだー。」と言っていました。今までは、子供が帰宅する前に、私だけが連絡帳を先に見るようにしていたのですが、ここ何日かは子供のお話を聞くのが楽しみで、子供の話を聞いてから、子供と一緒に連絡帳の写真や動画を拝見しながらお話ししています。
(担任教師)デジタル連絡帳が家族の会話のネタになり、自分からお話しするようになって嬉しいですね。会話が弾むことはAちゃんの成長と自立心の向上ですね~。是非これからもお話をいっぱい聞いてあげてくださいね。
Aさんがこのように自分からお話をするようになるまでには、お母さんはきっと、「デジタル連絡帳アプリ」から我が子の学校の学習を予習されて、「今日サッカーしたの?ボール蹴った?」「楽しかった?」と毎日のように我が子に話しかけられたに違いありません。
こうした毎日の教育支援連携の積み重ねが、Aさんの才能を引き出し成長の姿となり、Aさんと共にお母さんも家族も、そして教師も、教え教えられ育ち育てられの教育共生の姿になったと考えられます。
次回、教育的効果Ⅲも楽しみに!
今回は「ICTを利活用した教育支援連携モデル」の教育的効果Ⅱ〈家庭学習と学校学習が繋がる!〉をお伝えしました。
「デジタル連絡帳アプリ」の利活用による教育的効果は、まだまだあります。
次回、教育的効果Ⅲもお楽しみに!
さぁ今日も、梅雨の季節の蒸し蒸しを吹き飛ばして、明るく教育支援連携していきましょう!
子供たちの自立と社会参画のために!(^^)!
参考資料
- 「デジタル連絡帳アプリ」:サイボウズ株式会社kintone

中川 宣子(なかがわ のりこ)
京都教育大学附属特別支援学校 特別支援教育士・臨床発達心理士・特別支援ICT研究会
「特別支援教育とは、子ども達の特別な才能を学校・家庭・地域の連携により支え、教え、育てること」と考えています。日々の教育実践を、情報発信・交流し合い、共に子ども達の成長・発達に役立てていきましょう!
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