道徳の授業をつくる~自作資料への取り組みと思い~
子どもの心に少しでも届くように、響くように、自作資料を用意して道徳の授業をすることが多いです。授業は授業として捉え、普段の道徳的実践力になかなか繋がらないもどかしさを感じ、少しでも子どもの心に届くようにと、教材研究をしています。今年、取り上げた事柄を紹介します。
兵庫県公立小学校勤務 松井 恵子
植松努さんの生き方「思うは、招く」
TEDというプレゼン番組で、お話しされている映像が有名な方です。北海道で会社経営をされている方ですが、宇宙開発の夢を実現させた方です。
「どうせ無理という言葉をなくせば、いじめはなくなる。」「思うは、招く」というメッセージが、子ども達に必要なメッセージであると思い、教材にしました。
授業の流れとしては、植松さんの生き方を知り、思いをもったあと、自分たちのことばについて考えるという流れです。
猿渡瞳さんの生き方「いのちを見つめて」
これは、以前の記事にもしましたので、詳しくはそちらをご覧下さい。(電子黒板で変える、道徳の授業)
今年は、4月の1回目の参観日に行いました。親子で考えてほしいと思い、以前から参観日にこの授業を行っていましたが、1回目の参観日に行ったのは初めてです。なぜかというと、持ち上がりではなく、初めてこの子達を受け持つので、担任がどのような考え方で子どもと向き合おうとしているのかを伝えたいと思ったことが大きな理由です。また、4月に、親子で「感謝」を感じ、スタートすることが6年生としてよりよいスタートにもなると考えました。
最近のニュースを話題にすることも
「しぐさの重さ」として、大リーグのグリエル選手が、ダルビッシュ選手からホームランを打った後、ベンチでアジア人に対する差別行為を行ったということと、それに対するダルビッシュ選手の対応を取り上げました。
「アジア人を差別するつもりはなかった。謝罪する」というグリエル選手に対し、コミッショナーは「あのような態度に言い訳はきかない」と対応します。
また、それに対してダルビッシュ選手は「人は完璧な人はいない。これを機会に人類として学ぶべき」というコメントをします。
このニュースのあった2~3日後に取り上げたので、そのタイムリーさもあって、子ども達は食い入るように考えていました。
バラエティーで活躍する人のエッセイなども参考に、その人の人生観から、思いやりや不撓不屈の精神を投げかける道徳の授業をつくることもあります。
そんなものは道徳ではないと指摘される方もいると思います。
ただ、とにもかくにも、目の前の子ども達の道徳性を危惧し、少しでも育てようと奮闘する所以のことです。
6年生にもなると、道徳の授業の時は優等生のような答えを出しても、普段の生活や自分自身の生き方になかなか反映されないことも多くあります。
子どもの心に少しでも届かせたい、という強い思いで、道徳の授業をつくっています。
自作資料でないときも、子どもに近づける工夫を
本校の扱う道徳の資料に「白旗の少女」(6年)という資料があります。
実話です。(東京書籍「明日をめざして」)
ですが、そのまま取り扱うと、子どもにとっては、昔の悲しい出来事で終わってしまいます。
白旗の少女の映像を入手し、それを見せました。「どうしてこの少女が、一人でアメリカ兵の前に白旗を持って歩いてきたかが、道徳の本にあります」と言って、資料を読みます。
資料から少女の様子を読み取り、思いを持ったあと、世界の紛争で飢餓に苦しむ人々がたくさんいるという新聞を見せ、今と繋げて考えさせました。
自分ごととして捉えさせる工夫の必要性
お話の中には共感できたり批判できたりしても、自分のことと繋げる力として育てないと道徳の意味がない。
自分ごととして捉えさせるためには、心を動かすことが必要です。
教材を読み取るだけで終わってしまっては、心を動かすところまでいきません。だから、より理解を促進するために、動画や写真をつかったり、電子黒板で提示したりしています。
また、道徳で得た学びは、教室の掲示物にして、子どもが振り返られるようにしています。
「心の貯金」をしっかりためてほしい。
心の貯金がよく積み上がってくれる子もあれば、取りこぼしてなかなか積み上がらない子、千差万別です。でもやっぱり、子ども達が、明るい未来に進めるように、力を振り絞って、明日も、がんばろうと思うのです。
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松井 恵子(まつい けいこ)
兵庫県公立小学校勤務
兵庫県授業改善促進のためのDVD授業において算数科の授業を担当。平成27年度兵庫県優秀教職員表彰受賞。算数実践全国発表、視聴覚教材コンクール特選受賞等、情熱で実践を積み上げる、ママさん研究主任です。
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