2017.04.21
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「特別支援教育」とは

「桜さん、落ちたら、友だちいっぱいやなぁ。」に込められたAさんの素晴らしさ・・・特別支援教育っていいですね。

京都教育大学附属特別支援学校 特別支援教育士・臨床発達心理士・特別支援ICT研究会 中川 宣子

「特別支援教育」とは・・・

「特別支援教育」という言葉は、教育界ではすっかり耳慣れた言葉になりました。
「特別支援教育」が学校教育法に位置づけられ、すべての学校において、障害のある幼児児童生徒の支援をさらに充実していくこととなったのが、平成19年4月からですから、ちょうど今年で10年が経ちます。
『石の上にも3年』ということわざもあるように、10年も経てば言葉は定着し、様々な仕組みも整ってきます。では、実際の「特別支援教育」の現場はどうでしょうか?
すべての学校において、障害のある幼児児童生徒の支援はさらに充実していっているのでしょうか?

あらためて「特別支援教育」とは・・・

さてここで、「特別支援教育」とは?について、あらためてみてみます。
文部科学省では、『「特別支援教育」とは、障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要な支援を行うものです。』とあります。

「特別支援教育」への問い

私は「特別支援教育」に携わりながら、この10年間は、何度もこの文言に立ち返って考え、自分自身に問うてきました。
日々の教育実践が、子ども達の自立や社会参加に向かっているだろうか?
今日の授業は、子ども達の主体的な取組みを支援できただろうか?
教材・教具は、子ども達の持てる力を高めただろうか?
子ども達一人一人の教育的ニーズを把握できているだろうか?
そして、子ども達のことを思うとき、
この子たちが本当に素晴らしい一人一人であることを実感してきました。
例えば先日もこんなことがありました。

「桜さん、落ちたら、友だちいっぱいやなぁ。」

今春も学校内は、桜が満開に咲きました。それは見事な桜でした。
今年の京都は肌寒い日が続いたため、始業式、入学式も、何とか桜花が持ちこたえ、子ども達と一緒にお花見をすることができました。
新学年、新学期が始まって一週間。
新しい教室になり、新しい友達が増え、新入生歓迎会も催され、子ども達のワクワクが続きました。
その頃、春風が吹くたびに桜の花びらは舞い、あたりは一面に花びらでいっぱい、まるで桜の絨毯のようでした。
そんな中、小学部4年生のAさんが、ニコニコした表情で、つぶやきました。
「桜さん、落ちたら、友だちいっぱいやなぁ。」

子どもの素晴らしさを感じた瞬間

華やかな桜の花が散ると、どこか少し寂しい気がするものですが、Aさんには全く違って見えました。
桜の花びらが、地面いっぱい広がった様子が、友だちいっぱいに見えたのでしょう。
桜の花びらが散る(落ちる)頃、新しい友達ができて、一緒に遊ぶようになったのでしょう。
「桜さん、落ちたら、友だちいっぱいやなぁ。」
またひとつ、子どもの素晴らしさを感じた瞬間でした。

子ども達の成長・発達のために!

私は、「特別支援教育」とは、「子ども達の特別な才能を学校・家庭・地域の連携・協力により支え、教え、育てること」と考えています。
日々の教育実践の中でみられる、子ども達の素晴らしさを見逃さず、しっかりと捉えて、子ども達の成長・発達のために、日々教育実践をされている皆さんと情報共有できたらと思っています。

次回もお楽しみに!

中川 宣子(なかがわ のりこ)

京都教育大学附属特別支援学校 特別支援教育士・臨床発達心理士・特別支援ICT研究
「特別支援教育とは、子ども達の特別な才能を学校・家庭・地域の連携により支え、教え、育てること」と考えています。日々の教育実践を、情報発信・交流し合い、共に子ども達の成長・発達に役立てていきましょう!

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