ものの見方の視点を変え、学びの質を高めたい
最近、赤ちゃんに関するコラムを担当することになりました。
赤ちゃん特集.comの「鈴木先生の赤ちゃんコラム」というものです。
今回は、赤ちゃんの事を考えたことによって、改めて学校教育の見え方が変わったことについて書きたいと思います。
帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師 鈴木 邦明
狭かった自分のものの見方を実感
私は、この3月まで22年間小学校の教員をしており、この4月に短大に移りました。今は、幼稚園教諭や保育士を目指す学生に健康教育を教えています。小学校教諭の頃から「幼保小連携」が研究テーマの一つだったので「幼児」にはある程度興味がありました。しかし、やはり興味の中心は「小学生」や「小学校教育」、「学校教育」でした。
この所、授業の準備や研究のために「幼児」について様々なことを調べています。また、赤ちゃんのコラムを書くことになり「乳児」についても様々なことを調べています。そうすると、これまでとは少し違った視点で物事が見えてくることがあります。
これまでも「縦のつながりを意識して」と様々な場面で言われていまし、私も言っていたように思います。指導案にもそういったこと(「小中連携の視点」「幼保小連携の視点」など)を書く欄がありました。今回、いくつかの文を書いてみて、改めて、赤ちゃんの頃のことが小学校での生活に大きく影響を与えていることが分かりました。
赤ちゃんの生活とその後の生活との関係
例えば、「生活リズム」についてです。今は、夏休み明けの時期です。学校に通う子どもにとっては、生活リズムの確立が大きなテーマです。日常生活における「生活リズムの乱れ」は日々の学習の質に大きく影響を及ぼします。「早寝・早起き・朝ごはん」などのキャッチフレーズで全国的に取り組んでいます。この生活リズムの確立の根本にあるのが、赤ちゃんが生後3ケ月位の頃から少しずつ生活リズムを確立していくことなのです。
赤ちゃんは産まれてからしばらく、朝もなく昼もなく、大部分の時間を眠って過ごします。そこでは、眠りたい時に眠り、おしっこをしたい時にするという感じの生活です。3ケ月位経った頃から、少しずつ生活リズムを確立していきます。その作業は、親と子の共同作業で、非常に根気のいるものです。そういった中で親が粘り強く関わる中で、生活リズムが確立していきます。しかし、そこで親が丁寧に関わることができず、思い通りにならない赤ちゃんを怒鳴ったり、場合によっては暴力を振るったりしたら、赤ちゃんは生活リズムの確立もできませんし、人格形成においても問題が発生してしまいます。人間不信のようになってしまうかもしれません。
また、赤ちゃんの頃の「お風呂」についても感じたことがあります。小学校などで周りの子どもから嫌がられるものの一つに「不衛生」があります。あまりお風呂に入らないことや同じ服を何度も着ているなどのものです。家庭の事情というものもあるのかもしれませんが、子どもがお風呂嫌いで、あまり入らないということを聞いたこともあります。赤ちゃんの頃の入浴は、親が小さなお風呂などに赤ちゃんを入れてあげます。その際、赤ちゃんにとってそれが心地良いものであれば、お風呂が好きになりますし、身体も清潔になります。しかし、そういった際に親が赤ちゃんを雑に扱ったりすることで、赤ちゃんがお風呂を心地良いと感じられない場合があります。そうなると、その後の生活において、お風呂との関わり方は親しいものではなくなってしまいます。そういったことがその子どもの様々な部分に影響を与えます。
親が赤ちゃんがうまくできた時に褒めてあげることを繰り返す中で、少しずつ色々なものができるようになっていきます。そうやって赤ちゃんが少しずつ自分でできるものが増えるようになると共に親子の信頼関係のようなものができていくのだと思います。赤ちゃんが生活リズムを整える際、きちんと親が子どもに関わることができた家庭では、その後の様々な場面でも親が子どもにしっかりと関わることができる可能性が高くなります。子どもが幼稚園や保育園に行くようになると「親と離れること」などが課題になります。小学校に行くと「時間で行動すること」などです。小学校の中学年から高学年になると「スマホなどとの関わり」が課題として出てきます。赤ちゃんの時の親の関わり方がその後の様々な課題と関わる際にも大きく影響します。
もっと様々な学校に目を向けよう
教員は、どうしても自分が関わる学校についてのことを知ろうとしてしまいます。3月までの私の立場であれば、小学校に関することです。普段から接しているのが小学生なので、それに関する情報を入手し、理解を深めようとします。今感じることは、少しでもそのエネルギーを違う校種について知ることに使ったら随分と変わるだろうということです。小学校の教員ならば、幼保についての本を読んだり、中高の本を読んだりしてみるのです。そうすると、今まで見えていなかったものが見えてくることがあります。
本以外で研究授業などもそうです。私は小学校の教員だったので、これまで小学校の研究授業はたくさん見たことがありましたが、中学校や幼稚園・保育園の研究授業はほとんど見たことがありませんでした。多くの先生も私と同様で、自分の校種の研究授業以外はあまり見たことがないと思います。ちょっと無理をしてでも、自分の校種でない学校の授業を見に行くことをしてみると、意外な発見があるはずです。
これからの教育においてはどの校種においても、多様な考え方を持つ親や子どもと関わらなくてはなりません。広い視野で物事を考えることのできることは、そういった際に大きく役に立つことでしょう。

鈴木 邦明(すずき くにあき)
帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師
神奈川県、埼玉県において公立小学校の教員を22年間務め、2017年4月から小田原短大保育学科特任講師、2018年4月から現職。子どもの心と体の健康をテーマに研究を進めている。
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