2018.03.09
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「てつがく」多くの学校でも活用できる

223日、24日にお茶の水女子大学附属小学校の研究授業を参観しました。テーマは「てつがく」でした。「てつがく」が一般の公立学校でどの様に活用できるのかという視点で参観しました。今回は「てつがく」そして、そこから考えたことについて書きたいと思います。

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師 鈴木 邦明

「はじめに」

 私は今回の参観の前に、6月の研究授業もさせてもらいました。そして今回の研究発表だったので、おおよそ「てつがく」のイメージはつかめてきました。この学校でやっている「てつがく」は、公立学校の道徳の授業や学級経営などにおいて十分生かすことができるものだと感じました。公立学校には「てつがく」という教科はありません。無いのですが、そのエッセンスは、十分使えるもの、使っていった方が良いものだと感じています。それらは、授業における「教師の役割」「子ども同士の関係性」「積み上げの大切さ」などです。

「教師の役割とは?」

 「てつがく」において教師は何かの知識を伝えるような立場ではありません。「プランナー」であり、「コーディネーター」であるのだと感じました。現在、ICTなどが発達しています。今後、AIなどが人間の仕事を肩代わりしていくのではと言われています。そういった中では学校における教師の役割も違ってくるのではと感じました。

教師の具体的な言葉として注目したのは「なぜ?」「本当?」という言葉です。そうやって子どもの考えに揺さぶりをかけることで、考えが深く、広いものになっていくように促すことができるのだと思います。



「子どもの関係性とは?」

 「子どもの関係性」においては、子ども同士が安心して自分の思いを表出できる環境というものはとても重要だと感じました。それらは「てつがく」を行う上で前提となるものなのですが、「てつがく」以外でもそういったことができていれば、子どもの学びは深まります。どの教科・領域においても質の高い学びを行うことが出来るようになります。逆を言えば、「子どもの関係性」が十分できあがっていない集団においては、より良い育ちは期待できないということになります。これは、心理学者のマズローの「欲求段階説」の中でも言われているものです。低次の欲求である「安全の欲求」や「所属・愛の欲求」が満たされていない状態であれば、高次である「承認の欲求」「自己実現の欲求」などに関わるもの(学習など)をより良く行っていくことは難しいのだと思います。子どもの関係性をより良いものにしていくこと(学級経営など)の重要性が再認識できます。

「積み上げの大切さ」

 子どもの育ちにおける「積み上げの大切さ」も強く感じました。お茶の水附属小では「てつがく」の前段階として「みがく」という学習を低学年で取り組んでいました。また、小学校に入学した直後(4月~7月)は、国語や算数など教科ではなく、「ことば」「なかま」「からだ」「かずとかたち」という4つの領域で日々の活動が行われるのだそうです。幼保小連携などの取り組みです。そういった中で、小学校一年生から丁寧に、子どもの思いを大切にしながら、自分の思いを出すこと、友だちの思いを聞くことなどに取り組んでいます。それらは「サークル対話」という活動が主になります。とても丁寧にそういったことに取り組んでいることが、中・高学年になってから学びが促進されると感じました。こういった丁寧な学習の積み重ねは、多く公立学校でも参考になるものだと感じました。

「子ども達が議論する意味」

 今回「てつがく」の授業を参観し、リアルな場(友達がいる場)で色々と意見交換することの意義が少し分かりました。自分と違う考えの人に対して、自分の思いを伝えるということです。自分も友達も同じ考えのもの、例えば、「人を殺してはいけない」のようなものは議論の必要はありません。答えが決まっているからです。けれども、「自由とは何か?」「生きるとはどういうことか?」のようなことは、それぞれの人によってとらえ方が違います。だからこそ、そういったもののすり合わせが必要になります。出来るだけ自分の思いを分かりやすく、相手に伝える必要があります。こういった事は単に「てつがく」だけのものではありません。今の小学生が十数年して社会に出た時そういった力が強く求められてきます。先程も書いたように、答えが分かっているようなものは、議論の余地はありませんし、AIなどが役割を担っているはずです。コンピューターが発展すればする程、答えが曖昧なものに対して、人が関わりながら方向性を見出していくようなことが必要になるのだと思います。

「終わりに」

 お茶の水女子大学附属小学校で行っている「てつがく」は、他の学校や教科・領域においてヒントとなるものがたくさんありました。それらを少しだけまとめ直してみました。新年度に向けて、少しでも皆さんのお役に立つことがあれば幸いです。

今回参観した授業のテーマ

6年「てつがく」 「思い出の価値」

6年「てつがく」 「悪いとは〇〇である」

6年「てつがく」 「自由とは?」

1年「みがく」  「ききあおう(サークル対話:自分の身近な出来事を話す)」

鈴木 邦明(すずき くにあき)

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師
神奈川県、埼玉県において公立小学校の教員を22年間務め、2017年4月から小田原短大保育学科特任講師、2018年4月から現職。子どもの心と体の健康をテーマに研究を進めている。

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