生徒から学んだこと
春の日差しが感じられる日が続き、多雪地である山形の雪もだいぶとけてきました。この時期は出会いと別れの時期であり、慌ただしいながらも、これまでの日々を振り返ったり、出会った先生や生徒のことを思い出したりしながら、過ごしています。
そんな中で、生徒との何気ないやり取りで、新たなことに気づかされたり、影響を受けたりしたことを思い出します。今回は、その中で印象に残っているものを紹介したいと思います。
前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭 山形県立米沢東高等学校 教諭 高橋 英路
欠席する事情
以前、精勤賞を受けることが決まった(その年、欠席がなかった)生徒と話をしていたときのことです。「私が精勤賞になったということを、皆の前であまり大々的に褒めないでほしい」ということを言われました。謙遜しているのかな?とも思いましたが、話を聞くと少し事情が違うようです。
(おおまかな話の内容)
学校を休むのにもいろんな事情があって、時には説明できない(orしたくない)事情もある。何か悩みを抱えている場合だって、学校に来ることで解消されることもあれば、部屋で1人で考えることで解消されることもある。学校に毎日来れたということは、偉いというわけじゃなく、たまたま自分はそうすることができたというだけ。それを大々的に言われたら、欠席が多い人が嫌な思いをするし、自分だって欠席が多くなったときにそういう気持ちになりたくないと思う。学校って、毎日登校するのが当たり前で、それが良いことのように思われていて、欠席しようとすると「理由は?何か悩みあるの?」「少しだけ顔出さない?」「遅れてもいいから来れない?」・・・こういう声がけが負担に感じる場合もあるんだ。
この内容が一般論として通用するかとか、良いとか、悪いとか、そういった判断をするつもりはありません。ただ、そういった考えや視点も認めて、自分の中に持っていく必要はあると思いました。
授業の重要性
どうも自分の考えを誰かに伝えるということが苦手で、それを授業の中でやることに前向きになれないという話でした。話を聞いてみると、苦手な活動だからやりたくないという単純なことではありませんでした。
(おおまかな話の内容)
よく「社会に出たら必要だ」「社会に出たら通用しない」といった言葉を聞きますが、夜間定時制では就労している生徒も多く、すでに半分社会に出ている状態です。そして、そこでは自分の職責をこなし、少しずつ責任ある仕事を任されている人もいます。考えを伝えることは苦手だけど、それをわざわざ授業の中でやらなくても、職場で十分やれているということです。だから、授業中の能動的な活動には加わる気持ちになれないということでした。
これは、この話に「なるほど!」と思ったということでなく、こうした内容についてお互いさんざん話した後で言われた次の言葉が、もっとも印象に残っています。
(話の続き・・・)
発信力が大事だということも、授業でそういう活動を取り入れる意義も、実は十分よく分かってる。でも、入学して時間がたつと人間関係が固定化してしまい、誰にでもどんどん話しかけることは楽でない。正直、もうちょっと早く、こういう授業スタイルをやってくれていたら、もっとたくさんの人と仲良くなれて、違った高校生活になっていたかも・・・と思っている。
これも、こうした話が良いとか、悪いとか、そういった判断はしていません。ただ、高校生にとって、授業というものが与える影響の大きさをあらためて思い知ることになりました。このできごとがあってから、これまで以上に、授業改善に向けて不断の努力をしていかなければいけないなと思うようになりました。そういう意味で、私の教員としての心構えに大きな影響を与えたできごとの一つでした。
今回の話は、過去の紹介できる2つのエピソードでしたが、これ以外にも様々なエピソードがあり、そのたびに多くのことを学んだり影響を受けたりしました。おそらく、多くの先生方が同じような経験を持っていると思います。紹介できることがあれば、ぜひ教えていただきたいと思います。
また、3月は別れの季節で、過去を思い出してどこか寂しい気持ちになってしまいがちです。しかし、4月は出会いの季節!新たな出会いを楽しみに、年度末、最後の仕上げと新年度への準備にあたっていきたいと思います。最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
高橋 英路(たかはし ひでみち)
前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭
山形県立米沢東高等学校 教諭
クラス担任と、地歴科で専門の地理を中心に授業を担当。生徒達の「主体的・対話的で深い学び」が実現できるよう、p4c(philosophy for children)やKP(紙芝居プレゼンテーション)法などの手法も取り入れながら日々の授業に取り組んでいます。
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