2017.12.25
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家族宛の『年賀状』:表書きの物語

今年も『年賀状』の季節。皆さんはもう準備できましたか?『年賀状』も『デジタル連絡帳』同様、子供達の教育支援連携ツールの一つと言えます!それは今回の「年賀状作り」を学習した時のエピソードからわかります。家族宛の『年賀状』の中に一つの物語がありました。

京都教育大学附属特別支援学校 特別支援教育士・臨床発達心理士・特別支援ICT研究会 中川 宣子

『年賀状』って、嬉しい!

『年賀状』は、皆さんもご存知のように、その多くが、旧年中の厚誼の感謝と、新しい年に変わらぬ厚情を依願する気持ちを伝えたり、またその時の近況報告などを添えたりします。
送る側は、『年賀状』を書きながら、「今年もお世話になったな~。」としみじみ感謝の念を抱いたり、「ご無沙汰しているけれど、元気にされているかしら。」と相手のことを思ったり、一人一人の相手のことを思い浮かべながらしたためていきます。
一方受ける側は、届いた『年賀状』を見ながら、「へえー、今、こんなことしてるのね。」と驚いたり、近頃は写真付きも多くて、「まぁ、可愛らしい。」と微笑ましく拝見したりして・・・。
昨今は、『年賀状』以外にも情報伝達ツールがありますから、量は減りましたが、やはりお正月に『年賀状』が手元に届くと嬉しいですよね。

題材「年賀状作り」

学校では、この時期になると、「年賀状作り」という題材に取り組んでいることが多くあります。
かつては、芋版を作ったり、あぶり出しできるように果汁を絞ったり、筆ペンの練習をしたりしていましたが、昨今はパソコンで、挨拶文やイラスト、写真などを作成することが増えました。
そんな中、小学部高学年のあるクラスでは、「年賀状作り」の授業が行われ、「表書きのあて名を手書きする」・・・という学習をしていました。
そのクラスでは日頃から、子供達が「自分の名前を手書きできるように!」と、プリント学習を毎朝継続したり、機会あるごとに名前を書かせたりして、学習に取り組んでいました。
漢字で自分の名前を書ける子供、お手本を見ながら書く子供、平仮名でやっと書けるようになった子供、先生の下書きをなぞって書く子供・・・とそれぞれに学習課題があります。

家族宛の『年賀状』

さて、今回の「年賀状作り」・・・・家族宛の『年賀状』を作ることになりました。
それも表書き・・・「自分の家の住所」と「家族の名前」を書く学習です。
クラス全員の子供達が、「自分の家の住所」や「家族の名前」を書くことは初めてでした。
先生は一人一人の子供達がうまく書けるようにと、学習の手立てを準備しました。
まずは「住所」と「家族の名前」のお手本、そして年賀はがきには、文字がはみ出さないようにと縦横の線を引いたり、一文字ごとに文字が入るような丸印を付けたり・・・。

準備が整ったところで早速、表書きが始まりました。
子供達はいつも学習しているプリントとは、かなり小さめの年賀はがきに驚きます。
お手本を見て、ここに「自分の家の住所」と「家族の名前」を書くことを理解します。
これまでに書いたことがない見慣れない漢字、一つ一つの文字の大きさは小さく、失敗のきかない一発勝負。
おまけに先生からは、いつも以上の気合も感じ、緊張はMAXです。

細めのマジックを手にして、表書きが始まります。
「伏見区深草大亀谷大山町90・・・・・」一文字一文字どころか、一線一線の手本を見ながら、同じような文字の形を、丁寧に書いていきます。
まるで、息を止めているかのような緊張感で、子供達は書き進めます。
「住所、かけた・・・ふぅー。」住所が書き終わると、思わず深呼吸です。

続いて、次は何かと手本に目をやると、「家族の名前」です。「やったー!」
子供達は一斉に、ほっとした表情。
なぜなら、「書いたことがある字や!」「これ、いつも書いている名前(苗字)。」「書ける!」
自信に満ちた表情で、家族の名前書きに挑みます。
「(苗字)書けた!」思わず笑顔。
と同時に、「えっ!また見たことのない、書いたことのない文字や!」
そうです。家族の下の名前です。また一斉に緊張感が走ります。
お父さんやお母さん、兄弟姉妹の顔が頭に浮かびます。名前を間違えるわけにはいきません。
上手に書くことができたら、きっと喜んでもらえるはずです。
「住所」とは違い、家族への思いを込めて「家族の名前」を書きます。「書けた!」
そして最後に「様」を書いて完成、「年賀状、できた!」

『年賀状』:表書きの物語

一枚の家族宛の「年賀状作り」・・・時間にすれば僅か15分程の学習時間でしたが、
そこには、子供達が新しいことにチャレンジする緊張感や、日頃の学習の成果を発揮する自信、そして家族への思い・・・と、それはまるで一つの物語のようでした。
新しい年の初めに、子供達一人一人の物語をのせて、『年賀状』が家族のもとへ届きます。
『年賀状』はやはり、子供達の成長・発達のための教育支援連携ツールそのものですね。
皆さんも『年賀状』に、あなたの物語をのせて届けてみてはどうでしょうか。

2017年最後の「学びの場.com」です。
今年も読んでくださって、誠に有難うございました!どうぞ健康でよいお年をお迎えくださいね!(*^-^*)!

中川 宣子(なかがわ のりこ)

京都教育大学附属特別支援学校 特別支援教育士・臨床発達心理士・特別支援ICT研究
「特別支援教育とは、子ども達の特別な才能を学校・家庭・地域の連携により支え、教え、育てること」と考えています。日々の教育実践を、情報発信・交流し合い、共に子ども達の成長・発達に役立てていきましょう!

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